ボードゲームレビュー第195回「シックスメイキング」

「シックスメイキング」
作者:Jozsef Dorsonczky
メーカー:ヘムズユニバーサルゲームズ
プレイ人数:2人
対象年齢:7才以上
プレイ時間:15分

 


みなさんおなじみまして! もしくは、はじめまして。
作家でフリーライターの、新井淳平です。
私が書かせていただくレビューも、気づけば12回目。担当開始から、もう1年になります。
当初は「どビギナー」だった私も今ではプレイ数100本を越え、すっかりボードゲームに対する親しみと造詣が深くなりました。
さて、そんなわけで、極めて個人的な節目の今回、ご紹介させていただくアナログゲームは、こちらです!

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

『シックスメイキング』。
赤と黄色のカラーリングが鮮やかなパッケージですね。
真ん中には「チェスの駒をあしらった王冠」が描かれています。
……おっ、なんかカッコイイぞ。
でもコレ、どんなゲームだ?
気になって王冠の下に目をやると、そこに答えが。

――それは究極の頭脳戦!

……ほう。なるほど、つまり私の出番ということか……キリッ!(ツッコミ☆歓迎)
あ、頭脳戦苦手って人も、ちょっと待ってね。
ちゃんと楽しめるようにできてるから。

というわけで、何はともあれ内容を見ていきましょう!

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

【ゲーム概要&コンポーネント紹介】
『シックスメイキング』は、俗に言う「アブストラクトゲーム」の新星です。
つまり、将棋とかオセロみたいに、モチーフや背景設定は存在しません。
そして、ゲーム中に秘匿情報と偶然要素がない。
……なるほど、どおりで頭脳戦になるわけですね。

2人対戦のゲームで、1プレイの所要時間は数分程度。
コンポーネントは、盤面となる「5×5マスのボード」と、オセロの駒みたいなコイン型をした「赤黄のチップ」のみ。
ルールも極めてシンプルで、とっつきやすさはピカイチです。
……ひょっとすると奥深さのほうもピカイチだったりして……ニヤリ。

各プレイヤーは一手ずつ、駒を置くか移動させて重ねるかしつつ、6段以上積み上げることを目指します。
駒の動きはチェスをベースにしていて、段数に応じて動き方が変わります。

1段=ポーン:縦か横に1マスだけ
2段=ルーク:縦か横に好きなだけ
3段=ナイト:L字に1回(縦2横1マスor縦1横2マス)
4段=ビショップ:斜めに好きなだけ
5段=クイーン:縦か横か斜めに好きなだけ
(6段以上=キング)

なお、3段の「ナイト」だけは他の駒を飛び越えられますが、それ以外の駒では飛び越えができません。注意してね。

6段以上の駒=「キング」が出来上がったら、ゲーム終了。
「キング」の一番上にあるチップの色のプレイヤーが勝利となります。
つまり、このゲームの目的は、王を生み出すこと。
……そっか! だからシックスで、メイキングで、キングなのネっ☆

といったところで、続いて具体的なルールを見ていきましょう。
……これより私は王を産む準備に専念する!!一日50体!!人間を私に届けよ!!

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

【ゲームの流れ‐基本ルール】
・担当する色(赤or黄)を決めて、その色の駒15枚を各自持つ(追加ルールでは枚数が変化します)。
ちなみに、赤色担当のプレイヤーが先攻となります。

・二人の間にゲーム盤を置いたら、先攻から、次のどちらかの行動をおこなう。

A、新たな駒を置く
手持ちの駒1つを、盤上の空いている任意のマスに置きます。

B、ボードに置かれている駒を動かす
盤上に置かれている任意の駒(色や段数は問わず)を動かします。
ただし、空いているマスへは移動できません。なので、動かす駒は必ず別の駒の上に乗っかることになります。
重なっている駒を動かす場合、上から好きな枚数だけを動かすことも可能です。
つまり、3段積みになっている駒の一番上の1枚だけ動かす、といったことができる(重なっている順番は変えられません)。

ルールは以上。あとは、手番ごとに両者がこのAかBの行動を繰り返していく、それだけです。
……なんというシンプルさ(゜□゜;

あ、言い忘れましたが。
直前の相手の一手を戻すような行為は厳禁です。……マニュアルさんがそう申しております。
まあ、それをアリにしちゃうと、長考と停滞の元ですからね。
……いざ、待ったなしの真剣勝負でござる!

