ボードゲームレビュー第228回「ヒストリー・オブ・ザ・ワールド」

「ヒストリー・オブ・ザ・ワールド 新版」
作者:ゲイリー・ディッケン スティーヴ・ケンドール フィル・ケンドール
メーカー:アークライト
プレイ人数:3~6人
対象年齢:14才以上
プレイ時間:約2~3時間

 


 

どうも皆さんこんにちは。ライターの松風です。
さて、ボードゲームには歴史を題材にしたゲームが多く、その分傑作と呼ばれるタイトルも多く存在します。
今回ご紹介するのもそうした名作の一つと言ってよいでしょう。
というわけで今回のタイトルは『ヒストリー・オブ・ザ・ワールド 新版』です。

名前に新版とついている通り、過去に何度か発売された事があり、そのたびにルールがブラッシュアップされてきた作品のようです。
マニュアルに書かれたデザイナーズノートによれば、今回で第6版ということになるのでしょうか。
それだけ長く愛されてきた作品でもある、ということですね。

箱を開けると結構な量のコンポーネントの数……これは紛うことなきヘビーゲームの予感!
まぁ、歴史を題材にしたゲームって往々にして「重たい」ゲームが多いですよねー。ルールの分量も物理的な重量も。
筆者はコマやトークン類がごっそり入っていると割とワクワクしてしまう方なんですが、皆さんはどうでしょう?

ではこのゲーム、どんな内容なのかをざっくりと申しますと、5つに区切られた時代ごとに自分の国の領土を拡げ、都市を建設したり記念碑を建てたりして繁栄を築いていくゲームになります。
ただ、例えば『シヴィライゼーション』のように一つの国を選んでイチから発展させていくのではなく、時代ごとに違う国を担当するのがポイントです。
プレイ内容もほぼ対外戦争に絞られていますので、文化の発展だとか内政パートとかの面倒臭さは一切ありません!

それではセットアップから見ていきましょう。
まず各プレイヤーは担当する色を決めて、その色の『軍隊コマ』と『得点マーカー』を受け取ります。

世界地図が描かれた『ゲームボード』を卓の中央に広げ、適当な方法で『得点マーカー』を置く順番を決めます。
人数次第ですが、最低1点から最高6点まで最初から点数が入った状態でスタートするわけですね。
じゃあ点数高いほうが最初から有利じゃん、と思われるでしょうが、コレがそうとも言い切れないのがルールの妙というヤツです。

次に『帝国カード』と『イベントカード』を時代ごとに分けてシャッフルし、それぞれ5つの山を作ります。
つまり合計で10個の山が出来るわけですね。
この時、各山の枚数がプレイヤー人数と同じになるようにカードを(内容を見ないようにして)抜いてゲームから除外します。

同様に、『エリアタイル』を各時代ごとに分け、対応する時代の『帝国カード』の近くに置いておきます。

残ったコンポーネントは共通の在庫として適当な場所にまとめておきましょう。
セットアップは実はこれだけ。
他のヘビーゲームと比べてみても、拍子抜けするほど簡単なんじゃないでしょうか。

さて、ゲームに慣れた方はお気づきでしょうがこのゲーム、5つの時代に分かれているという事は……そう、5ラウンドでゲームが終了します。
各プレイヤーは毎ラウンド中に1回だけ手番を行い、勝利点を獲得していきます。
すべてのラウンドをプレイして最終的に最も多くの勝利点を得たプレイヤーの勝ち。
分かりやすいですね。

各時代の開始時には、いくつかの準備が必要になります。
まず『エリアタイル』を更新します。
『エリアタイル』は、そこで獲得できる勝利点を示したもので、同じエリアでも時代によって得られる点数は変わってきます。
1ラウンド目はローマ数字で『Ⅰ』と書かれたタイルを『ゲームボード』上の対応するエリアに並べましょう。
この時、数字が3つ書かれた方を表にして置いてください。
また、『エリアタイル』は必ずしも全てのエリアに配置されるわけではありません。
歴史上まだ文明が発生していない地域にはタイルは置かれないわけです。
中には複数の時代に共通して置かれるタイルも存在します。

