ボードゲームレビュー第215回「ヘルヴィレッジ」

「ヘルヴィレッジ」
作者:黒田尚吾
メーカー:GroupSNE
プレイ人数:2~5人
対象年齢:10才以上
プレイ時間:40分~100分

 


 

みなさんおなじみまして、もしくは、はじめまして。
作家でフリーライターの、新井淳平です。
担当21回目となる今回のレビュー作品は、こちら。

『ヘルヴィレッジ』。
パッケージを見て、ピンと来た方も多いのではないでしょうか?
そう、見覚えのある、このポップでかわいらしいアートワーク。
本作は、かの名作『デモンワーカー』と世界観を同じくする新作なんです。
……アメイジング!
ご存じない方のためにご解説いたしますと――
『デモンワーカー』は2016年に発売された、国産ワーカープレイスメントの傑作。
今でも根強い人気を誇っており、私もいまだによく遊んでおります。
――話を本作に戻しますと。
ゲームデザインは前作同様、グループSNE・黒田尚吾氏。
前作は「悪魔たちの経済戦争」がテーマでしたが、今回のテーマは「地獄で村興し」。
なんかもう、おもしろそうな匂いがプンプンしますね~♪
では、さっそく世界観から見てまいりましょう。
……地獄へようこそ。……○○○○○○○○ーーーーっ!!(店長註:伏字にしました)

【世界観&ゲーム概要】
プレイヤーは名立たる魔王のひとりとなって、よりよい地獄づくりを目指します。
主眼となるのは、「はじまりの広場」しかない村にどんどん物件を建てていくこと。
他にも、悪魔を召喚したり恐怖の作戦を実行したりして、地獄を盛り立てていきます。
最終的に最も多くの勝利点〈いびるポイント(EP)〉を獲得したプレイヤーが優勝。
地獄を繁栄させた最大の功労者として表彰されます(たぶん)
……ぬははははっ!おまえも功労者にしてやろうかっ!

ゲームは6フェイズ×7ラウンドの勝負。
前作同様、ワーカープレイスメントゲームにしては短期決戦ですね。
身の引き締まるタイトさで、スケジュール管理が重要となります。
ゲームの大まかな流れは、以下の通り。
・各自ダイス3個を振る
・ベース収入を得る
・自分のダイスをワーカーとして設置
・設置場所に応じた効果を処理
・運転コストの支払い
・次ラウンドの準備
――といった感じ。
では、具体的な準備に入っていきましょう。

【ゲーム準備&コンポーネント紹介】
まずは卓上に、ゲーム盤となる〈職場ボード〉を広げます。
ボードには〈人間界〉や〈墓場〉など10ヶ所の派遣先と得点表が描かれています。
……あ、得点表はエラッタあるので、公式サイトから訂正版をダウンロードしてね☆

ボード右端の「ラウンド表示」欄に、1枚ずつ〈支払いカード〉を裏向きにセット。
これは、ラウンドの終わりに支払うことになる資源コストを表します。
例えば「生贄3個」「武具4個」など。
シャッフルしてランダムに配置するのですが、7ラウンド目だけは2枚重ねて設置。
つまり、最終ラウンドは普段の2倍の支払いが発生する、ってこと。
(3と5にも2枚ずつ配置する「ハードモード」もあります。公式サイト参照)
逆に、1ラウンド目には、支払いなしの「平和な日」カードを、必ずセットします。
これはオモテ向き。
また、ここまでセットしたら、2ラウンド目の1枚もオモテにします。
ゲーム中は常に、今と次ラウンドの支払い内容が明かされている形になるわけですね。

次に、手札になる〈地獄カード〉(76枚)をシャッフルして裏向きで山札にします。
〈地獄カード〉は大きく分けて「悪魔」「作戦」「物件」の3種類。
――内容はのちほどご紹介しますね。
準備段階ではこの山札から各自5枚を引き、そのうち2枚を手札にします。
残った3枚は山札に戻して再度シャッフルしておきましょう。

次に〈学問カード〉(10枚)。各自ランダムに2枚ずつ引いて、1枚を採用。
不要の1枚と残りのカードは使用しないので、箱にしまっちゃいます。
〈学問カード〉は、ゲーム終了時に条件を満たしていると得点になります。
例えば「人間学」というカードなら、内容は以下の通り。
「召喚条件〈生贄〉を含む、場に出た自分のカード枚数×3EP(最大21EP)」
〈学問カード〉の条件達成は大量得点のチャンス。
勝つためには欠かせないといってもいいでしょう。