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

【まとめ‐1】
実際にプレイして驚くのは、まず、そのサクサク感。
ぼんやりやってると、あっという間に決着がついてしまいます。
……ちなみに私はぼんやり負けたクチですが(汗)
チェスや将棋では1プレイがどうしても長くなりますが、『シックスメイキング』はこのサクサク感が良いです。
ちょっと空いた時間に、気軽にプレイできます。人数も、2人用とお手軽。
自宅で家族や友人と、はもちろん、ショップで大人数のときでも、卓をシャッフルするタイミング待ちの間などに重宝しそうです。
……チェスとは違うのだよ、チェスとは。

勝つための難易度は100%対戦相手の力量によりますが、プレイ自体は簡単。
チェス駒の動きが頭に入っている人なら、すぐにでも遊べます。インスト時間、1分以内も夢じゃない。
でも、勝つためにはだいぶ頭を使わないといけません。
何より、先々の展開を考える先読みの思考力が求められます。
……こう動かすと、きっとこう来るから、それを倒すためには先にこうして……あっ、こう来る可能性もあるなぁ――なんて感じ。
この点は、やはりアブストラクトゲームですね。
チェスや将棋、オセロなど、既存のアブストラクトゲームへの慣れが、顕著に出ます。
力量が近い相手とは、純粋極まるストイックな頭脳戦が、短時間でキレよく楽しめる。

「でも私、チェスとか将棋はあんまり……」

「そっち系は苦手なんだよなぁ……」

なんだかそんな声がちらほら聞こえてきそうですね。
……わかる、わかるぞ、その気持ちっ! 何しろ私も不得手ですから(爆)
でも、そんなときでも安心してっ♪

慣れに差がある場合も、〈特殊駒〉を導入するとゲームバランスが取れて、ばっちり楽しめちゃうんです。
というわけで、ここからが『シックスメイキング』の本領発揮。
追加ルールであるところの「特殊駒」のご説明にまいります!

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

【追加ルール‐特殊駒の使用】

実は、コンポーネントのチップの中には、通常の各色15枚の他に、3種5枚の〈特殊駒〉というものが入っています。
チップ2枚分の厚さをした〈ジャイアント〉、片表面にコブがついている〈ハンチバック〉、そして色がない〈ミレディ〉。
これらを使用する場合は、まずゲーム準備で担当色を決めた後、「スタート時の駒を編成する」という作業が入ります。
つまり、各プレイヤー、どれを使ってどれを使わないかを選ぶ、ということですね。

マニュアルによって各駒には「使用点数(コスト)」が振られていて、選ぶ際はそれが「合計12点以下」になるようにします。

・ポーン(通常チップ)=1点
・ジャイアント=2点
・ミレディ=2点
・ハンチバック=3点

ちなみに〈ジャイアント〉と〈ハンチバック〉は各色1枚ずつありますが、無色の〈ミレディ〉は1枚しかありません。
もし2人ともミレディを編成に加える=その使用権を獲得する場合は、盤の脇に置いておき、どちらも任意に使えるようにしておきます。

1枚しかないうえにコスト2点というミレディ。
……果たして、その効果とは。
……いったいどれほどスゴイ力が秘められているのか。……う~ん、期待が高まりますね~。

さて、しつこくあおったところで、そろそろ各〈特殊駒〉の効果を解説していきたいと思います。

●ジャイアント(厚口)
1枚で通常チップ2枚分の役割を果たす。
単体では「ルーク」として移動でき、重なったときは2枚分として数える。

●ハンチバック(コブ付き)
この上には、自分も相手も駒を重ねることができない。
つまり、絶対に上を取られる心配がない。これはかなり強力です。

●ミレディ(無色)
この上に駒が重なっていないとき、手番プレイヤーはこのミレディの上に駒を重ねなければならない。
もし、重ねられる駒がない場合は、通常通り手番を行う。
ちなみに、ミレディの上に駒が重なっている間は、能力が発動しません。
でも、もしまたミレディが一番上に顔を出したら、再度、上記の能力が発動します。

