ボードゲームレビュー第17回「エベレスト」

「エべレスト」(原題:MOUNT EVEREST)
発売元:REBEL.pl/日本語翻訳:テンデイズゲームズ
作者:アダム・コルーザ(代表作:K2)
対象年齢:10歳以上  
プレイ人数:2~5人
プレイ時間:90分


 

 どうも、ゲーム大好きライトノベル作家の番棚葵です。
 今回は登山に命を賭ける男たちのゲーム、「エベレスト」をレビューしたいと思います。
 ちなみにこのゲーム、同作家が出した「K2」というこれまた登山ゲームの続編的作品で、基本的なシステムも同じになっています。

everest01

 エベレスト。それは世界で最も高い山――そんな危険な山に、男たちは今日も挑みます。
 危険と知りながら彼らは、なぜ山に登ろうとするのか。
「そこに山があるから」と答えるのが昔からの常套句。
 しかし、このゲームの登山家(プレイヤー)はガイドの立場。
 登山の理由も「金のため」と若干ドライになっています。
 客を無事に頂上まで届け、下山するのが仕事となるこのゲームでは、ガイドであるプレイヤーが死亡することはありません。
 代わりに連れている客が、死んでしまう可能性があります。
 これで生命保険でもかけることができれば、ピカレスクロマン溢れる犯罪ゲームの完成なのですが、残念ながら本作では客が死亡すると得点が下がってしまうため、何とか生存させることが重要課題となります。

everest02

 このゲームでは、ボード上に描かれたマスに沿って登山を開始、客=クライアントを連れて頂上についたら点数がもらえ、下山してももらえます。
 ガイドの数はプレイヤー1人につき2人。別々に動かして連携を取るなど工夫し、山に挑まなければなりません。
 移動するマス数を決定するのは、プレイヤーが所持するカード。
 それぞれ自前の山札からドローし、毎ターン3枚ずつ消費して動きます。
 ここでポイントなのは、山札の内容は全プレイヤーが同じだということ。
 ランダムにドローする運要素は含まれますが、ダイスよりも戦略性を要求されます。
 カードによっては登る時より下る時の方が多く進める、など変則的な効果を持つものもありますから、なおさら自分の置かれた状況と今後のペースを考えてカードを使わなければなりません。
 マスによっては存在するだけで順応ポイント(0になると死亡する、HPのようなもの)が減っていくものや、移動力を余計に消費しなければならないものもが多々ありますので、カードの移動力を使って自分のコマをどう動かすのかは、最重要な課題となってきます。
 ちなみに、この順応ポイントなのですが、クライアントにはあっても、プレイヤー=ガイドにはありません。
 つまり、このゲームで犠牲になるのは絶対にクライアントの方とルールで保証されているわけで。
「やはり生命保険を……」と抑えつけていたアンモラルな衝動が、むくむくと頭を持ち上げてきます。

everest03

 プレイヤーはガイド2人を操作するのは前述した通りですが、彼らだけでただ脳天気にお客を引っ張っていけばいいというものではありません。
 何の装備もなしに合計8人ものクライアントを連れて歩くことは可能ですが、それはいくら何でも無茶というもの。
 山頂につくまでに全員死亡し、大幅にマイナス点数を食らうこと必至です。
 そんな登山を助けるマストアイテムが、「酸素タンク」「キャンプ」の2つ。
 これを2人のガイドで手分けして持ち運び、使用することが勝利への近道となります。
「酸素タンク」は使用することで、手札に順応カードというカードを入れることができます。
 これは手札から選択するとコマが移動する代わりに、順応ポイントが増加されるというお助けカード。
 序盤は1枚もないので、これを山札に組み込むことが登山を成功させるコツとなります。ただし、順応カード1枚を入れるごとに、手札からプレイヤーカードを1枚破棄しなければならないのでよく考えて組み込まなければなりません。
「キャンプ」はマスを1つ選んで設置することで、酸素タンクやクライアントをいくつでも置いておくことができます。
 酸素タンクは所持数に限度があるので、ガイドの1人を動かし頂上近くでキャンプを設置させ、酸素タンクをふもとから運び込むなど計画を立てることで、クライアントの生存率がぐっと上昇します。
 また、キャンプにはそのマスで減少する順応ポイントを1点和らげるという効果があり、これが意外と登山成功の鍵を握ったりします。
 これらアイテムは持ち運ぶとガイドのキャパをオーバーし、クライアント=点数の数が減少してしまいますが、山を舐めてはいけません。
 むしろクライアントの数を抑えながら、装備を整えてこつこつと山を征服していく。
 それが登山とこのゲームの正しき姿なのです。

everest04

 

 このゲームで必要とされるのは、運要素よりも計画性。
 1ターンごとに変化し、適応ポイントの減少率を増減させる「天候」が、ある程度公開されていることから、それは明らかです。
 プレイヤーは考えなければなりません。
 いかに客から死者を出さずに頂上に進むか。
 いかに効率よく客を登頂させ、下山し、点数を多く稼ぐか。
 そしてゲームをプレイしているうちに、

「2種類あるクライアントは適応ポイントの上限が違い、個別にダメージを受けることはないので、同じ種類をまとめて連れて行った方が効率いい」
「客を連れていないガイドが酸素タンクを持っていって使いまくると、効率よく順応カードを手に入れることができる」
「キャンプは適応ポイントが1点減少する場所に張り、ノーダメージなマスを増やすとクライアントの生存率が上がる」

 などの戦術が見えてきます。
 とたんに、客を連れて上り下りする多少面倒くさいだけの登山が、何とも楽しいものに。
 プロならではの腕前と戦略眼をクライアントたちに見せつけてやろうと、俄然やる気が出てくるではありませんか。
 ……とか勇んでいると、時々運が悪くてクライアントが全滅してしまうこともありますが、まぁドンマイ。
 どうせプレイヤーは死にません。追悼の涙を流しながら、点数を下げて香典に変えましょう。
 そしてふもとに降りてから、「さて次のターゲットは誰かな?」と笑みつつ、客の物色を開始してください。
「裕福なアマチュア」なら、適応ポイントの上限が小さいだけで、生還させられれば「体力のある登山家」よりポイントが2点も高いです。
 よし、これで先ほどの失点を取り戻すぞ――ああ、また死亡しました!
 点数がさらに酷いことに!
 ここまでくると「いっそ悪事に手を染めてでも勝ちたい」と思ってしまいます。
 そういうわけでAdam Kaluzaさん、次作にはぜひ「保険金詐欺システム」を搭載した山登りゲームをお願いします!(無茶振り) 

everest05

 

ライター紹介

番棚葵(ばんだな あおい)
 ライトノベル作家。
 同人サークル「冒険者の館」でゲームも制作。
 古今東西問わずアナログゲームが好き。
 ボードゲーム、カードゲーム、TRPGなど様々なジャンルのゲームをたしなむ。

代表作
・ライトノベル
「生徒会ばーさす!」
「Dソード・オブ・レジェンド」
「神をしめなわっ!」他 (集英社スーパーダッシュ文庫より)

・ノベライズ
「カードファイト! ヴァンガード」 (角川つばさ文庫より)

・ゲーム
「メイガス」 (同人ゲーム)