ついでに『エリアタイル』の読み方も説明しておきましょう。
各タイルには3つの数字が書かれています。
左側の数字は『駐留』……「そのエリアに軍隊コマを1つでも置いていたら」もらえる点数です。
中央の数字は『優位』……「そのエリアに2つ以上の軍隊コマを置いていて、なおかつ自軍のコマが最も多い」場合にもらえます。
右側の数字は『覇権』……「そのエリアに3つ以上の軍隊コマを置いていて、なおかつ他国の軍隊コマが無い」場合にもらえる点数となっています。
複数の条件を満たしている場合、最も大きい点数だけを獲得できます。
つまり、相手の『覇権』を阻止するために1個でも他所のエリアにコマをばらまく、というのも一つの戦術になり得るわけですヨ!

次に時代ごとの『帝国カード』と『イベントカード』を配ります。
この時、最も勝利点が多いプレイヤーが『イベントカード』を、最も勝利点が低いプレイヤーが『帝国カード』をまず受け取ります。
受け取ったカードの中から各プレイヤーが欲しいカードを1枚ずつ獲得し、次に勝利点が高い(低い)プレイヤーへとカードを渡していきます。
最初に『得点マーカー』の多いプレイヤーが必ずしも有利ではないと書いたのは、このドラフト形式のせいだったんですねー。
特に、担当する国を決める『帝国カード』は点数の低いプレイヤーから選ぶことが出来るというのがポイントでしょう。
カードを回し終わったら、手元には『帝国カード』と『イベントカード』がそれぞれ1枚ある状態になります。

では、ここからが本当のゲームスタートです!
最も勝利点を多く獲得しているプレイヤーが進行役となり、『帝国カード』の裏面に書かれた国の名前を順番に読み上げていきます。
自分の担当する帝国名が呼ばれたら、『帝国カード』をオープンにして手番開始となります。

プレイヤーの手番は7つのメインステップに区切られています。
結構多いな、と思われるかもしれませんが、いくつかは自動的に進行するものですので、頭を悩ませるステップはそう多くありません。

まずひとつ目が『接収ステップ』。
デカい投石機を模した『カタパルトコマ』を受け取ります。
これは戦争を有利に進める事ができる手番プレイヤーの特権みたいなものです。

次に来るのが『王国ステップ』。
手番プレイヤーが『イベントカード』のうち、『王国カード』と呼ばれるカードを選んでいたら発生するステップです。
もし手札に『王国カード』があればカードをオープンし、このステップを実行します。
『王国カード』は「帝国の末端」であり、『帝国カード』と同様のステップ進行を行うため、詳しくは後述します。

3つ目が『建国ステップ』。
自分の『帝国カード』の右上に大きく書かれた数字と同じ数の『軍隊コマ』を、在庫から『帝国カード』上に移します。

次に、カード上の『軍隊コマ』1個を、カードに示されているエリアの『開始区域』に配置します。
その区域にすでに何らかのコマが置かれていたら、全て取り除いて在庫に戻してください。
そして、『帝国カード』の右下に王冠のついた盾のアイコンがあれば『首都コマ』を、盾アイコンだけなら『都市コマ』をその区域に配置します。
(『都市コマ』を置く盾アイコンは『王国カード』にしかありません)

カードには他にも何か特殊効果が書かれている場合もあります。
例えば、ラクダの絵とエリアが書かれていたら『隊商マーカー』をそのエリアに、帆船の絵が描かれていたら『艦隊マーカー』をそのエリアに配置します。
これらのマーカーが置かれたエリアは、その手番中は通行可能とみなされるようになります。

4つ目が『侵攻ステップ』。
いよいよこのゲームの本番と言っても過言ではないでしょう。
プレイヤーは『帝国カード』上に置かれた『軍隊コマ』を様々な区域へと配置し、支配領域を拡大していきます。
自分の『軍隊コマ』がある区域から、隣接する区域へのみ侵攻することが可能です。
ただし、後述しますが『休息中』(寝ている状態)の『軍隊コマ』はカウントしません。
必ず『活動中』(立った状態)の『軍隊コマ』を基準にしましょう。

まずプレイヤーは『軍隊コマ』1個を取り、すでにある自軍の『軍隊コマ』のある区域に隣接する区域に配置していきます。
この時、コマを置いた先の区域の状態によって、3パターンの処理を行います。

