ボードゲームレビュー第147回「フンタ:カードゲーム」

「フンタ:カードゲーム」
作者:ヨハネス・クレナー/クリストフ・レイザー/セバスチャン・レズル
発売元:ホビージャパン
プレイ人数:3~6人
対象年齢:12才以上
プレイ時間:約45~60分

 


毎度どうも、ライターの松風です。
昔から「身内以外の人間とは、野球と政治と宗教の話はするな」なんて言われたりします。
信条信仰などがダイレクトに出る話題はケンカになりやすい、というのがその理由なわけですが……。
とはいえコンフリクトが起きやすいという事は、ゲームの題材にするにはもってこいなテーマでもあるわけです。
というわけで今回は、ブラックユーモアたっぷりの政治闘争ゲーム『フンタ:カードゲーム』をご紹介いたしましょう!

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『フンタ』といえば、今までにも幾度か版上げを行っているほどの傑作ボードゲームですが、結構なヘビーゲームとしても知られています。
ですので、過去には簡略版とも言える『フンタ:大統領万歳!』なんてのも出ていました。
今回の『フンタ:カードゲーム』は、さらに輪をかけてルールが簡略化されていて、カードのみでプレイできるようになりました。
それでもフンタのエッセンスは十分に感じられるみたいですよ?

ゲームの舞台となるのは、カリブ海のどこかにあるかもしれない美しい島国『バナナ共和国』。
世の中がどんどん進んでいく間にも国際社会から取り残され気味なこの国は、古き秩序(と混沌)が今なお息づく南の楽園です。
いたる所に貧困がはびこり、中産階級なんて言葉は書類の上にしか無く、夜中には時おり銃声が聞こえてきたりする中、政治家たちは私腹を肥やすことしか頭にありません。
こんな国でもどうにかやっていけるのは、海外援助の名目で多額の資金を(使いみちに一切口を挟まず)流し込んでくれるどこかの大国のおかげです。

普通のゲームであれば、ここから国を立て直して一流国家にまで発展させる、なんて流れになるところですがフンタは一味違います。
プレイヤーは『大統領』と『それ以外の政治家』に分かれ、海外から援助された資金で予算を組み、それらをいかにして自分の懐に入れるかを画策するのです!

さて、まずはゲームのセットアップから見ていきましょう。
最も多い『政治カード』をよくシャッフルして山札を作り、そこから各自に4枚を配って手札とします。
各プレイヤーは同じ色の『反逆者カード』1枚と『仲介人カード』1枚を受け取り、反逆者カードの方は手札に入れます。
そして100万ペソと書かれた『マネーカード』を1枚、裏向きにして仲介人カードの上に横向きに置きます。
残りのマネーカードはよくシャッフルして山札を作り、政治カードの山札のとなりにでも置いておきましょう。
スタートプレイヤーである最初の『大統領』を決めたら、そのプレイヤーは『大統領カード』を受け取って自分の前に置き、その下に反逆者カードを敷きます。
これでセットアップは完了!
カードのみでプレイするだけあって、かなりシンプルですね。

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ここからは実際のプレイに入ります。
このゲームは、1ラウンド最大で5つのフェイズを進行していきます。

まずは第1フェイズ『外国援助金の受領』です。
大統領はマネーカードの山札から、プレイヤー人数+1枚のカードを引きます。
この中身を見られるのは大統領だけです。
次のフェイズの事を考えて、よーく金額を見ておきましょう。

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第2フェイズ『予算案の提出』では、大統領は他の暫定政府メンバー(プレイヤー)たちにどのように予算を割り振るか宣言します。
まぁ、要するに予算案と言いつつ「タダで転がり込んでくるカネを俺たちみんなで分けようぜ。国家運営? 知った事か!」って話です。
とりあえず大統領は裏向きにしたマネーカードの山を任意の数だけ作り、どの山を誰に渡すかを示した上で金額を宣言していきます。
この時、それぞれの金額は『ウソをついても構わない』……というかむしろそうする事が推奨されています!

「いやぁ、今回の援助金は渋くてねぇ。みんなに100万ずつしかないんだ。申し訳ない!」
などと言いつつ、自分の山には300万のカードが2枚……なんてやり方がフンタ流なのです!

