ボードゲームレビュー第11回「ナゲッツ」

「ナゲッツ」 (原題:Nuggets)
発売元:ニューゲームズオーダー
作者:クリストヴァルド・コンラート
 
対象年齢:8歳以上  
プレイ人数:2~4人
プレイ時間:30分


 

 皆様、初めまして。
 もしくはお久し振りです。
 ゲーム大好きライトノベル作家の番棚葵です。
 今回は「ナゲッツ」をレビューしたいと思います。

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 このゲーム、元はドイツの「クリストヴァルト・コンラート」氏が作り、絶版になったものを「ニューゲームズオーダー」が新版として日本で出したものです。その際に「TANSANFABRIK」がイラストとデザインを手がけています。
 つまり、リメイクに近い形式を取っているのですが、日本語版の蓋を取ってみるとあら不思議。
 ユーモラスかつストレンジな「TANSANFABRIK」の息吹が、そのゲームの中に吹き込まれているのに気づきます。
 特筆すべきは世界観の解説です。
 このゲームはルールの説明書以外に、キャラクターの説明を行う小さな資料集が挟まっているのですが、そこに登場するのは個性豊かな登場人物ばかり。
 泥棒タヌキの「しばえもん」、凶暴な指名手配犯の「カワウソ」、ナゲット好きのエイリアン「ロズ・ウィル・ロジャーズ」、どこにでもいそうなわりにはロボット「アイザック」操縦に長けているという設定が光る「女の子」(さらに「アイザック」は三種類もタイプが存在し、それらの解説まで存在します)。
 陣取りゲームのように柵で囲いを作って、ナゲットを奪い合うというだけのシンプルなゲームなのに、なぜここまで凝ったキャラクターや設定を練り込む必要があるのか。
「もうお前ら、違うゲームで活躍していろよ!」
 思わずそう言いたくなりますが、ちょっと待ってください。
 ああ、もう違うゲームに出ていました!
 このキャラクターたちは、「TANSANFABRIK」の代表作の一つ「ファブフィブ」に出てくるキャラクターでもあるのです。
 複数のゲームにクロスオーバーして別のキャラクターが出てくるという、(無駄に)豪華な演出!
 これは「ファブフィブ」が好きな人も取り込んでしまおうという、「TANSANFABRIK」の策略なのでしょうか。
 個人的にはこういうの大好きなので、ほいほい釣られてしまうわけですが。
 それにしても、「ファブフィブ」で死神に命を狙われた後は、「ナゲッツ」でナゲット争奪戦をやってるとか、このキャラクター達もなかなか数奇な運命に導かれているとしか言いようがありません。

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 さて、ここで「ナゲッツ」のゲーム内容を説明したいと思います。

 大手ファーストフードチェーン、ナゲットキングの新作ナゲットはなんと!
 金の卵を生む鶏肉を100%使用した、黄金のナゲット!
 どうぶつたちは、なんとか手に入れたい、手段なんて選んでいられない!
 一番多く黄金ナゲットをゲットするために、あの手この手で相手をだしぬけ!(説明書より)

 ナゲットの入手に「手段なんて選んでいられない」とか断言するあたり、すでにきな臭い匂いが漂っています。
 つまりはナゲット争奪戦の話なのですが、黄金のナゲットよりも、金の卵を生む鶏とやらを争奪した方が後々金儲けにもなっていいのではないでしょうか。つい大人の意地汚い目線で、そんなことを考えてしまいます。
 しかしどうぶつたちの欲望は、あくまで「黄金ナゲット」に向かっているもよう。ちょっとわんぱくで腹ぺこな子供たちを見ているみたいで、微笑ましい気分にもなれますね。
 そんな「ナゲッツ」のゲームルールはいたって簡単。スタートプレイヤーから順番に、「柵を2つ置く」か「チップを1枚裏返しに置く」の選択肢のうち1つを選び、実行していきます。
 柵は陣地を作るために必要となってきます。マスで区切られたゲームボードの上には得点の書かれたナゲット(バレルの形をしているのが芸が細かい)が置いてあり、マスを柵で囲んで陣地を作り上げ、陣地内のナゲットをゲットするのがプレイヤーの目的となります。
 複数のナゲットを囲むようにして陣地を作り上げれば、その中にある得点はすべて手に入るので、できるだけ欲張って陣地を作りたいところ。
 ですが、それだけではナゲットは手に入りません。
 ここでチップが必要となってきます。
 チップは陣地の中でのそのプレイヤーの占有権を表します。陣地内に置かれたチップの点数の合計がもっとも高いプレイヤーが、その陣地を手に入れることができるのです。
 なので、うっかり高得点のナゲットが複数同居する陣地を作り上げると、そこにせっせと他プレイヤーがチップを置いたりするので、自分のチップの置き場所がなくなり「NO!」と叫ぶはめになります。
 陣地を拡大しつつ、占有のためにチップを置くことも忘れない。
 この戦略性が、このゲームの醍醐味です。
 ボードの上ではナゲットを置く場所が決まっているので、複数回ゲームを続けると「定石」みたいなものも見えてきて、囲碁や将棋をやっている気分になれます。
 説明書では「慣れてきたらナゲットマーカーの配置を変えてみよう」と推奨されているので、ゲーム展開に飽きることもありません。
 ゲームの終了条件ですが、全員が柵を置けなくなった、もしくはパスした場合ゲームは終了となります。
 陣地ごとのチップの点数を合計し、もっとも高い人間が得点の高いナゲットを手に入れる。
 そして得点の合計が高いプレイヤーが勝利となります。