1:『軍隊コマ』が1つも置かれていない場合……何も起こらずそのままコマを配置できます。
2:自軍のコマが配置されている場合……前の時代に配置した『休息中』の『軍隊コマ』があったら、それを取り除いて『活動中』のコマを置き直します。
3:他のプレイヤーのコマが配置されている場合……戦争開始です! 次の『戦闘ステップ』に進みます。

「一つの区域に置ける『軍隊コマ』は一つのみ」という非情なルールにより、共存共栄などという甘い言葉はこのゲームにはありません。
『戦闘ステップ』は新たな区域に侵攻するたびに発生しますので、この『侵攻ステップ』中に何度も発生する可能性があります。
『帝国カード』上のコマがなくなるか、手番プレイヤーが終了を宣言するとこのステップは終了です。

ではここでサブステップである『戦闘ステップ』を説明しましょう。
このステップの勝敗いかんによって、対象の区域に置かれる『軍隊コマ』が決まります。
まず侵攻側のプレイヤーがダイスを2個、防御側のプレイヤーがダイス1個を振り合います。
侵攻側の振った出目の大きい方と防御側の出目を比べて、大きい方がこの戦争の勝者です。

※侵攻側が勝った場合……防御側の『軍隊コマ』を取り除き、自軍のコマを配置します。
※侵攻側が負けた場合……『退却』してコマを在庫に戻すか、『包囲』を開始するか決定します。
※出目が同じだった場合……『相討ち』になり、双方のコマを在庫に戻します。

なんて分かりやすい戦闘ルールなんだ……! と感動すら覚えるシンプルさです。
この時、条件によっては防御側に『防衛効果』が付く場合があります。
①地形……対象になる区域が山、もしくは森だった場合、防御側ダイスの出目に+1します。
②海軍……侵攻側が『艦隊マーカー』を使って進行してきた場合、防御側はダイスを1回振り直せます。
③砦……対象の区域に砦があった場合、防御側の振るダイスは2個になります。

さて、侵攻側が敗北した時の『包囲』とはなんぞや、とお思いでしょう。
これは侵攻側が負けても再チャレンジできるというルールなのです。
『包囲』を選ぶと、侵攻側は増援を呼んで追加の戦闘を仕掛けることができます。
ここでいよいよあの『カタパルトコマ』の出番です。

増援として追加される『軍隊コマ』は、『カタパルトコマ』についている『攻城トラック』の「+1」のマスに配置されます。
それから再度ダイスの振り合いになるわけですが、今回侵攻側はその出目に「+1」できるのです!
ここでさらに負けても「+2」、「+3」と増援を増やしていくことが可能です。
……まぁ、『帝国カード』上にコマが残っている限り何度でもチャレンジできるワケですね。
ただし出目への修正値は最大「+3」です。
戦闘が終了すれば、『カタパルトコマ』上の『軍隊コマ』は全て在庫に戻されます。
一応、一度『退却』を選んだ区域に再侵攻することも可能ですが、『軍隊コマ』の数的にはちょっともったいないかもしれませんね。

さて、戦闘が起こった結果、侵攻側が勝利または相討ちになった場合、その区域にあった建物コマはダメージを受けて『縮小』してしまいます。
『首都コマ』はひっくり返して『都市コマ』に、『都市コマ』は破壊されて共通在庫に、『記念碑コマ』も同様に破壊されてしまうのです。
自軍の支配区域にある『首都』は2点、『都市』と『記念碑』は1点の勝利点をもたらすのですが、これによって得られる勝利点が減ってしまうというわけなのです。
しかしながら、『帝国カード』の中には、最初に『首都』を置く代わりに『かがり火』のアイコンが描かれた『略奪帝国』というカードも存在します。
この『略奪帝国』は、縮小あるいは破壊した建物コマ1個につき1点の勝利点を得ることができるのです!
こういった『略奪帝国』はバンバン戦争を吹っ掛けていったほうがオトクになりますね。

次に5つ目の『建設ステップ』に入ります。
このステップでは、自分の帝国が支配している区域に『記念碑コマ』を建設できます。
まず『活動中』の『軍隊コマ』が置かれた区域を見て、描かれている『資源アイコン』(ツルハシとスコップのマーク)の数を合計します。
『資源アイコン』2個につき『記念碑』を1個建てることができます。
前述の通り、『記念碑』は1個1勝利点になりますので、なるべく『資源アイコン』の描かれた区域を狙って『軍隊コマ』を進めていきましょう。