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ただし、そのラウンドに引いたマネーカードの総額は、より低く宣言することは出来ますが、より多く宣言することは出来ません。
また、お釣りが出るような分け方は出来ません。
味方につけるためにちょっと多めに配りたい、なんて場合は自分の仲介人カードの上のマネーや自分の『スイス銀行口座』(仲介人カードの下)からマネーを出す事も出来ます。
各プレイヤーは、予算の山を受け取ったら、ひとまず手元に置いておきます。(仲介人の上には置きません)

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第3フェイズ『予算案の審議』に入りますと、各プレイヤーは手札の政治カードを使って、現在の予算案に投票を行います。
大統領から時計回りに、手札から1枚ずつ政治カードを自分の前に置いていきます。
もしカードを使いたくない、または手札がない場合には、山札から1枚引くこともできます。
これが一巡したら、今度は反時計回りにもう一巡カードを出していきます。
つまり、このフェイズ中には最大で2枚の政治カードが手元に並ぶことになるわけですね。

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政治カードには三種類ありまして、それぞれ色で分けられています。
まず黄色で示されている『影響力カード』は、予算案に直接賛成か反対かを投じられるカードです。
もらった予算に満足ならば影響力カードを縦向きに、不満があるなら横向きにして自分の手元に出します。
この時、カード上部の手のひらマークに書かれた数字が『票数』となります。
その下にある爆弾マークの数字は『戦力』と呼ばれますが、まだ第3フェイズでは使用しません。
カード下部に特殊な『アクション』が書かれている場合もありますが、その効果を使うかどうかはプレイヤーの任意です。
細かいテクニックですが、最初に賛成票を投じておいて、二回目で反対票を投じることも可能です。
周囲の顔色をよーくうかがっていきましょう。

次にオレンジ色の『建物カード』は、置いておくだけで永続的に効果を発揮するカードです。
影響力カードと似ていますが、場に残り続けるというのが強みなので、建てれば建てるほど有利になっていくでしょう。
票数や戦力を持った建物カードは、なくならない影響力カードとして使えます。

三つめの水色の『介入カード』は様々なアクションを行える使い捨てのカードです。
これは出した段階で即座に効果を解決するのですが、どれもかなり嫌らしい効果を持っていますので、相手の妨害に大活躍するでしょう。
フェイズ終了時に戻ってくる影響力カードや場に残る建物カードと違い、使ったら捨て札になってしまうので、使い所と相手をよく見極めることが重要です。

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また、大統領はこのフェイズ中、第2フェイズで自分に割り振ったマネーを賄賂として他のプレイヤーに渡しても構いません。
まぁ、それで頼みを聞いてくれるかどうかは相手次第ですし、自分の取り分が減ってしまうわけですが……。

最後に賛成と反対の票の集計をして、予算案が可決されたかどうかを決定します。
ここで、この先に進むフェイズが分岐します。

もし予算案が可決した場合。
各プレイヤーは自分の仲介人カードの上に置かれたマネーカードを、その下に移動させます。
その後、第2フェイズで割り振られた予算を仲介人カードの上に置きます。
つまり仲介人カードの下に入ったカードだけが、自分のスイス銀行口座に入金されて、晴れて自分の資産(勝利点)になるわけです。
そして現職の大統領がめでたく来期も続投となり、世はすべて事も無し。
第4フェイズを飛ばして第5フェイズに進みます。

もし予算案が否決された場合。
『クーデター』が発生します。
「いきなりかよっ!」と思われるかもしれませんが、言ってみればプレイヤーたちは回ってくる海外援助金をちょろまかす共犯関係。
満足に銭を寄越さない大統領などに生きる値打ちはありません。
さあ、今こそ民衆の手に正しい政治を取り戻すのだ!!
というわけで、クーデターを解決するために第4フェイズへと進みましょう。

ちなみにこのタイミングで自分がプレイしていた影響力カードは手札に返ってきて、介入カードは捨て札になります。

さて皆さんお待ちかね。
第4フェイズ『クーデター』では、第3フェイズで最も多くの反対票を投じていたプレイヤーが『第1反逆者』となります。
第1反逆者になったプレイヤーは、手札の反逆者カードを自分の前に置き、その上に『第1反逆者カード』を重ねます。

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その後、第2フェイズで自分に割り当てられたマネーカードを大統領に返却します。
牙を剥いた手下に金を支払うボスなどいないのです。
大統領はこの返ってきたマネーを使って、同盟者を募ることもできます。
ここで、他のプレイヤーは大統領と第1反逆者のどちらの陣営につくか、選択しなければいけません。
前のフェイズで賛成と反対どちらに票を入れていたかは、この際無関係です。
勝てそうな方につく、あるいはより儲けが多そうな方につく。
これが重要です。

まず第1反逆者から時計回りで、手札にある任意の枚数のカードを裏向きにして自分の前に出します。
一度出した後で、他人の出方を見てからカードを追加したり減らしたりは出来ません。
この時、手札にある反逆者カードを一緒に出していれば、そのプレイヤーは『親臨時政府派』として大統領に歯向かうという意思表示になります。
手元に反逆者カードを残しておくなら、そのプレイヤーは『親大統領派』としてクーデター鎮圧に回ることになります。
このフェイズでは、影響力カードのみが意味を持ちます。
建物カードや介入カードを一緒に出していても、それらは戦力としてカウントされません。(ただし枚数でブラフを仕掛けるために出すのはアリです!)

