ボードゲームレビュー第221回「ペーパーテイルズ」

「ペーパーテイルズ」
作者:上杉真人
メーカー:Engames
プレイ人数:2~5人
対象年齢:12才以上
プレイ時間:30分

 


 

みなさんおなじみまして。もしくは、はじめまして。
作家でフリーライターの、新井淳平です。
担当23回目となる今回のレビュー作品は、こちら。

『ペーパーテイルズ』。
無数のイラストでコラージュされた王様の横顔シルエット。スタイリッシュなパッケージですねぇ。
マット加工の施された白地部分の、サラサラ手触りも好感です。
タイトルは、直訳すると「紙の物語」。
その意味はキャッチフレーズを見ると、一目瞭然。いわく――

――時は来た。今こそこの書物を紐解き、神話の時代を再び甦らせるのだ。

つまり、書物に記された遥か昔の物語、ということ。
剣や魔物の登場するファンタジー世界を舞台とした、ドラフト系のゲームです。
実はこれ、ゲームマーケット2011に出品され好評を博したゲーム『ヴォーパルス』のリメイク。
基本ルールは変わらず、カードがより見やすく、イラストもよりポップな感じに進化しています。

【世界観&ゲーム概要】
プレイヤーは一国の王となり、長きにわたる歴史を通じて自国の隆盛を目指します。
雇用を行い、戦陣に配置、隣国と戦争。収入を得て施設を建築。そして、時が流れる。
そう、この「時が流れる」=「経年」というシステムこそが、このゲームの肝なんです。
各ユニットは次々に年を取って死んでいき、嫌が応にも入れ替わっていく。
どんなに強い存在も寄る年波には敵わない、時の流れには逆らえない、ということですね。
まさに、栄枯盛衰。盛者必衰。
……俺の死を悲しむ暇があるなら、一歩でも前へ行け。決して振り向くな。

概要を聞くと難しく感じるかもしれませんが、ルールは意外と簡単です。
ゲームは1ラウンド6フェイズ構成で、4ラウンドの短期決戦。
『デモンワーカー』などと同じで、このシャープさがいいんですよねぇ。
序盤から能率的に動かないと「あ~、あと1ラウンドあれば~っ!」ってなことに。
……あなたの時間は限られている。-byジョブズさん。

【コンポーネント&セットアップ】
まず〈勝利点ボード〉を卓上中央に広げます。
そしてボードの真ん中「1」の上に〈ラウンドマーカー〉(水色円柱)をセット。
プレイヤーカラーを決めて、各色の〈勝利点マーカー〉をボード上の「00」に設置。
同色の「早見表」を各自1枚ずつ持ちます。

〈経年カウンター〉(写真左)と〈金貨カウンター〉「1」「5」をそれぞれまとめてストックに。
〈金貨〉は、各自「3」ずつ持った状態でスタート。
ちなみに、ゲームは全員同時進行で進むため、スタートプレイヤーの概念は存在しません。

次に、5種類の〈建物カード〉を各自5枚1セットずつ持ちます。
これは、ゲーム中にコストを支払って建設することで、施設固有の効果を使えるようになる、というもの。
また、ゲーム終了時に〈勝利点〉にもなるので、率先して建設していきましょう。
ちなみにオモテ面が「レベル1」、裏面が「レベル2」となっております。……詳細はのちほど。

最後に、〈ユニットカード〉(81枚)をシャッフルして山札にします。
なお、カードの見方は次の通り。
左上の数字が「雇用コスト」、その横が「カード名」。
右上のアイコンは、同種のカードが何枚存在するかを表しています。
中央下部の盾マークの数字は「戦闘力」。最下部は「収入資源」や「特殊能力」です。
……上記写真の「鉱夫」なら「コスト:1」「戦闘力:2」「収入資源:鉱石1」だねっ☆

こちらの「指揮官」は「コスト:2」「戦闘力:4」。
「能力」は「発動タイミング=③戦争フェイズ」で「戦争で勝利するたび〈1勝利点〉」となります。
ちなみに、資源を表すコマはこのゲームには存在しません。
雇用によって自分の場に出ている〈ユニットカード〉の「収入資源」=「所有資源」となります。

