ボードゲームレビュー第144回「飛行船の時代」

「飛行船の時代」(原題:DASTARDLY DIRIGIBLES)
作者:ジャスティン・デ・ウィット
メーカー:Fireside Games/日本語翻訳:ホビージャパン
プレイ人数:2~5人
対象年齢:8才以上
プレイ時間:約60分

 


 

 

毎度どうもこんにちは。松風でございます。

唐突ですが、皆さんはスチームパンクはお好きですか?
海外では根強いファンも多くいてジャンルとしても定着してますが、日本ではその知名度もまだまだ……といった感があります。
今回ご紹介するゲームは、そんなスチームパンクに登場するガジェットの中でも、比較的我々になじみのありそうな「飛行船」をテーマにしたものです。
タイトルはずばり『飛行船の時代』です!

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スチームパンクで飛行船、とくれば「ほほう、飛行船に乗ってあちこち冒険に出るゲームですな? それで空賊とか出てきて……」と思われるかもしれませんが、ちょっと待って下さい。
よく見ると箱の下部には「ザ・スチームパンク・エアシップ・ビルディング・ゲーム」と書かれています。
そう、このゲームは飛行船の設計技師となって「ワシの作った飛行船が一番カッコエエんじゃあ!」するカードゲームなのです。
ただし、原題の方は「卑劣な飛行船」という意味だそうで……なにやら一癖ありそうな感じですね。

セットアップはまず、青い『設計図シート』をプレイヤーそれぞれが自分の前に置きます。
この設計図シートは飛行船に必要な7つの部位が描かれていて、これら全てが埋まったら飛行船の完成というわけです。
シート自体、なかなか雰囲気があって素敵です。

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全てのカードをまとめてシャッフルしたら、初期手札として各プレイヤーに5枚ずつ裏向きに配りましょう。
残ったカードは山札となり、プレイヤー人数分カードを表向きにめくって『市場』を作ります。
この市場を作る時の手順でスタートプレイヤーも決まっちゃいますので、ジャンケンすら要りません。
これでセットアップは終了です。なんて簡単なんでしょう。

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ゲームが始まると、プレイヤーが自分の手番(ターン)にやることは大まかに分けて2つあります。
ターンの頭に手札を補充することと、いくつかあるアクションの中から3つ選んでプレイする。この二点です。
これを繰り返していって、誰かが飛行船を完成させたら1ラウンド終了。
合計3ラウンドをプレイすればゲームは終了です。
各ラウンドごとに勝利点の計算をして、最終的に一番勝利点を稼いでいた人の勝利となります。
これだけなら、実にシンプルなルールに見えますね。

まずは最初のフェイズ、カードの補充から。
基本的に手札はアクションのプレイによってガンガン消費されていきますので、毎ターン補充しなくてはいけません。
手札が5枚になるまで、山札と市場のどちらかからカードを引くことになります。
複数枚引く場合は、両方から選んでもかまいません。
ただし、手札が5枚以上残っている場合は、この手順は飛ばされます。

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さて、それではここでいう「カード」とは何なのかをご説明いたしましょう。
このゲームで使用するカードには2種類ありまして、それぞれ『飛行船カード』と『特殊カード』と呼ばれます。

飛行船カードは文字通り飛行船の船体を構成するパーツを表しているカードでして、これを設計図シートの上に並べていくことになります。
飛行船はどれも『船首』『上昇エンジン』『ゴンドラ前部』『ゴンドラ後部』『推進エンジン』『上昇エンジン』『船尾』の7つの部位から出来ています。
上昇エンジンだけは2ヶ所ありますが、ゴンドラと違ってどちらも前部後部の区別は無く、同じ『上昇エンジンカード』を使用できます。

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ところで、これらの飛行船カードには『鎖』や『歯車』『シルクハット』といった感じに、7種類のシンボルマークが描かれています。
飛行船の絵柄も、それに合わせて違ったものが描かれているのが凝ってますね。
ちなみにどのシンボルマークとしても扱える、ジョーカー的な『ワイルド』のカードもあります。

しかし適当にパーツを組み合わせていると、かなりチグハグなデザインの飛行船が出来てしまいます。
これでは見た目がよろしくない。なるべくならデザインは揃えてもらいたい。
という訳で、得点計算時には『船体に最も多く使用されているシンボルマークの数×2点』があなたの船の評価(勝利点)となります。

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ちなみに7ヶ所のパーツ全部がワイルドを含まないバラバラのシンボルだった場合……それはそれで芸術的だから、かどうかはよく分かりませんけど20点もの高評価をもらうことが出来ます!