全員がカードを出し終わったら、一斉にオープンしましょう。
その後、各陣営の影響力カードに書かれた戦力(爆弾マークの数字)を合計します。
クーデター前に建っていた建物の戦力も、もちろん加算できます。
より多くの戦力を投入していた方が、この内紛の勝利者です。
同点なら大統領派の勝ちになります。

大統領が勝った場合。
おめでとうございます! 歴史は勝者が作るもの。
クーデターに加担した親臨時政府派は全員処刑され、仲介人カードの上に置かれていたマネーを全て失います。(直接捨て札になります)
その後、大統領派だったプレイヤーは、自分の仲介人カードの上にあったマネーを下に移動します。
それから自分に割り当てられた予算を仲介人カードの上に改めて配置します。
また、親臨時政府派のもらうはずだった予算は全て大統領に没収され、大統領一派にランダムで配分されて即座に各仲介人の上に置かれます。
親臨時政府派は自分の反逆者カードを手札に戻し、第4フェイズ中に使った全てのカードは捨て札となります。

臨時政府側が勝った場合。
おめでとうございます! 歴史は勝者が作るもの。
大統領とその支持者たちはすべて厳しい処罰を受け、自分の仲介人カード上のマネーを全て失います。(これも直接捨て札です)
その後、臨時政府側だったプレイヤーは、自分の仲介人カードの上にあったマネーを下に移動します。
それから第1反逆者は、現在の予算となっているマネーを(他の臨時政府派のものも含め)全て集め、改めてそれを再配分します。
集められたマネーは、臨時政府一派にランダムで配分されて、即座に仲介人カードの上に置かれます。
こうして第1反逆者が新たなる大統領として、大統領カードを自分の反逆者カードにかぶせて持つことになります。
ビバ新大統領! この国は新しい政治指導者を手に入れました!
他のプレイヤーは自分の反逆者カードを手札に戻し、第4フェイズ中に使った全てのカードは捨て札にします。

とはいえ、誰が新大統領になろうともルールは変わらないので腐敗政治も永遠に変わらない、というのがなかなか地獄感あふれてて黒いですよね。

最後に第5フェイズ『政治カードの補充』です。
大統領から時計回りに「手札が6枚未満のプレイヤー」は山札から政治カードを2枚引いて手札に加えます。
手札に反逆者カードがない大統領だけは、ここで他人より1枚多く政治カードを持てるというわけです。

とまぁ、こういった感じでマネーカードの山札が足りなくなるまでラウンドを回し、最後に仲介人カードの上下に置かれたマネーの総額が最も多いプレイヤーの勝利となります。

ちょっとマネーカードの置かれる位置がややこしく感じられるかもしれませんが、自分の手前(自分の所に回ってくる予定のお金)、仲介人カードの上(これから入るお金)、仲介人の下(自分のものと確定したお金)の3つあると思えば理解しやすいでしょう。

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どっかの国の税金から出た善意の援助金が、一部の悪徳政治家の私腹を肥やすためだけに浪費され、汚い裏取引の現場でばら撒かれているという構図は直球にブラックなネタですが、この黒さがシリーズ人気の秘訣でもあります。
元のゲームから随分と簡略化されているとはいえ、そのエッセンスは十分に残されていると言ってもいいでしょう。
例えば原作のフンタには大統領以外にもそれぞれのプレイヤーには役職があったのですが、今回それらはバッサリカットされています。
手軽さを求められるカードゲームとしてはそれで正解でしょう。
実際、下手したら半日がかりでプレイすることになる原作と比べると、随分プレイ時間も短縮され、とっつきやすくなっています。
ちなみに、ゲームのシステム上「いい人」では大統領は務まりません。
素知らぬ顔して自分だけがっぽりマネーを蓄え、敵と味方を見抜く眼を養いましょう。

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まぁ、平然と裏切りが横行するせいで、人間関係破壊ゲームの一つに数えられたりもしますので、人を選ぶ部分もあるかと思われます。
そこら辺がフンタの醍醐味と割り切れる面子と一緒にプレイしてみてください。
きっとブラフと裏切りと多数決によるスリリングなゲームが味わえますよ!
そして清く正しい政治ってなんだろうと、現実社会を振り返ってみるのもまた意義のあることではないでしょーか。

てなところで、今回のゲームはいかがだったでしょうか?
それではまた次の機会にお会いしましょう。

ライター紹介

松風志郎(まつかぜ しろう)
ゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」所属。
ゲームシナリオライターだけでなくゲームのシステムデザインなども手がける。
アナログゲームとの関わりは古く、幅広いジャンルをたしなむ。
世界観にとっぷりと入り込めるゲームが好き。

代表作
歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「萌え萌え2次大戦(略)」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「出撃!乙女達の戦場」シリーズ
恋愛アドベンチャーゲーム「はち恋」
その他多数。