【ゲームの流れ】
①雇用フェイズ
山札から各自5枚ずつカードを引きます。そして、カードドラフト。
欲しい1枚を手札にして、残りの4枚を隣りのプレイヤーに回します。
次に、逆隣りから回ってきた4枚のうち1枚をまた選んで手札に。
回すカードが尽きるまでこの流れを繰り返して、各自の手札を5枚ずつにします。
ちなみに、回す方向は〈勝利点ボード〉「ラウンド欄」の矢印の通り。
ラウンド1は左、2は右、3はまた左で、4でまた右――と、毎回異なる形。
※2ラウンド目以降はフェイズの最後に「キープカード」を手札に加えます。……詳しくは次項で。

②配置フェイズ
〈雇用フェイズ〉で得た手札のうち、使用するカードを自分の場に裏面でセットします。
場に出せるのは、「前衛2枚」+「後衛2枚」=計4枚。
もちろん、全部の雇用コストが支払えるなら、の話ですが。
なお、「レベル2」の〈建物〉が自分の場に1つでも建っていれば「前衛3枚」まで置けます。
つまり、合計5枚まで場に出せる。――これ、めっちゃ有利です。
……施設効果だけでなく、こんなところにも建築の重要性があるんですね。
ちなみに「前衛」は次のフェイズで戦うことになるので、「戦闘力」の高いカードを揃えましょう。
※2ラウンド目以降はフェイズ冒頭に、場のカードを捨て札にしたり移動させたり、自由にできます。

さて、場に出すカードがセット出来たら、次は「キープカード」。
手札のうち1枚だけ、「早見表」の上に伏せて置くことで、次のラウンドに持ち越せます。
使いたいけどコストが払えないカードなんかをキープしておきましょう。
なお、セットもキープもしなかった残りの手札は、全て捨て札になります。

全員が、セット、キープ、捨て札、を終えたら、場にセットしたカードを各自オープン。
そしてコストを支払います。
また、もしこのフェイズに発動する「能力」や「建物効果」があれば、ここで解決します。


③戦争フェイズ
――いざ、戦いです。
自分の場の「前衛」の「戦闘力」の合計値を出します。
なお、このフェイズに発動する「能力」で「戦闘力」に関わるものは、ここで解決。
「〇〇なら戦闘力+?」といったやつですね。
それらも含めた合計値が出たら、左右それぞれのプレイヤーの数値と比較します。
自分の数値が上回っているか同数なら勝利、下回っていれば敗北、となります。
勝利したら、1戦につき3勝利点GET。
つまり、両隣りに勝てたら、この1ラウンドで6点GETというわけですね。
逆に、両方に負けたら0点。……これは厳しい。
戦争結果の分〈ボード〉の〈勝利点マーカー〉を動かして、さらに「建物効果」の点なども反映。
ちなみに――安心してください。
戦争に負けても〈ユニットカード〉は捨て札になりません。……アメイジング!
……別れは〈経年フェイズ〉にやってくるのです。

④収入フェイズ
まず、全プレイヤーは基本収入の「金貨2」を得ます。
その後、このフェイズで発動する「能力」「建物効果」を解決します。
例えば〈神殿〉が建っていれば、さらに「金貨2」GET、という具合。
このゲーム、お金を稼ぐのがけっこう難しいので、〈神殿〉建設は早めがオススメです。
……って、かくいう私は最後の最後に建設したのですが(汗)

⑤建築フェイズ
このフェイズでできる行動は、1ラウンドにつき1回のみ、です。
・建設=手持ちの〈建物カード〉を自分の場に出す。
・アップグレード=すでに自分の場に建ててある〈建物〉の「レベル1」を「レベル2」にする。
もちろん、どちらもコストが支払えないと実行できません。
どちらもできない場合は、このフェイズ発動の「能力」「効果」を解決して終了、となります。
なお、コストさえ支払えれば、いきなり「レベル2」の状態で建設することも可能です。

写真の「兵舎レベル2」なら、「木材1」+「木材1&食料1」あれば、いきなり建設OK。
ただし、場合によってはさらに〈土地コスト〉というものが掛かってきます。
〈土地コスト〉とは――
「すでに建設されている〈建物〉1つにつき金貨2」というもの。
つまり例えば、レベルに関わらず〈神殿〉と〈酒場〉がすでに自分の場にあったとすると――
先ほどの「兵舎レベル2」のコストは「木材1」+「木材1&食料1」+「金貨2」+「金貨2」。
これは、容易には建てられません(泣)
……プレイした体感では、建設できる〈建物〉は2個が現実的。多くても3個が限度でしょう。
……そもそも、4ラウンドしかないわけですしね。
というわけで、何を建てるかは慎重に決めましょう。