そして6つ目の『休息ステップ』。
この手番に使用した『軍隊コマ』をすべて寝かせて『休息状態』にします。
そして手番中に配置した『隊商/艦隊マーカー』を全て取り除き、プレイした『イベントカード』と『帝国カード』も片付けます。

最後にあるのが『得点ステップ』です。
『ゲームボード』上にある自分の全ての『軍隊コマ』を見て、エリア得点や建設得点を得ます。
獲得した勝利点の分、トラック上の『得点マーカー』を動かしましょう。
また、割と重要なルールなんですが、トラック上で他のプレイヤーと同点になってしまった場合、手番プレイヤーが選んで±1点できるのです。
得点順位は次のドラフトの順番に関わってきますので、どちらを優先するかはご自由に、といったところでしょうか。

全員の手番が終了したらラウンドは終了、次の時代に移りましょう。
5番目の時代をプレイし終えたらゲームは終了です。

ヘビーゲームにしてはルールはシンプルと言ってもいい部類なのですが、実際にプレイしてみると、やはりメインとも言える『侵攻ステップ』が長くなってしまいます。
ですが、1マスずつ版図が拡がっていく様は、なかなかダイナミックな歴史のうねりを感じさせてくれる魅力があります。
時代が進んでいけば、世界各所に配置された自軍のコマが広大な版図となって見えてくるでしょう。
『イベントカード』で『王国カード』を選んだ場合、実質2回『侵攻ステップ』を行えるわけですから、一気に支配区域を広げたい場合にはもってこいです。
しかしその他の『イベントカード』は割とゲームの流れをひっくり返しかねないくらい強力な効果を発揮する場合もありますので、ドラフト時にはものすごく悩むんですよねー。
ちなみに『帝国カード』と違い、手番中に使用しなかった『イベントカード』は次のラウンドに持ち越せますので、使うタイミングも考えていきたいところ。

時代が進めば近海だけでなく外洋へも進出できるようになります。
その頃には、いい加減ユーラシア大陸だけでは勢力が行き詰まりつつあるタイミングになっているはずです。
終盤に出てくる帝国はより多くの『軍隊コマ』を持てるようになりますので、激烈な戦争に明け暮れるか、新天地を求めて旅立つかの選択も迫られるでしょう。

なんにせよ、ラウンドごとに世界地図が大きく書き換わるのがこのゲームの大きな特徴ですね。
歴史ゲームにありがちな外交交渉などがバッサリ省かれた分、侵攻に大きく焦点が当たっているわけですが、土地を獲って獲られて勢力図が目まぐるしく変わっていくのが視覚的にも楽しいゲームになっています。
プレイヤー間の直接攻撃が苦手、とおっしゃる向きもあると思いますが、戦闘に重点を置いているがゆえに、あまり遺恨を引きずらないデザインになっているように感じました。
例えどこかのエリアが全滅しても、次のラウンドには全く別のエリアで勢力を拡げられるので、カード次第では全然取り返しがつくんですね。
そういった意味では、気軽にバンバン戦争して気軽に滅びましょう! と言える良いゲームです。
実際、今回のプレイでも時代Ⅲの頃に一度勢力が絶滅しかけたプレイヤーがいましたが、終盤はかなり巻き返していました。
シンプルなルールであるがゆえのいい意味での大雑把さが、ある種のダイナミズムを生み出しているような気がします。
あなたも、このゲームで激動の世界史を体験してみませんか?

といったところで、今回のゲームはいかがだったでしょうか?
それではまた次の機会にお会いしましょう。

 

ライター紹介

松風志郎(まつかぜ しろう)
ゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」所属。
ゲームシナリオライターだけでなくゲームのシステムデザインなども手がける。
アナログゲームとの関わりは古く、幅広いジャンルをたしなむ。
世界観にとっぷりと入り込めるゲームが好き。

代表作
歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「萌え萌え2次大戦(略)」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「出撃!乙女達の戦場」シリーズ
恋愛アドベンチャーゲーム「はち恋」
その他多数。