ボードゲームレビュー第204回「サイズ-大鎌戦役-」

「サイズ-大鎌戦役-」
作者:Jamey Stegmaier
メーカー:アークライト
プレイ人数:1~5人
対象年齢:14才以上
プレイ時間:約90~120分

皆さんどうもこんにちは。ライターの松風です。
2月に入ってまだまだ寒い日が続きますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
今年は寒気の影響で例年よりも厳しい寒さなようで、暖かい部屋にこもってゲーム三昧……な機会も多かったりするかもしれません。
それなら、ちょっとばかりヘビーなゲームを試してみませんか?
というわけで今回ご紹介するゲームは、そんな寒い季節がよく似合う戦略級ゲーム『サイズ -大鎌戦役-』です!
話題性には事欠かないタイトルでしたので、名前くらいは聞いたことあるよ、という方も多いんじゃないでしょうか。

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そもそもこのゲームは、ポーランド出身のアーティストであるヤコブ・ロザルスキー氏の描くコンセプトアートを原作としています。
舞台となるのは、『メック』と呼ばれる巨大ロボが兵器として闊歩する、第一次世界大戦直後くらいの東ヨーロッパによく似た世界。
世界で唯一、メック製作などの超テクノロジーを有していた『ファクトリー』と呼ばれる国が突如鎖国を宣言。
技術力をファクトリーに頼っていた周辺各国は、自国を東欧のリーダーにするため、それぞれの思惑でファクトリーを目指すことに……というのが世界背景となっております。

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こう聞くと、国家間で覇権を争うバリバリの戦争シミュレーションのようにも思えますが、そう単純でもないのがこのゲームの特色です。
ゲームの目的は『星章』と呼ばれるマーカーをボード上にある勝利トラックに置いていき、最初に誰かが『星章』を6個集めるとゲーム終了。
得点計算を行って、最も多くの『資産』(手持ちのコイン)を集めたプレイヤーが勝利となります。
『星章』を置くための条件は全部で9つあり、どれを獲得していくかで戦略に幅が出て来る仕掛けとなっています。

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まずはボードを拡げ、諸々のセッティングを行いつつ、『所属国マット』と『プレイヤーマット』の2つを各プレイヤーに配ります。
ルールにはランダムで配ると書いてありますが、それぞれの国家は独自の能力を持っていますので、使いやすい、あるいは思い入れのある国を選ぶのもいいでしょう。

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参考までに、各国の名前とその特殊能力をざっくりとご紹介いたしましょう。
●ラスヴィエト連邦……『容赦なし』
このゲーム、通常は前のターンと同じアクションを行えず、違うアクションを選ばないと行けないのですが、ラスヴィエトはこの制限を無視できます。
目先の目標がしっかり見えているなら、それを達成するための時間は段違いに早くなるでしょう。
●クリミア・ハン国……『弾圧政治』
手番に1回まで、手札の『戦闘カード』1枚を任意の『資源トークン』1個として消費できます。
つまり軍拡しまくっていても内政の無駄になりにくいというわけですね。
●北方王国……『水泳の達人』
この国の『労働者』はボード上の『河』マスを越えられます。
なんだかおっかない名前だった前2つの国の能力に対して、水泳って……と思ってしまいますが、これが実は結構強力な能力です。
わざわざ『労働者』を『メック』に運んでもらう必要がないというのは、移動に関してかなりのアドバンテージがあると言えるでしょう!
●ポーラニア共和国……『寄り道』
『遭遇カード』を引く時、通常は3つの選択肢から1つを選んで実行するのですが、この国は2つ選んで実行出来ます。
『遭遇カード』は決して有利な効果ばかりでもないのですが、なにせゲーム中に引ける回数がそんなに多くないので、2倍の恩恵を受けられると思えばなかなか強力です。
●ザクセン帝国……『威圧』
この国は『目的カード』の達成や、戦闘での『星章』の獲得数に制限はありません。
ガンガン戦争を仕掛けてゲームの早期決着を目指すには有利な能力と言えます。
その分、しっかりと軍備を固めないといけないのですが。

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なんとなく国名を見ているだけでも、元になった国家がわかりますよね。
『本拠地』と呼ばれるゲームボード上のマスにはあと2つの国の紋章も描かれていますが、これは拡張セットに入っている勢力になっています。
トガワ幕府……いったいどこの国家なんだ……。
この他にも、『メック』を生産していくことで開放されていく『メック能力』も各国によって差がありますので、色んな国でプレイしたくなりますよね。
さて、担当する国は『所属国マット』で決まりますが、その国がどういう体制を敷いているのかは『プレイヤーマット』で決まります。
愛国主義だったり農業主義だったり産業主義だったりと色々な政治方針が書かれていますね。
これによって初期の所持金や、アクションで支払うコストに若干差が出るようになっているのです。

