ボードゲームレビュー第173回「フリードマン・フリーゼの504」

「フリードマン・フリーゼの504」
作者:フリードマン・フリーゼ ヘニング・クレプケ
メーカー:アークライト
プレイ人数:2~4人
対象年齢:12才以上
プレイ時間:約30~120分

 


毎度どーもこんにちは。ライターの松風でございます。

さてさて、ボードゲームの世界は広く、今までに世に出たゲームだけでもかなりの数が存在しています。
そんな数多くのボードゲームの中から遊ぶゲームを選ぶ時って、色んなポイントがありますよね。
ルールの分かりやすさだったり、繰り返し遊べる中毒性だったり、モチーフのユニークさだったり、コンポーネントの豪華さだったり……。
でも、やっぱりせっかく買うんだったら、長く飽きないゲームを選びたいというのも人情でしょう。
そんな需要を汲み取って……かどうかは知りませんが、今回ご紹介するゲームはとにかく選べるルールのバリエーションが豊富!

というわけで行ってみましょう。タイトルは『504』です!

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デザイナーは緑色が大好きで、よく自作のパッケージを緑色にする事で有名なボドゲ界の緑のおじさん、フリードマン・フリーゼ先生。
このゲームの特色は、何と言ってもこの一作でタイトル通り504種類の遊び方ができるという点にあります。
単純計算で週に1回プレイしたとしても、軽く十年は遊べるってことですよ!

この豊かなゲームバリエーションを作り出しているのは、基本ルールに加えて9種類の『モジュール』と呼ばれる追加ルールを3つ組み合わせるギミック。
「それだと9×9×9で729種類になるんじゃないの?」と思われるかもしれませんが「同じカテゴリのモジュールは重複しない」というルールがあるのです。
だから、実際には9×8×7の504種類というわけですね。

ゲームの舞台となるのは、地球から遥か彼方の星にある超文明。
そこにはあらゆる分野に精通した科学者たちが暮らしていました。
彼らは自らの種族の行動原理となる基本原則を見出す研究に長い年月をかけており、長い試行錯誤の末にある実験に踏み切ります。
「実験的な環境下でなら、異なる部族を9つの原則で扱うことが出来るのではないか?」
彼らは9つに分類した原則を3つ組み合わせてプログラムした、異なる部族を作り出します。
そして巨大なシャフトの中に504個の異なる世界を創造し、それぞれの部族を住まわせました。
しかし、観察を続けるうちに科学者たちの中に「自分が担当する部族をより優秀だと証明したい、勝たせたい」という欲望が生まれてしまったのです。
やがて科学者たちの目的は、研究から有益な成果を見出すよりも自分自身が最も絢爛たる文明の神になる、というものにすり替わっていったのでした……。

というわけで、プレイヤーは(背景となるストーリーはさて置いて)504種類の世界で暮らす部族となって、自分たちの世界で生存競争を繰り広げていきます。
なんというか、めちゃくちゃスケールのデカいSF小説みたいですね。

504種類ものゲームをプレイできるだけあって、コンポーネントの量も尋常ではありません。
とは言っても、毎回全てのコマやタイルを使うわけではありませんのでご安心を。

ゲームにはルールブックの他に『多元世界の書』とよばれるリングバインダー式の本が入っています。
この『多元世界の書』はそれぞれのページに『モジュール』が書かれており、各ページは『スロット』と呼ばれる上・中・下段にそれぞれ分かれています。
これを組み合わせることで、ゲーム内容を決定するわけですね。

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『モジュール』は『1:輸送』『2:競争』『3:特権』『4:軍事』『5:探査』『6:舗装』『7:多数』『8:生産』『9:株式』の9種類。
各『スロット』の組み合わせによってゲームの方向性、勝利条件などがダイナミックに変化します。

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各スロットごとのモジュールには使用マップ、プレイ順、開始時の所持金の決定に関するルールがそれぞれ書かれていますが、そのままではバッティングして訳がわからなくなってしまいます。
そのため、ローマ数字で『優先度』が割り振られています。
つまり、ローマ数字の高い方のルールが常に採用されるというわけです。
使用するコンポーネントも、世界を選んだ時点で自動的に決定されます。

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各ページ、各『スロット』の左端には、組み合わせることでどんな世界なのかを表す言葉が書かれています。
例えば、最も基本となる第123世界は「個人主義に傾倒した/開拓者たちが/旅する世界」となってますし、第456世界なら「コネのある/探検家たちが/互いに争う世界」といった具合。
そうは言っても、これだけではどんなゲームになるのかわかりませんよね?

とりあえずルールでも初回プレイに推奨されている第123世界についてご紹介しましょう。
『輸送』『競争』『特権』のモジュールからなる「個人主義に傾倒した開拓者たちが旅する世界」とは、一体どんなものなのでしょうか?
……簡単に言うと「トラック野郎たちが各都市を巡ってより多くの物資を配達するゲーム」です!

