ボードゲームレビュー第136回「マイス&ミスティクス」

「マイス&ミスティクス」
発売元:ホビージャパン
作者:ジェリー・ハウソーン
プレイ人数:1~4人
対象年齢:7才以上
プレイ時間:約60~90分

 


 

 

毎度どうもこんにちは。ライターの松風です。
さて、前置きなしに今回ご紹介致しますゲームは『マイス&ミスティクス』でございます。

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パッケージには、なにやら武装した勇ましいネズミたちと凶悪なご面相の猫が描かれています。
ここで「ネズミが主人公? ガンバの冒険みたい!」と思ったあなたは鋭い!
本作は、かの古典児童文学のような雰囲気の中で冒険を繰り広げていくことになります。

という訳で、このゲームは『アンドールの伝説』や『ディセント』のようにシナリオクリア型のRPG風ボードゲームとなっています。
ちょうどTRPGをボードゲーム化したような感じでしょうか。
とは言え、以前ご紹介した『ウインターテイルズ』や『ワンス・アポン・ア・タイム』のようなストーリーテリングゲームよりは、もっとシステマチックにボードゲーム寄りです。
このジャンル、最近ぽつぽつと増えてきていますので、要注目ですよ。

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ご丁寧に、このゲームではマニュアルでさえもルールブックとストーリーブックに分かれています。

ルールブックにはゲーム全体を通してのルールが、ストーリーブックにはシナリオと、そのシナリオ内での特別ルールが記載されています。
バックストーリーなんかもしっかりと書かれていますので、世界観に入り込むための導入としてはバッチリですね。

大まかに説明しますと、昔々ある王国に賢明なアンドン王と若いコリン王子がいました。
ある時、王の親友だったバースト大佐が旅から戻った時、彼は美しき魔女ヴァネストラと彼女の私兵を伴っていたのです。
王はすっかりヴァネストラに心を奪われ、結婚を言い出しますが、ほどなく病にかかって倒れてしまいます。
彼女に不吉なものを感じていたコリン王子と城の魔術師マギノスは、ヴァネストラを追放するための会議を開きますが、時既に遅くバースト大佐によって逮捕されてしまいます。
牢獄に放り込まれたコリン王子と仲間たちは、なんとか脱走するためにマギノスの力でネズミに姿を変える事になります。
ですが、それさえもヴァネストラには気づかれており、彼女は自分の親衛隊をもネズミに変えて、追手としたのです。

なんだか、いかにもってな感じのファンタジーですよね。
こういう雰囲気は筆者も大好物です。

そんなわけで、ゲームの大目的は魔女ヴァネストラを倒して王国に平和を取り戻せ! というものなのですが。
それはそれとして、第一話はいきなり『追手を倒して牢獄から脱出し、中庭を目指せ!』というホットスタートから始まります。

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ここでちょっとルールにも触れておきましょうか。

まず最初に6枚ある『ネズミ英雄カード』から参加人数分のカードを選びます。
ただし、シナリオによって参加できるネズミは多少変わってきますので、シナリオをよく確認してください。
例えば第一話では、まだパーティに加わっていないという事で、射手のリリーは選べません。

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ネズミ英雄カードには、そのネズミのステータスと初期装備、固有能力などが書かれています。
コリン王子は平均的なステータスながらレベルアップが早く、さすが主人公といったところ。
魔術師のマギノスはやはり知力が高く、遠距離攻撃や魔法のアイテムが使える応用力の高いキャラクター。
鍛冶屋のネズは足が遅いものの、生命点が高くてバッドステータスに強いので、分かりやすく前衛向けです。
治癒術師のチルダは、初期状態ではコリン以上に特筆すべきものがありませんが、負傷を治療できるのは彼女だけです。
悪漢のフィルチは足が早く、遠近両方の装備が使え、テクニカルなプレイができるのが特徴。
射手のリリーは地形に置かれた罠をスルーでき、弓矢で遠距離から一方的に攻撃が可能という点が強みです。