次に特殊カードですが、これは色んな効果を持ったお助けカード(あるいはお邪魔カード)になっています。
持っていれば得点計算時にボーナス点になるカードや、相手の飛行船カードを破棄させるカードなど、強力な効果が目白押しです。

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あと一歩で飛行船が完成しそうになっているライバル技師の船には『強奪』でパーツを奪うか、『テスラ式分解砲』をブチ込んでやりましょう。

さてさて、これらカードをプレイするのもアクションの内です。
1ターン中に行える2番めのフェイズ、それがアクションの実行なのです。
取れる行動は以下の5つ。

・飛行船カード、または特殊カードを1枚プレイする
・カード1枚を捨て札にする
・手札のカード1枚を市場のカード1枚と交換する
・市場を総入れ替えする
・パス

ここから3つのアクションを選んで、実行することになります。
望むなら複数回、同じアクションをプレイしてもかまいません。

ここで注目したいのが、カードのプレイに関するルールです。
飛行船カードをプレイする時、まず手番プレイヤーが手札から設計図シートに1枚置くわけですが、この時『他のプレイヤー全員も、同じパーツのカードを自分のシート上にプレイしなければならない』というルールがあるのです!
ちなみに該当するパーツのカードを持っていなければ、別に何も置く必要はありません。
「なんかそれって、みんながパーツ置いていけばあっという間にゲーム終わっちゃうんじゃない?」と思ったあなた!
なかなか鋭い!

ここで重要なのは『もし手札に同じパーツを持っていて、なおかつ既にカードを配置してある箇所だった場合、そのカードをプレイして前のカードは破棄されてしまう』という事です。
しかもカードを置けば置くほど、ラウンド終了は早まっていくわけで……。
「ああーっ!! 揃えるはずだったシンボルが滅茶苦茶にーっ!!」
そんな悲鳴がしょっちゅう、聞こえるはめになります。

そう、このゲームの本質は紳士協定に基づいた職人たちの正々堂々の設計勝負なんかではなく、壮絶な足の引っ張り合いの末に出来あがる妥協の産物をしみじみ眺めることだったのです!
ああ……原題の『卑劣な飛行船』ってそういう……。

普通のゲームでならデメリットでしか無い『手札を捨てるだけ』のアクションがあるのは、余計なパーツを捨ててシンボルの揃いを守るためだったんですね。
うーん、よく練られているなぁ!(棒読み)

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ゲーム自体は、言ってしまえば自分の場に役を揃えるだけという非常にオーソドックスな内容なんですが、ルール一つでテイストが一気にバカゲーっぽくなるのは面白いですよね。
なお、そんなバカゲーっぽさをさらに助長しているのは、マニュアルの最後に書かれた『ヴィクトリア朝侮蔑語辞典』の存在でしょう。
「あなた達の競争心を煽るため」という名目で、実にくだらな……もとい様々な言い回しの罵倒や侮蔑の表現が掲載されていますので、プレイの際には是非取り入れてみてください。

そんな訳で、ゲームそのものはもどかしいジレンマをよく表現した、なかなか良いゲームではないでしょうか。
手札とにらめっこして立てた設計プランが、あっという間にひっくり返る瞬間は、悲しくもあり楽しくもありと言った感じです。
シンボルを集めるために時間をかけるか、さっさと完成させて勝負を決めに行くか、という駆け引きの部分もちゃんとあります。
少人数でのプレイですと、特殊カードで狙い撃ちされるとどうにもならなくなる場合があったりもしますので、なるべく多人数でプレイされた方が楽しいと思います。
しかし、どんなハチャメチャな展開になっても「大らかな時代だったんだなぁ……」と目を細めることが出来るあたり、やっぱりスチームパンクというジャンルの勝利でしょう。
いろんな要因によって「こんなはずじゃなかった」飛行船が出来上がっていくのは、なかなか哀愁を誘う光景ですが、それもまた味になっていて不思議と面白いんですよね。
大空へのロマンとともに、ぜひ職人同士の熱い駆け引き(あるいはグダグダな足の引っ張り合い)を感じてみてください。

といったところで、今回のゲームはいかがだったでしょうか?
それではまた次の機会にお会いしましょう。

 

ライター紹介

松風志郎(まつかぜ しろう)
ゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」所属。
ゲームシナリオライターだけでなくゲームのシステムデザインなども手がける。
アナログゲームとの関わりは古く、幅広いジャンルをたしなむ。
世界観にとっぷりと入り込めるゲームが好き。

代表作
歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「萌え萌え2次大戦(略)」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「出撃!乙女達の戦場」シリーズ
恋愛アドベンチャーゲーム「はち恋」
その他多数。