あとは、みんなの届く位置に「はじまりの広場」カードを置いて、場のセットは完了。
このカードの上下左右に、〈物件カード〉をみんなで繋げていくことになります。
……村を作るとはこういうことさ。
さて、ここからはプレイヤーごとの準備。

プレイヤーカラーを決めて、サマリー1枚と、同色のダイス3個ずつを持ちます。
さらに、同色の〈個別マーカー〉9個。うち1個は、得点表の「25」に配置します。
……プレイ中にマイナスされることもあるので、25点スタートなんですね~。
なお、残り8個のマーカーは、「物件」を建てたとき自分のだと示すために使います。
――話を戻しまして。
続いては、〈個別ボード〉を受け取り、各マスに対応したマーカーを1つずつセット。
上3段はそれぞれ資源「生贄」「武具」「飯」の所有数を表します。
各自、3種4個ずつ所有した状態でスタート。
なお、マス目が10までしかないことでもわかる通り、最大所有数は10個までです。
……貯め込まずにどんどん使っていこうね。ザッツ経済活性化っ☆

4段目は、毎ラウンド「収入フェイズ」に得られる〈地獄カード〉の枚数を表します。
村に「物件」を1個作るごとに1アップでき、手札の充実が図れます。
同様に5段目は、毎ラウンド「収入フェイズ」に得られる資源の数を表します。
これも「物件」を作ることでアップ可能。
1マスごとに、3種資源のうち任意の1個を得られます。
つまり、収入ベースのアップには「物件」の作成が欠かせない、ということ。
……テーマにも通じる「村づくり」が、いかに重要かわかりますね。
セットアップは以上です。
ではここから、実際にゲームを始めていきましょう。

【ゲームの流れ】
●ダイスロールフェイズ
全員一斉に、持っているダイス3個を振ります。
手番は、出た目の合計値が高い人から。
それぞれ〈手番順タイル〉を受け取りましょう。
なお次の「収入フェイズ」で、3番の人は任意資源を1個、4番は2個、得られます。
……追われる者より追う者のほうが強いんじゃ~!
あ、ちなみに。
このとき出たダイスの目は、そのままにしておいてください。
あとの展開に大きくかかわってきますので(ニヤリ)

●収入フェイズ
〈個別ボード〉の収入ベースの値と手番順の分、各自〈地獄カード〉や資源をGET。
……収入ベースは0からスタートなので、早いとこ「物件」を建てねば!

●ダイス配置フェイズ
手番順に手持ちのダイスを1個ずつ、〈職場ボード〉の任意マスに配置していきます。
ちなみに、1個の職場に配置可能なマスの数は、プレイ人数によって決まっています。
写真の「妖鉱山脈」なら、3人プレイで1マス、4人で2マス、5人は3マス。
なお「謁見の間」と「邪心崇拝」には制限がなく、いくつでもダイスを配置できます。

ではここで、各職場の効果をご紹介したいと思います。

・人間界:置いたダイスの出目分の個数、「生贄」をGET。
・兵器工場:出目分の「武具」をGET。
・スライム牧場:出目分の「飯」をGET。

・妖鉱山脈:出目分、任意の資源をGET。種類混合もOK。
・作戦室:出目1~2=任意資源2個、3~4=全種1個、5~6=全種2個GET。
・研究所:出目分の枚数〈地獄カード〉を山札からGET。

・市場:出目分の個数、手持ちの3種資源や〈地獄カード〉を別種に交換できる。
「生贄×1」を「武具×1」にしたり、「地獄カード×1」にしたり、など。
〈地獄カード〉1枚を捨てて1枚引く、なども可能。
・墓場:出目分、手札の〈地獄カード〉を捨て札にして、その枚数分のEPをGET。
・謁見の間:置いたダイスの個数、条件を満たす〈地獄カード〉を場に召喚できる。
または、召喚する代わりに、任意資源1個をGET。

・邪心崇拝:まだ手持ちにあるダイス1つの出目を、任意の数に変えられる。
さらに、任意資源1個と1EPをGET。
※この職場「邪心崇拝」のみ、即時効果発動。

さて、ここまで見てきたらもう、出目の大事さがおわかりですね?
同じ一手でも、出目によって収入量や効果使用回数が、大きく変わってしまうのです。
――じゃあ「6」の出目が一番いいんだね?
いえ、ところがドッコイ。
そうは問屋が卸さないのですよ。
実はこのゲーム、配置済みの他者のダイスを蹴り出すことができるんです。
……な、なんだってーー!!

ただし、蹴り出すことができるのは、置く自分のダイスより大きい目のものだけ。
例えば――
自分の置きたい職場に、他者のダイス「5」がいたとします。
手持ちのダイスに「4」以下があれば、それで相手の「5」を退け、職場を奪える。
なお、退けられたダイスは、出目が「-1」される形で持ち主の手元に返されます。
出戻りダイスの持ち主は、以降の手番に改めてそのダイスを配置しなおすことに……。

つまり、小さい出目のほうが、職場を確保できる確実性が高いんです。
出目「1」ともなれば、もう何者にも退けられることがありません。
だがしかし。
利益は反対に、出目が小さいと少なくなってしまうわけです。
出目の大小それぞれに異なる利点が存在するため、理不尽な運ゲー感が発生しない。
……そこが『ヘルヴィレッジ』の、いーいーとーこー!
マス数は充分あり、代替えの利く効果のマスもあるため、衝突の連続ということは稀。
ですが、望むならば、バチバチにやりあうプレイも可能というわけです。
これは楽しさの幅が広がりますね。
……よろしい、ならば戦争だ。

●職場処理フェイズ
さて、やりあったにしろあわなかったにしろ、全員が全ダイスを配置し終えたら。
ボード左上の「番号1」の職場から順に、効果を解決していきます。
なお、同じ職場に複数人いる場合は、手番順の早い人から行動できます。
各職場の効果は先ほど説明した通り……なのですが。
ここで「謁見の間」での「召喚」について、補足したいと思います。
ありていに言うと、召喚とは、手札の〈地獄カード〉を場に出す行為です。
なお、ゲーム終了時、場に出ているカードのEPが加算されるので、コレ重要。

召喚するためには2つの条件があって、その1つ目はコスト。
カード左下にアイコンで描かれた資源を、コストとして支払えないといけません。
……これは前作の『デモンワーカー』と同じですね。
そしてもう1つは、ダイスの目。
「謁見の間」に置いたダイスの目と同じ目が、カード左上に描かれていないとダメ。
これ、私が今回ちょっと苦戦したところです。
目的の出目をロールで出せず、召喚を次ラウンドに見送ったりしました。
「邪心崇拝」で出目変更もできたのですが、1行動消費するのが惜しくって(汗)
あ、ちなみに、「1」のダイス目は全カードとも召喚可能になっています。

さて、ここらでいっちょ、〈地獄カード〉の内容を詳しく見ていきましょう。
前述した通り、大きく分けて3種類あります。
まずは、その1「悪魔」。
場に召喚することで、固有の様々な特殊能力を使えるようになります。
例えば。
・サラマンダー:手札を何枚でも捨て、捨てた枚数分の任意資源を得る(いつでも)。
・デュラハン:手持ちダイス2個の目を変更(「邪心崇拝」にダイスを置いたとき)。
・黒鉄ゴーレム:ダイス目を「+-1」する(「兵器工場」にダイスを置いたとき)。
・ゴブリン:飯2個を得る(「人間界」に置いたダイスの効果処理のとき)。
――といった感じ。
得られるEPは控えめですが、特殊能力でゲームを有利に運べるようになります。

その2「作戦」。
こちらは、得点がメインのカード。
中には、即時解決の追加効果で、資源やカードが得られるものもあります。

その3「物件」。
他の2種類と違い、「物件」は召喚と同時に「村」に連結配置することになります。
「村」っていうのは「はじまりの広場」から拡がっていくアレね。
〈物件カード〉の4辺には、それぞれアイコンが描かれています。
「2EP」とか「資源」とか「カード」とか。
これは連結の際、辺のアイコン同士を一致させることで、描かれた収入をGETできる、ということ。
くっつけたカードの持ち主はもちろん、くっつけられたほうの人も収入を得られます。
……まさに持ちつ持たれつ。仲良く繁栄すべし。
また、「=」は、くっつけたアイコンと同じと見做されるため、何と付けてもOK。
「2EP」なら、即座に「2EP」GET。
「カード」なら、収入ベースのカード欄のマーカーを1アップ。
なおかつ、即座に1枚カードを引ける。
「資源」も同様に、収入ベース1アップと同時に任意の資源を1個もらえる……と。

どの種類の〈地獄カード〉を積極的に召喚していくかで、戦術が大きく分かれます。
もちろんこのゲームの肝は「物件」ですが、「物件」中心の立ち回りは、出遅れるとかなりキツイです。
現に今回のプレイで私は、序盤に〈物件カード〉が引けず、すっかり置いてかれてしまいました。
でも、そんなときでも、「悪魔」や「作戦」中心の戦術をとれば充分戦っていける。
……安心してください。ちゃんとゲームバランス考えられてますよ。

●支払いフェイズ
全てのダイスの職場処理が終わったら、次は恐怖のお支払いでございます。
〈職場ボード〉ラウンド数のところに置かれている〈支払いカード〉の内容分、資源を払うんですが。
実はこれ、任意です。
ただし、払わない場合は、払わない資源1につき2EP、マイナスされてしまいます。
例えば、「武具3」全部を払わない場合「-6EP」。けっこう響きます(汗)
なお、「武具2」だけ払って「-2EP」という形も、もちろん可能です。
どれだけ支払うかは毎ラウンド、懐事情と相談して慎重に決めましょう。
……悔いが残らない方を自分で選べ。by兵長。

●ラウンド終了フェイズ
ここでは主に、次のラウンドの準備をしていきます。
が、まず、手札の枚数がこの時点で7枚以上の人は、6枚にしないといけません。
要らないカードを山札の横「捨て札置き場」にオモテ向きで捨てましょう。
ちなみに、山札が尽きたときはこの捨て札をシャッフルして再利用です。
手札調整が済んだら、〈職場ボード〉のダイスを各自、全部回収。
その後、このラウンドで使った〈支払いカード〉を箱にしまいます。
あとは、次々ラウンド用の〈支払いカード〉をオープン。
これらが済んだら「ダイスロールフェイズ」に戻って、次のラウンドを始めましょう。
なお、7ラウンド目の場合は、このフェイズが終わったところでゲーム終了。
点数計算に移行します。

【ゲームの終了-得点計算】
各自、以下の3つを足して、最終得点を算出します。
「ゲーム中に得たEP」「場に出した〈地獄カード〉のEP」「学問カードのEP」。
〈地獄カード〉というのは「悪魔」「作戦」「物件」全てです。
マーカーが得点表を1周した場合は〈50EPトークン〉を受け取ります。
そして、2周目に入りましょう。
計算の結果、最多得点を獲得したプレイヤーが優勝。
あなたこそ地獄の村興しに最も貢献した魔王サマでございます。
ちなみにタイブレイクはないので、同点なら仲良く互いの貢献を讃え合いましょう。
……ポジピースっ☆

【まとめ】
実は私、前作『デモンワーカー』大好きっ子なんですが、今作も負けておりません。
ひいきめ抜きに、今作『ヘルヴィレッジ』もバッチリおもしろい。
タッチこそ似ている2作品ですが、プレイ感はけっこう違います。
一番はなんといっても、ダイスの存在でしょう。
独特な使い方で、システムもとてもよくできています。
ワーカー系はコツコツがメインですが、邪魔する楽しさも選べて、さらにグッド。
あとは、〈支払いカード〉。
これがあるため、タイトなハラハラ感が増しているのも好感です。

前述もしましたが、勝ちを目指す攻め方は大きく分けて3通り。
収入ベースを上げて拡大再生産していくなら「物件」で村づくりを中心に。
特殊能力を活用したアクロバティックなプレイは「悪魔」を召喚して。
得点狙いの直球勝負なら「作戦」狙いで。……といった感じ。
さらには、各プレイスタイルの中でも〈学問カード〉でまた戦術が変わったりして。
繰り返しのプレイでも楽しめること請け合いです。

前作同様で良かったのは、大量得点可能な要素の内容が、隠匿情報なこと。
(前作なら〈計画カード〉、今作なら〈学問カード〉)
勝負の途中で優勢劣勢が透けることなく、最後までプレイが楽しめます。
ボリュームアップに伴いプレイ時間は若干伸びたものの、中弛みとは無縁。
ポップなイラストも相まって、ワーカー系初心者の方でも取っつきやすいと思います。
名作のおもしろさを継承しつつ、新たな楽しさも加わった、ナイスな続編。
もちろん前作が未プレイでも問題なく楽しめます☆
……前作ラブなオイラは、好きだった「悪魔」を今回も使ってみたりして。
ともあれ。
皆さんもぜひ、『ヘルヴィレッジ』で素敵な地獄をつくっちゃいましょうっ♪
――といったところで、今回はここまで。
以上、地獄を揺さぶる男、ヘルシェイク新井淳平がお送りしました。ではではまた~。

【ライター紹介】
新井 淳平(あらい じゅんぺい)
「小説家」兼「フリーライター」。
ゲームシナリオのライティングにも携わる。
ボードゲームのプレイスタイルは、出遅れ追い上げ型。
ダイス運は、最悪だけどドラマティック。
【著書】
『シンデレラゲーム』(オリジナル小説・映画化)
『猫侍 久太郎、江戸へ帰る』(ノベライズ小説)
『猫侍 玉之丞、争奪戦』(ノベライズ小説)