まずはマップの決定。
モジュールに書かれた『優先度』から、マップ3を使用するようですね。
付属のマップシートの上に、マップ3の形になるように『都市』と『水域』の『地形タイル』を配置します。
この時、『都市タイル』は物資アイコンの描かれた面を上にして置いていきます。
残りの『地形タイル』はシャッフルした上でランダムに配置していきましょう。

各『都市タイル』には需要を示す4つの物資アイコンと、その都市で確保できる在庫物資アイコンが描かれています。
まずは在庫物資アイコンの上に『物資チップ』を4つずつ置いていきます。

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プレイヤーの手元には『トラック』コマ1つ、『コンテナカード』1枚、『移動力タイル』2枚、『司令部』コマ1個、『基地』マーカー20個が与えられます。
『移動力タイル』は「3/4」と書かれたタイルと「5/7」と書かれたタイルの2種類ありますので、それぞれ各1枚配られる事になります。

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そして『特権カード』を決まりに従ってシャッフルし、山札を作ります。
この『特権カード』は様々な効果を発揮するお助けカードで、自分の手番に購入していくことになるでしょう。
山札からプレイ人数に応じた枚数をめくって公開し、『価格マーカー』をその右端に置きます。
これを『特権市場』と呼びます。

次に適当にスタートプレイヤーを決定したら、『ゲーム用紙幣』を『開始時の所持金』ルールに従って配ります。
先行プレイヤーの方が所持金が少なくなっています。
残った紙幣はマップ脇にでも置いておきましょう。
この『モジュール』では、手番は基本的に時計回りで進行します。

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それから『都市カード』を10枚、マップの側に並べて、手番が最後になるプレイヤーから逆順に自分の首都となる都市を選びます。
この時、他のプレイヤーと同じ『都市』を首都に選ぶことはできません。

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首都に選んだ『都市タイル』の上に『司令部』マーカーと『トラック』コマを置いて、残りの9都市に『住人』コマを一体ずつ配置します。
さらに、自分が首都に選んだ都市と同じ番号の『都市カード』上に『基地』マーカーを1つ置きます。

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このゲームでは先攻するプレイヤーの方が有利になっていますので、首都選びや開始時の所持金は後攻のプレイヤーが優遇されているというわけです。

手元にある『コンテナカード』はスペースが1つだけの面を上にして置いておきましょう。
後に所持金を支払って、スペースが2つある面にアップグレードするようになっています。
同時に『移動力タイル』も3の面が一番上になるように重ねて置いておきます。
これもアップグレードによって移動力が増える仕組みになっています。

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自分の首都にある『物資』チップを1枚取って『コンテナカード』に積み込んだらゲームスタートです!

この『モジュール』で使用するフェイズは『1.購入フェイズ』『2.トラックフェイズ』『3.収入フェイズ』の3つです。
使用する『モジュール』によってはこの他に『競りフェイズ』や『配当フェイズ』などがあったりもするようです。

まずは『購入フェイズ』から。
フェイズ開始時に『特権市場』に人数に応じた枚数のカードがなければ、山札から補充します。
山札にある『特権カード』は裏面にⅠ~Ⅲまでのローマ数字が書かれていて、これが時代を表しています。
もし市場にあるカードより裏面が大きい数字のカードがめくられたら、それまであったカードは時代遅れの技術になったとみなされ、『価格マーカー』の左側に移されます。
プレイヤーは、市場にある『特権カード』を$20で購入するか、時代遅れのカードを$0で入手するかを選びます。
いずれにせよ、1ラウンド中に購入できる『特権カード』は1枚だけです。

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『特権カード』の効果には「トラックのアップグレード費用を安くする」や「毎ラウンドの収入が$10増える」といった様々な便利効果が書かれています。
カードの購入が終われば、プレイヤーはトラックのアップグレードを1回だけ実行することが出来ます。
アップグレードの内容は「コンテナの拡張」か「移動力の上昇」のどちらかです。
コンテナの拡張は1回で済みますが$80かかり、移動力は1段階ごとに$50かかります。
積める物資が多いに越したことはないのですが、荒れ地を走破するには移動力も欲しいところなので、どちらを優先させるかはお好みで。

特権の購入とトラックの改造が終われば、『トラックフェイズ』に移ります。
この世界での主な目的は、物資を各都市の需要に合わせて配達することです。
というわけで、コンテナの物資を欲しがっている都市に向けてトラックを移動させていきます。
隣接するタイルに移動するには1移動力を消費します。
ただし『山岳タイル』に移動するには2移動力かかってしまいます。
「どうしても移動力が足りない……もっと移動したい!」という時には、所持金を支払うことで『ブースト燃料』を使用することが出来ます。
払った金額に応じて移動力を一時的に増やせますが、ご利用は計画的に。

ちなみに『物資チップ』は都市以外のタイルでも積み下ろし可能です。
需要がない都市やその他の地形に下ろされた『物資チップ』は、誰かが積み直すまでそのタイルに残り続けます。