プレイ人数が最大4人なので、大体のシナリオにおいても使えるネズミは4体までなんですが、正直みんな居て欲しいと思うくらい強いキャラが揃っています。
まぁ、逆に言えば「いないとゲームが詰むレベル」のキャラもいないわけで、好みで選んでしまいましょう。
個人的な感想と言わせてもらえば、チルダとフィルチは居てくれた方がいいかなぁ……。

さて、担当するネズミが決まったら、そのネズミの『ネズミ英雄カード』と『ネズミ手番順カード』、『ネズミフィギュア』を受け取ります。
さらに、英雄カードに書かれている通り、『探索カード』の中から初期装備を受け取り、『能力カード』から1枚カードを選んで所持します。
能力カードには、それを獲得できるクラス条件が書かれていますので、ちゃんと条件に合ったカードを選びましょう。
シナリオによっては初期装備が変わったりする事もありますので、プレイする章の準備は確認しておくことが重要です。

そして、地形が描かれた『部屋タイル』をシナリオの指示に従って3枚並べます。
部屋タイルは両面に地形が描かれているので、どっちから始まるのかはよくよく確認しておきましょう。
部屋タイルを並べ終わったら、自分のネズミフィギュアと敵の『配下フィギュア』を指定通り配置します。

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ちなみに、敵となる配下フィギュアにはヴァネストラの部下が姿を変えたネズミだけでなく、クモやムカデ、そしていわゆるGまでもが敵として立ちはだかります。
特にGはその性質上、ワラワラと出てきますので、頑張って倒しましょう!

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また、ボスであるヴァネストラを除けば、凶悪な猫のブロディーが最大の敵となるでしょう。
ブロディーは、普通のファンタジーRPGで言えばドラゴン! ガンバで言えばノロイ!
そんな感じの役どころなので、遭遇しないことを祈って進むしかありません(笑)

部屋タイルの脇には『ストーリー管理ボード』を置きます。
これは主に、時間や手番の行動順などを管理するボードですので、ゲームを進行する上でかなり重要になってきます。
このゲームではタイル上を探索していくのがとても重要かつドキドキするポイントなのですが、いつまでもダラダラと探索を進めていられるわけではありません。
シナリオごとに決まったページ数分、『章トラック』と呼ばれるトラック上で『砂時計マーカー』が進んでしまうと強制的にゲームオーバーとなってしまいます。
また、ラウンドごとの手番順を表示するための『手番順トラック』や各種山札置き場などもこのボード上にあります。

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手番順は、毎ラウンドの頭にネズミ手番順カードとタイル上に出ている『配下カード』をシャッフルして手番順トラックに並べていくことで決まります。
当然、先に行動できた方が有利なんですが、ここはランダムなので毎ラウンドドキドキですね。

さて、第一話では牢獄内での追手との戦闘をこなしつつ、下水道への道を見つけ出して移動、さらに追手をかわしつつ台所の地下道へ。
さらにそこから城の中庭へと脱出行を続けることになります。
途中で『台所へ行って困ってる料理人を助けよう』なんていうサブシナリオが発生したりして、最初の冒険の割にはボリュームたっぷりに遊ばせてくれます。
まぁ、サブシナリオは「クリアすると後のシナリオで役に立つアイテムが手に入るかも」程度ですので、無視しても構わないんですが。
……猫、出ますよ。

毎ラウンド、ネズミたちが出来るアクションは、移動を除いて以下の5つ。

・疾走 通常の移動に加えてさらに移動する
・戦闘 同じか隣接するスペースにいる敵に攻撃する。遠距離武器なら見えている範囲を攻撃可能
・探索 ダイスを振って成功したら探索カードを1枚引く
・回復 バッドステータスのトークンを1つを取り除く。ただし『絡まり状態』をぬけ出すにはダイスで成功する必要がある
・調査 次のタイルへ行くための行動

また、手番中ならいつでも1回『フリーアクション』として、アイテムの受け渡し、装備の変更、レベルアップなどが行えます。

移動は、アクションの前か後に1度行えます。
実際に動ける歩数は、ネズミの移動力(足跡のマーク)+ダイス1個の出目の数字、で算出されます。
疾走を選べばこれを2回行えるというわけですね。

探索で得られる『探索カード』には強力なアイテムや装備がたくさん含まれています。
基本的にはレベルアップ以外のパワーアップ方法はこれしかありません。
なので、戦闘がない時はついつい探索しまくってしまうんですが、中には悪い結果が起きるイベントカードもありますので、油断はできません。

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特筆すべきは『回復』ですかねー。
恐ろしいことに戦闘で受けた『負傷トークン』は回復アクションでは治せないんですね。
治癒術師チルダのありがたみがよくわかります。

とは言えこのゲーム、戦闘で生命点以上に負傷トークンをもらってしまっても、そこでネズミが死亡するわけではありません。
『敵に捕まってしまった』という扱いで一時的にゲームから除外されてしまうだけで済みます。
今ネズミたちがいるボード上から敵が一掃されたら、救出に成功したという事でまたゲームに戻ってくることが出来るのです。
ただし、装備してたアイテムや溜め込んだ『チーズトークン』とかは全部失ってしまうんですが……。(初期装備は残りますのでご安心を)

はて、チーズトークンとはなんぞや? と思われた方も大丈夫。これから説明いたしましょう。
ゲーム中、アクションダイスを振る機会は色々ありますが、その時、出目がチーズだった時にこのトークンが出目の数だけもらえます。
見事6つ溜まるとレベルアップ! 新たに能力カードを1枚獲得できるのです!
他にもネズミ固有の能力でチーズトークンを得られる場合もありますので、そういった能力をもつネズミは成長しやすいと言えるでしょう。
また、能力カードに書かれたアクションを使う時のコストとしても消費されます。
レベルアップ用に溜めるか、強力なアクションのコストとしてバンバン使っていくかはプレイヤーの戦術次第。

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また、敵がチーズの出目を出した場合。
ストーリー管理ボードの『配下チーズホイール』という時計盤みたいな部分にチーズトークンが置かれていきます。
これが6つ溜まると……なんと『サージ』と呼ばれる増援が発生してしまいます!
敵がボード上に存在する限り、仲間の救出やボード間の移動は行えませんので、増援が現れるとかなり厄介な展開になるでしょう。

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見事シナリオに書かれた勝利条件を達成するとクリアとなります。
第一話なら、中庭のタイルに描かれた木の根元の穴に全員が到達するのが条件ですね。

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ジャンル的に、気軽にプレイするというよりも、気心の知れた仲間と腰を据えてプレイするタイプのゲームであることは否めません。
慣れていないと、ルールの確認だけで二冊のマニュアルを行ったり来たり……で時間を取られたりなんかもしてしまいがちです。
しかし、連続したストーリーを通じて成長していくキャラクターたちには、きっと愛着が湧いてくるはずです。
強敵とのバトル、思いがけず手に入れた強力なアイテム、そして猫の手を躱しながら駆け抜ける緊張感。
どれもがあなただけの冒険に彩りを与えてくれるでしょう。

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ルール自体も意外なほど軽く、例外処理なんかもそれほど多くはないので、理解してしまえばサクサクプレイできると思います。
ただ、ところどころで用語が不統一な部分があるので、そこはなんとかして欲しかったなぁと思わざるをえません。

ともあれ、良質な児童文学のようなファンタジー世界で、緊張感溢れる冒険を味わえるという点では、かなり完成度の高い作品です。
長い長い冒険の果てには、きっと一回性のゲームでは味わえない達成感と満足感が得られることでしょう。

ネズミたちの視点から、じっくりと世界を覗いてみてください。

といった所で、今回のゲームはいかがだったでしょうか?
それでは、また次の機会にお会いしましょう。

 

ライター紹介

松風志郎(まつかぜ しろう)
ゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」所属。
ゲームシナリオライターだけでなくゲームのシステムデザインなども手がける。
アナログゲームとの関わりは古く、幅広いジャンルをたしなむ。
世界観にとっぷりと入り込めるゲームが好き。

代表作
歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「萌え萌え2次大戦(略)」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「出撃!乙女達の戦場」シリーズ
恋愛アドベンチャーゲーム「はち恋」
その他多数。