なお、動き方は通常の「ポーン」と同じ。
また、もしミレディが一番上になったキング=6枚積み駒が出来上がっても、ゲームは終了せず継続します。
その際「キング」の移動方法はチェスと同じく「縦か横か斜めに1マスだけ」です。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

つまり、ミレディの効果とは。
いわゆる王手をされたときでも、ミレディを出すことで延命できる、ということなのです。……アメイジングっ!
後手後手に回っている状況などでも、ミレディを出すことで相手のリズムを崩すことができます。いわば、守りの切り札ですね。
また、他の「特殊駒」も負けてません。
〈ジャイアント〉は機動力が高いので抑止力=守りとしても、当然攻めとしても、重宝します。
〈ハンチバック〉は、上を取られないという絶対の信頼があるので、戦略の中心に考えていくことができる。
守りを考える必要がないので、こいつが主戦場にいると途端に攻めに安定感が出ます。

今回のプレイでは、私は「基本ルール」での対戦では負けっぱなしでした。
……だ~か~ら~、私は小学生にボロ負けするほどアブストラクトゲームが苦手なんですってば(泣)
だがしかし!
「特殊駒」を入れてからはどうでしょう。
確かに序盤は劣勢でしたが、〈ミレディ〉を使って体勢を立て直し、〈ハンチバック〉で攻勢に転じる。
〈ハンチバック〉の下に〈ジャイアント〉を積み込んで、いっきに段数アップ。そして、ついに念願の勝利に漕ぎ着けました!
相手も〈ジャイアント〉と〈ハンチバック〉を使ってはいたんですが……いやぁ、苦手でもなんとかなるもんですねえ(嬉)

ちなみに、大人と子どもで対戦するときなんかは、お子様のみが「特殊駒」を使うと、いい勝負になると思います。
また、力量差がちょっとだけのときは〈ミレディ〉を持つか持たないかが、ほどよいハンデになるのではないかと。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

【まとめ‐2】
勝つために大事なのは、いかに相手の上を取るか、です。
考えるうえで難しいのが、重なるたびに駒の動き方が変わる、ということ。
また、逆に分離することでも動き方が変わるというのが、実におもしろいですね。
何段積みにすれば相手の次手を不自由にできるか、といった考えも必要になってきます。
プレイ風景はあっさりしたものですが、「特殊駒」を加えてのプレイ感はこってり濃厚。やり応え充分です。

また、時と場所を選ばない手軽さが、親しみやすくていいですね~。
チップと盤面だけなので、持ち運びも簡単です。――いや、盤面はちょっと携帯しにくいかな?
でも、どちらも強度といい手触りといい、しっかりした木製。ボードに至っては重厚感と品のある黒塗りの造り。
高級感があっていいじゃないですか。普段のプレイを考えると、やっぱりこのほうが嬉しいですね。
実際、頻繁に携帯使用するようだったら、自分で5×5のマスを書いたシートなりを作ればいいわけですしね☆
あ、あと、不慣れなうちは「何段が何の役でどういう動きか」をメモした早見表も用意しておくといいかも。
きっと、プレイが一層円滑になると思います。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

今回ご紹介した内容の他にも「6人の王」と題されたヴァリアントルールがあったりするのですが。
それはまた、皆さんご自身の目で確かめてみてください★

といったところで、今回の『シックスメイキング』いかがだったでしょうか?
シンプルなルールで、奥深い頭脳戦。手軽でありながら末永く遊べる、おすすめの一作です。
――ぜひ、一家に一台(笑)

以上、オセロの「無敗」ならぬ「無勝記録」絶賛更新中の、新井淳平がお送りしました。ではではまた~。

 

ライター紹介

新井 淳平(あらい じゅんぺい)
【小説家】兼【フリーライター】。
最近はゲームシナリオのライティングにも携わる。
ボードゲームのプレイスタイルは、出遅れ追い上げ型。
ダイス運は、最悪だけどドラマティック。

著書
『シンデレラゲーム』(オリジナル小説・映画化)
『猫侍 久太郎、江戸へ帰る』(ノベライズ小説)
『猫侍 玉之丞、争奪戦』(ノベライズ小説)