さて、そのラウンド中にトラックが移動した『地形タイル』には『基地』を1基設置できます。(これを『入植』と呼びます)
『入植』を行えば、次の『収入フェイズ』で追加収入が入ってきます。
各タイルには各プレイヤーにつき1基ずつ『基地』を設置できますが、追加収入が得られるのは「最初に『入植』したプレイヤーだけ」になります。
プレイヤーが持っている『基地』は最初に『都市カード』上に置いた1基を除いて19基。
どこに置くかはプレイヤー次第ですが、基本的に早い者勝ちなので、移動力に物を言わせてブイブイ進みたいところではあります。

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また、自分が最初に到達した『都市』からは『住人』コマを取って、対応する『都市カード』の上部に配置し直します。
これも『収入フェイズ』時に追加収入になります。

需要がある都市に物資を運んだら、コンテナの物資をその都市に供給してもかまいません。
供給したなら、その『物資チップ』を自分の手元に置いておきます。(これは公開情報になります)
需要が満たされた物資は『遮蔽チップ』を使って覆い隠します。
つまり、同じ都市に物資を運べるのは1種類につき1度だけというわけです。
ここでも早い者勝ちの原則が働いているんですねー。

2つになったコンテナスペースに違う種類の『物資チップ』を積んでいて、両方の需要が満たせる場合、いっぺんに物資を供給してもかまいません。
いずれにせよ、コンテナスペースに空きがあったら、都市にある『物資チップ』を新たに積んでいきましょう。
移動力が続く限り、複数の都市に物資を供給してもかまいませんし、同じ都市に何度も訪れてもOKです。

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ラウンドの最後にはお待ちかねの『収入フェイズ』がやってまいります。
『入植』で設置した『基地』1つにつき$5、『都市』か『山岳』に設置していたら$10の追加収入が得られます。
どんどん設置してどんどんお金を貰っちゃいましょう!
お金はどのみち勝利点には結びつかないので、序盤からガッツリ稼いで早めにトラックをアップグレードしていくのが鉄則です。

さらに、『都市カード』上に再配置した『住人』一人につき$10得ることが出来ます。
カウントが終われば『住人』コマを『都市カード』の下部に移動させ、処理が終わっている事を示します。

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全員の手番が終わり、ラウンドが終了したら全員の手元にある供給済みの『物資チップ』の枚数を数えます。
プレイ人数に応じた数以上のチップが獲得されていたらゲームは終了。
供給できたチップの枚数と種類に応じて勝利点が計算され、最も多いプレイヤーの勝利となります。

早ければだいたい4~5ラウンドでゲームが終わります。
『競争』のモジュールが入っているだけあって、基本的に早い者勝ちなゲームですので、割りと早期からバンバン『入植』やトラックのアップグレードを行っていった方が賢明でしょう。

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とまぁ、これが基本となる第123世界のゲームでした。
これ一つだけでもかなりしっかりとした遊びごたえのあるゲームになっていますよね。
ですがまだまだこんなのは序の口です。

我々が次にランダムで選んでプレイした第427世界「自己顕示欲の強い開拓者たちが互いに争う世界」では、またガラッとゲームの様相が変わっていました。
『トラック』も『物資チップ』も『特権カード』もなく、そもそも兵力を送り込んで敵の『基地』を破壊しながらジリジリと領土を拡げていき、支配領土の数を競う侵略戦争ゲームになっていたのです!

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ちなみに各地で起こる戦争はダイスで解決します。

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皆さんも遊んでみれば「『モジュール』が違えばこんなにもゲームが変わってしまうのか!」という新鮮な驚きを味わえるはずです。
他にも「交易と株式市場で栄える世界」や「道路を繋げて戦争する世界」、「未知の領域を探索していく世界」など、とても書き切れないほどの「もはや別ゲー」がズラリと揃っています。

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1つのコンポーネントで504種類ものゲームをカバーするという試みは大変興味深く、またある程度は成功していると思います。
ただ、キモである『多元世界の書』の読み方が初見では分かりづらいのと、ルールブックで参照する箇所を見失いやすいという意味では、やや不親切なゲームになってしまっているかな、といった感じも受けました。
しかし、何事も慣れだと思って割り切ってしまうなら、これほど遊びごたえのあるゲームもなかなか見当たらないでしょう!
コンポーネントには「どの世界で遊んだか」を記録できるチェックシートなんかも付いていますので、「前、何やったっけ?」となる事もありません。
ぜひ504もの多元世界の、その一端なりとも触れてみてください。
モジュールの組み合わせによって拡がるゲームの可能性が垣間見れるはずです。

もしも全世界を制覇できたら、ちょっとしたゲーマーとして誇っていいと思いますよ!(笑)

といったところで、今回のゲームはいかがだったでしょうか?
それではまた次の機会にお会いしましょう。

 

ライター紹介

松風志郎(まつかぜ しろう)
ゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」所属。
ゲームシナリオライターだけでなくゲームのシステムデザインなども手がける。
アナログゲームとの関わりは古く、幅広いジャンルをたしなむ。
世界観にとっぷりと入り込めるゲームが好き。

代表作
歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「萌え萌え2次大戦(略)」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「出撃!乙女達の戦場」シリーズ
恋愛アドベンチャーゲーム「はち恋」
その他多数。