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 このゲーム、もう一つ変わっているところがありまして。
 2~4人プレイなのですが、4人だと2人VS2人のチーム戦となるのです。
 このチーム戦、単独の時ではできなかった「柵を置いた後にすかさずチップを置く」「柵を連続して置いて陣地を素早く作り上げる」などの戦術を可能とします。
 その爽快感たるや、単独でやった時のまさに倍!(人数が倍になるからですが)
 ただし、「作戦は必ず口頭で相手に伝えること」が義務化されているので、秘密の作戦とかを実行に移すことは不可能ですが。
 また、パートナーのチップの中身をのぞき見てはいけないので、互いの点数を把握しているわけではなく、その辺に戦術を考える醍醐味が生まれます。

「相棒はあの陣地に、すでに4点のチップを置いただろう。ならここに点数の低いチップを置いてもらおうか」
「相棒のチップはもう低いのばかりだろう。なら、いっそ柵を増やして陣地を広げてもらおうか」
「相棒は高得点を残しているようだ、ここはこの陣地にそれを置いてもらい、一気に取りに行こう」

 味方の得点を予想しながら、指示を出していくと、まるで一級の戦術家になれたかのよう。
 実際、この味方のチップの点数の把握が、後々のゲーム展開に影響を与えるので、チーム戦はこの辺りが肝といっても過言ではないです。
 そして、ゲーム終了後、点数計算のためにめくられるチップ。
 相棒が自分のにらんだ通りの点数のチップを置いてくれていたりすると、目に見えない絆のようなものを感じて無上の喜びを覚えます。
 ああ、この人が仲間で良かった。互いの信頼感と爽快感はいつしか深い友情となり、このゲームを通じて友達を作ることも可能と言えます。
 ――まぁ、友情を育みながら、やってることはナゲットの奪い合いだったりするのですが。

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 シンプルなルールと、ポップなキャラクターに彩られたこのゲーム。
「ナゲット」という身近な食べ物の題材も相まって、家族で手軽にやるのにも向いています。
 このゲームを終えた後に、近くのファーストフードショップへ行ってナゲットを注文するのも良いでしょう。
 いつもより美味しく感じること、間違いなし!(たぶん)
 もちろん、友達と一緒にガチで勝負しても充分楽しいので、ぜひ一度プレイしてみてください。

 是が非でも先手を取りたい人は、このゲームの開始数分前にナゲットを食べておくんだ!(←ナゲットを一番最近食べたプレイヤーがスタートプレイヤーになるので)

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ライター紹介

番棚葵(ばんだな あおい)
 ライトノベル作家。
 同人サークル「冒険者の館」でゲームも制作。
 古今東西問わずアナログゲームが好き。
 ボードゲーム、カードゲーム、TRPGなど様々なジャンルのゲームをたしなむ。

代表作 
・ライトノベル
「生徒会ばーさす!」
「Dソード・オブ・レジェンド」
「神をしめなわっ!」他 (集英社スーパーダッシュ文庫より)
・ノベライズ
「カードファイト! ヴァンガード」 (角川つばさ文庫より)
・ゲーム
「メイガス」 (同人ゲーム)