⑥経年フェイズ
さあ、お待たせしました。ここがこのゲームの肝。
場にある〈ユニットカード〉全ての上に、1個ずつ〈経年カウンター〉を乗せます。
なお、このときすでに〈経年カウンター〉が乗っていた〈ユニット〉は、捨て札となります。
つまり、老衰でお亡くなりになる、ということですね。
……祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
死は万物に等しく訪れるのですよ。
――って、実は「死なないカード」や「延命措置能力」などもあったりするのですが。
そこはプレイしてみてのお楽しみです☆

捨て札処理と〈経年カウンター〉の設置が全て済んだら、このフェイズは終了。
そして、ラウンドも終了です。
〈ボード〉の〈ラウンドマーカー〉を進めて、また〈雇用フェイズ〉から次のラウンドを始めましょう。

【ゲームの終了】
4ラウンド目の〈経年フェイズ〉が終わったら、ゲームは終了。得点計算に入ります。
ここまでに得た〈勝利点ボード〉の〈勝利点〉に、〈ユニット〉や〈建物〉から入る得点を加算。
結果、最も高得点だったプレイヤーが優勝。この物語の覇者です。
……You are king of kings !
なお、もし同点だった場合は、手持ちの〈金貨〉が多い方が勝ち。
それも同じ場合は、仲良く勝利を分かち合いましょう。……ポジピースっ☆

【まとめ】
明解なルールですが、いろいろな効果のカードがあって、奥深く楽しいです。
例えば、写真の「クラーケン」。
「戦闘力:9」と強力ですが、出現と同時に「全ユニットを老いさせてしまう」リスクを伴った諸刃の剣。
でも、その分〈経年フェイズ〉で〈勝利点〉を得られたりもして。
使い方次第で会心の活躍をするカードです。

他にも、この「サラマンダー」。「〈経年カウンター〉が2個乗らないと死なない」長寿トカゲです。
さらに「老いるほど戦闘力が上がる」というツワモノ。
「クラーケン」や「時計職人」(写真右)とのコンボで、ボス級の強さに!

ちなみに、4人でプレイした今回、私は嬉しいことに優勝できました。
1ラウンド目は、資源を豊富に獲得する布陣で、即レベル2「建物」を建設。
これで2ラウンド目からは前衛が3人になり、優位に。
そして、勝利に導いてくれたのは何より、2ラウンド目に出したこの1枚――「リヴァイアサン」。
現れたラウンドは心強い戦力となり、〈経年カウンター〉が乗った次ラウンドでは「食料2」になる。
……幻獣だけど食べちゃうんだね(笑)
……ありがとう、美味しくいただきました。
豊富な「食糧」を「建物効果」や「能力」で収益に繋げ、3ラウンド目だけで「金貨15」GET。
最後の第4ラウンドでは、金に糸目をつけずに戦力を雇用し、いわば無双。
今回の私のプレイは、こんな勝利の方程式でした。

手札よって行動が左右される点は多少の運要素ではありますが、ドラフトで公平性も担保。
キープというシステムがあることで、カードの使いどころをコントロールでき、戦略の幅が広がります。
どのカードも「ハズレ」ということはなく、使い方次第で素晴らしい功績に繋がる。
効果的なタイミングを見定めたり、コンボを考えたり、プレイヤーの腕の見せどころはふんだんです。

また、序盤で劣勢に陥ったとしても、相手の〈ユニット〉は経年によって自動的に入れ替わっていく。
それはつまり、反撃のチャンスが必ずある、ということ。
逆に、例え優勢にあったとしても、最後まで気が抜けないのがこのゲームです。
短期決戦のタイトなプレイ感と、戦術バリエーションの豊富さ。
これはぜひ体感していただきたい一作です。
皆さんも『ペーパーテイルズ』で、「俺の屍を越えてゆけッ!」なんて叫んでみませんか?

――といったところで、今回はここまで。
以上、オジサンよりお兄さんと呼ばれ続けたい、新井淳平がお送りしました。ではではまた~。

【ライター紹介】
新井 淳平(あらい じゅんぺい)
「小説家」兼「フリーライター」。
ゲームシナリオのライティングにも携わる。
ボードゲームのプレイスタイルは、出遅れ追い上げ型。
ダイス運は、最悪だけどドラマティック。
【著書】
『シンデレラゲーム』(オリジナル小説・映画化)
『猫侍 久太郎、江戸へ帰る』(ノベライズ小説)
『猫侍 玉之丞、争奪戦』(ノベライズ小説)