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この二つのボードの組み合わせによって国の得意不得意が決まりますので、同じ国でもまた違った感覚で遊ぶことができるでしょう!
『プレイヤーマット』は4つのエリアで区切られていまして、それぞれ上段と下段で2種類のアクションが行えるようになっています。
プレイヤーは、各ターン毎に4つのエリアから1つを選んで、上下のアクションをプレイして行くことになります。
ただし、ラスヴィエトの項目で前述した通り、2ターン続けて同じエリアを選ぶことは出来ません。
先々の状況を読んでムダのないアクションを選択していかなければならない、というのがこのゲームの難しくもあり面白い所でもありますね。

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領地を拡げ、ユニットを増産し、資源を獲得し、相手と戦争をする。
ざっくりまとめると、ゲーム中にやる事はこの4つに集約されるでしょう。
ただし、戦争ばかりやっていても勝てないのがこのゲームの特徴の一つ。
なぜなら、『星章』を置く条件の一つにもなっている国民からの『支持』が、得点の倍率に大きく関わってくるからです。

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ボードの左上にある『支持トラック』を見てもらえれば分かる通り、トラック上の『支持マーカー』の最終的な位置によって獲得できるコインの枚数にかなり差がつく事になるのです。
この『支持マーカー』は、『メック』や『キャラクター』での戦闘に『労働者』が巻き込まれると下がってしまいます。
具体的に言いますと、戦闘で勝利した陣営は、撤退させた相手側ユニットの『労働者』の数だけ自国の『支持』を失ってしまうのです。
『建物』を建築し領土を拡大するのは『労働者』の役目ですが、だからと言って目障りな他国の『労働者』を片っ端から潰していては民心はどんどん離れていってしまいます。
こういうルールが有ることにより、実は意外なほど戦闘は起きにくいのです。

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戦闘が起きにくい理由は戦闘ルールにもあります。
まず戦闘が発生すると、お互いのプレイヤーは『戦力ダイヤル』に消費する『戦力』の値を設定します。
この『戦力』は、自国の『戦力トラック』に蓄えた『戦力』の数値以下でないといけません。
そして戦闘が発生したマスにいる「戦闘可能なユニット」の枚数だけ、手札から『戦闘カード』を選び出しダイヤルに挟みます。
これらの合計値を『総戦力』として、一斉にオープンして比べ合い、高い方が勝者となるのです。

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ここで使った『戦力』や『戦力カード』は戦闘が終われば失われてしまいますので、どれだけ張り込むかは読み合いが必要になるでしょう。
『戦力』と『戦闘カード』はアクションを使って獲得するリソースの一つで、『星章』条件の一つでもありますので、無闇に戦闘するのはリソースの損でもあるのです。

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この辺のバランスが他の戦略級ゲームと一線を画す部分ではないでしょうか。
無論、すべて承知の上で戦争に邁進するプレイスタイルもアリでしょう。(ザクセン帝国あたりが向いてると思います)

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また、ゲーム中盤以降の展開として、『ファクトリー』に向かうことで『ファクトリーカード』というものが貰えます。
これは『プレイヤーマット』を拡張するカードでして、単純にアクションで選択するエリアがもう1つ増えるのです!
ゲーム中1枚しか手に入りませんが、どのカードを得るかは早い者勝ちですので、欲しい効果があるならば積極的に『キャラクター』を進軍させることになります。
これによって『本拠地』周辺に引きこもるプレイでは勝ちにくくなっているのも、いいバランスの取り方だと思います。

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ヘビーゲームらしく細かいルールは他にも色々あるのですが、流れさえつかめればそんなに複雑なゲームでもないでしょう。
やはりオトコノコとしては巨大ロボなどが出て来ると、バリバリと激しいバトルを繰り広げるルールを想像してしまいがちです。
しかし、そのへんグッと抑制の効いたルールデザインになっているのが、戦争の気配を匂わせながらもどこか牧歌的な風景を持つ原作アートにマッチしていて、独特な雰囲気のゲームに仕上がっているんじゃないでしょうか。
拡張セットを使うことで、追加国家だけでなく飛空艇ユニットなんかも加わるそうですので、一つのゲームとしても楽しみ方の幅はかなり広いと言えるでしょう。
登場する各国の『キャラクター』たちにも詳細な設定があったりして、感情移入できる要素もバッチリです。(実は5分の3は女性キャラ!)
できればじっくり腰を据えて何度も遊びたいタイトルですね!

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ヘビーゲーが好き、原作アートが好き、巨大ロボが好き、歴史改変SFが好き、等々の方に刺さる間口の広いゲームですので、そういった要素がお好きなら一度はプレイされることをオススメしますよ!
といった所で、今回のゲームはいかがだったでしょうか?
それでは、また次の機会にお会いしましょう。
ライター紹介
松風志郎(まつかぜ しろう)
ゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」所属。
ゲームシナリオライターだけでなくゲームのシステムデザインなども手がける。
アナログゲームとの関わりは古く、幅広いジャンルをたしなむ。
世界観にとっぷりと入り込めるゲームが好き。
代表作
歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「萌え萌え2次大戦(略)」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「出撃!乙女達の戦場」シリーズ
恋愛アドベンチャーゲーム「はち恋」
その他多数。