ボードゲームレビュー第230回「コインブラ」

「コインブラ」
作者:フラミニア・ブラシーニ/ヴィルギニーオ・ジグリ
メーカー:ホビージャパン
プレイ人数:2~4人
対象年齢:14才以上
プレイ時間:約75~120分

 


 

はい毎度どうもこんにちは。ライターの松風です。
唐突ですが、皆さんは大航海時代はお好きですか?
歴史もののゲームは数多ありますが、ボードゲームの題材としてもやはりこの時代も外せない魅力がありますよね。
というわけで今回ご紹介しますのは『コインブラ』でございます。

なんだかほっこりするようなテイストのパッケージイラストは『アズール』と同じイラストレーター、クリス・クィリアムズ氏の作。
氏はこのゲームのアートワーク全般も担当しています。

そしてなんとこのゲーム、以前ご紹介した『ロレンツォ・イル・マニーフィコ』と同じ作者(の内の2人)の新作なのです!
あれもダイスのギミックが一味効いていて、何度も遊びたくなるいいゲームでしたが、さてさて今回はどんな感じに仕上がっているんでしょうか?

場所は大航海時代真っ最中のポルトガル。
中でも隆盛を極めたコインブラの街が今回の舞台なのです。
コインブラといえば、ポルトガルの交通の要所で、ヨーロッパ最古の歴史を持つ大学があることでも知られています。

さぁ、それじゃさっそく自分の船に貨物を積んで、いざ交易の旅に船出しよう……と思ったでしょ? 思ったでしょ!?
はい、筆者も最初はそう思っていました。
でも実はこのