ボードゲームレビュー第218回「ウォレット」

「ウォレット」
作者: マリー・フォート、ウィルフリード・フォート
メーカー:ホビージャパン
プレイ人数:2~7人
対象年齢:8才以上
プレイ時間:15~30分

 


 

みなさんおなじみまして。もしくは、はじめまして。
作家でフリーライターの、新井淳平です。
担当22回目となる今回のレビュー作品は、こちら。

『ウォレット』。
このゲームの鍵となるのは、そのものズバリ「財布」です。
なぜ財布? と思ったそこのあなた。

……説明しよう! ゲーム開始までのあらすじ!(個人的脚色アリ)

その晩、街一番の高層ビルディングでは、某マフィアのボスのバースデイパーティーが開催されていた。
しかし、宴もたけなわというとき、会場の扉が激しく外から叩かれる。
「警察だ!ここを開けろ!」
途端に会場は蜂の巣をつついたような大騒ぎ。ボスは一目散に屋上へと駆け出した。
そして停めてあったヘリでそのまま逃走。自分だけ夜空の彼方へと消えてしまった。
問題は、取り残されたあなたたちプレイヤー。パーティーに参加していた面々だ。
ボスの後を追って屋上まで来たはいいものの、もうヘリはない。
目の前にあるのは、一個の財布だけだった。

ボスはヘリに乗り込む際、その場に財布を落としていったのだ。
……ってボス、財布めっちゃ庶民派ですやん(呆然)
と、それはさておき。
財布の中には、身分を偽るための無数のIDカード、豊富な現金、高価なジュエリーの数々。
さあ、どうする?
警察は刻一刻と屋上に迫っている。
この際、自分たち一人一人の素性は関係ない。
要は、警察に見つかったとき無実に見えればいいのだ。
考えることは皆同じ。
ウォレットの中を引っ掻き回して、無実に見えるIDカードを手に入れよう。
そうだ、できればお金も欲しい。いやしかし、あまり多く持っていても怪しまれてしまう。
――果たしてあなたは、充分な金を握りつつ、法の目を掻い潜ることができるのだろうか。

【ゲーム概要】
さてさて、お話がわかったところで、ゲームの内容を確認しましょう。
目的は、1ゲーム3ラウンドをプレイする間に、なるべく多くの勝利点を獲得すること。
そのためには、各ラウンドの終了時に〈無罪〉かつ「最も裕福」であることが必要です。

〈無罪〉とは。
・〈IDカード〉を1枚だけ持っている。(例外カードもアリ)
・所持金の合計が「500CU(=額面数字)」以内である。
・手持ち通貨の種類が2種類以内である。
(このゲームには、ドル、リラ、ポンドなど、複数種の通貨が存在します)

この条件を満たした状態で、ラウンド終了時のチェックを終えれば〈無罪〉。
めでたく〈勝利点トークン〉を得られます。
さらに〈無罪〉だったプレイヤーの中で「最も裕福」な人は、より多く〈勝利点トークン〉をGET。
具体的な個数はプレイ人数ごとに決まっています(マニュアル参照)。
今回は4人プレイだったので、〈無罪〉で1個、「最も裕福」で、さらに2個GETでした。
さて〈無罪〉に対して一方。
チェック時に、上記の条件を1つでも犯していたら〈有罪〉。手持ちの〈勝利点トークン〉を1つ失います。
もし1個も持っていない場合は、罰則なし。お咎めなしとは……アメイジング!

ちなみにジュエリーは、価値分が所持金合計に加算されるものの、通貨の種類には数えません。
その点、3つ目の条件に引っかかる危険性がないので、ちょっと便利な存在です。
――とまあ、ゲームの大枠はだいたいこんな感じ。
では、ここから各コンポーネントを確認しつつ、ゲームの準備をしていきましょう。

【コンポーネント&セットアップ】
まずは卓上準備。6枚の〈砂時計カード〉を中央に並べます。
次に、黄色い〈勝利点トークン〉37個を、全部裏面(青色面)にして、脇に置いておきます。

白い〈セント硬貨〉7枚は、プレイ人数分だけランダムに取り、同様に伏せて置きます。
これは、ラウンド開始時に1人1つずつ取ってオープン。
金額が一番小さい人がそのラウンドのスタートプレイヤーになる、という具合です。
なお、このとき引いた〈セント硬貨〉も、所持金に計算されるので注意。
例えば、「1セント」を引いた状態で手札の〈紙幣カード〉で「500CU」揃えてしまうと。
「1セント」=「0.01CU」なので、合計「500.01CU」で、バーストしちゃうんです!
……ふっ、1セントを笑う者は1セントに泣くのさ。

続いては、様々な効果を持つ〈特殊カード〉15枚。
シャッフルして、2枚ずつ各プレイヤーに配ります。
残った分はこのラウンド中は使わないので、脇に避けておきましょう。
ちなみに、配られた自分の〈特殊カード〉の内容は、いつでも秘密裏に確認してOKです。
次に〈追加のIDカード〉。
オモテに赤いラインが入った〈IDカード〉5枚を、ウォレット内の「カード入れ部分」に収めます。
残るは、IDや紙幣やジュエリーなどの〈メインカード〉。
シャッフルして、5枚ずつ各プレイヤーに配ります。これが手札ですね。
余った〈メインカード〉は山札として、ウォレット内の「札入れ部分」に収めます。
これでセットアップは完了。
〈セント硬貨〉でスタートプレイヤーを決めたら、いざゲームを始めましょう。
……The game is afoot!!

【ゲームの流れ】
手番プレイヤーが行えるアクションは、以下の4つ。

●ウォレットから〈メインカード〉1枚を見ないで取り、自分の手札に加える。……要はドローですね。

●自分の手札から〈メインカード〉1枚を取り、ウォレットに入れる。……「無罪条件」を満たすための手札調整ね。
(入れる位置は山札のどこでもOK)

●〈IDカード〉1枚を購入する。
手札から「300CU以上」を卓上に出し(支払い)、ウォレットから任意の〈追加のIDカード〉1枚をGET。
……支払いはリスキーだけど、欲しいIDカードを確実に得られるので〈無罪〉が大きく近づくはず。

●卓上の〈砂時計カード〉1枚を裏返す。……これはつまり、決着を早めるってこと。
1ラウンドは、〈砂時計カード〉6枚が全て裏返った瞬間に終了。チェックに移行します。
なので、自分の手札が万全の状態になったら、バシバシ砂時計を裏返して、他プレイヤーをガンガン煽りましょう。
ちなみに〈砂時計カード〉は、プレイヤー全員が1手番ずつプレイし終えたところで、自動的に1枚裏返ります。
つまり、遅くとも6ターンで1ラウンド終了ってことね。

プレイの基本は以上。ポーカー感覚の簡単ルールですね。
しかし、それだけでは終わりません。
勝負の鍵を握るのは〈特殊カード〉の存在です。
……はい、ここテストに出るぞ~。
〈特殊カード〉は発動タイミング、効果、ともにカードに記載されています。
どんなカードがあるのかというと。

・資金再配分(自分の手番開始時)
使用者を含む全プレイヤーは、紙幣かジュエリーを手札から1枚卓上に出す。
使用者は、出たカードから1枚を手札に加える。その後、残りをシャッフルして、各プレイヤーに1枚ずつ配る。
……状況に応じて持ち金の増減が狙えるわけだね。

・ATM(ラウンド終了時)
次のどちらかのアクションを実行する。
A)「ATMカード」に紙幣を何枚でも重ねて置く(置いた分は以降、自分の裕福さにも罪判定にも影響しない)。
B)ウォレットから紙幣1枚が出るまで、カードを1枚ずつ引いていく。出たら、その1枚を手札に加える。
……「A」は多すぎる所持金の処理、「B」は足りない所持金の補填、という効果だね。

他にも、ラウンド終了時に一度アクションを行える「延長時間」や、人の手札を1枚奪う「カードを奪う」など。
どれを得られるかは準備時の配布によってランダムですが、多様な効果のカードがあり、戦術が広がります。
事前に手持ちの〈特殊カード〉の効果を意識して動くようにしましょう。
例えば、「ATM」を持っていれば手札に「500」以上の所持金があっても気にしなくていい。
最後に「A」の効果で破棄できるので、金額で〈有罪〉になることはまずないでしょう。

もう一つ、勝負の鍵となるのは〈IDカード〉の効果。
例えば、写真の「クールガール」というIDの効果は「手持ち紙幣の種類が3種以上でも〈有罪〉にならない」。
ただし、その効果を使うためには手札に最低1枚ジュエリーがないといけません。
他にも、特定のアイテムと対応しているIDなんかもあります。
例えば「ジョン・スミス」。
このカードと「クレジットカード」というカードを持っていると、効果を使えます。
効果は「ラウンド終了時、紙幣を1枚引くまでウォレットからカードを引き続ける。出たらそれを手札に加える」。
「ATM」の「B」効果と同様ですね。
ただ前者と違い、「このクレジット効果で引いた紙幣で500CUをオーバーしても有罪にはならない」効果も。
……元々が500CU未満なら、〈無罪〉で550CUなんてことも可能。「最も裕福」を狙いやすいね。
他にも〈IDカード〉にはいろいろな効果のものがあるので、うまく活用しましょう。

【ラウンド終了&ゲーム終了】
手番を回していき〈砂時計カード〉6枚が全部裏面になったら、アクションは終了。
ここで、「ラウンド終了時」に使える〈特殊カード〉があれば、各自発動します。
全員がそれを終えたら、次は「警察官の処理」を行いましょう。
どういうことかというと。

プレイヤーのうち、カード「警察官」と「警察バッジ」を持ち、且つ無罪条件を満たしている人は名乗り出ます。
その人は、自分以外のプレイヤー1人を指名。
相手がこの後の「チェック処理」で〈有罪〉なら、相手の紙幣とジュエリーを全て奪えます。
(この分の加算によって〈有罪〉になることはない)
もし名乗り出る人が誰もいなければ、そのまま次の「チェック処理」に移行します。

「チェック処理」は、全員手札をオープンして〈有罪〉か〈無罪〉かを確定させます。……裕福さも比べようね。
結果に応じた〈勝利点トークン〉の獲得と紛失を行い、これで1ラウンド終了。
手持ちの〈勝利点トークン〉以外を全部初期状態にセットしなおして、次のラウンドに移りましょう。
……ちなみに〈勝利点トークン〉には「1~3」があり、どれを引けるかは運次第。

3ラウンド目の〈勝利点トークン〉獲得と紛失が済んだら、ゲームは終了です。
合計点が最も高い人が優勝。
見事に警察の目を掻い潜り、且つ潤沢な資金も得られた勝利者というわけですね。
ちなみに同点のときは、トークンの数が多い方がWinner(キランッ☆)

【まとめ】
注目すべきは、なんといってもウォレットというコンポーネントです。
手番のたびに財布をガサゴソするのは新しいプレイ感覚。
コソッと手元を隠してササッとカードを引くと、まるでスリにでもなったよう。
……いや、マフィアなんだけどね。

配布カードによって有利不利が大きく左右されるのですが、これがどうして、意外と不公平感がありません。
……そこが『ウォレット』の……いーいーとーこー!
どの〈特殊カード〉や〈IDカード〉の効果でも、それぞれに戦いようがあるんですよね。
不利な手札でも、充分に追い上げが可能です。
誰かの行動で「そんなこともできるのか!」と驚かされることがたびたびありました。
短時間でサクッとプレイできて、盛り上がりもバッチリ。
ニヤリと企みつつ、ワイワイ楽しく遊べます。

皆さんも『ウォレット』で一度、人の財布をまさぐる背徳感を味わってみては?(笑)
――といったところで、今回はここまで。
以上、財布の中にはポイントカードと診察券がいっぱい、新井淳平がお送りしました。ではではまた~。

【ライター紹介】
新井 淳平(あらい じゅんぺい)
「小説家」兼「フリーライター」。
ゲームシナリオのライティングにも携わる。
ボードゲームのプレイスタイルは、出遅れ追い上げ型。
ダイス運は、最悪だけどドラマティック。
【著書】
『シンデレラゲーム』(オリジナル小説・映画化)
『猫侍 久太郎、江戸へ帰る』(ノベライズ小説)
『猫侍 玉之丞、争奪戦』(ノベライズ小説)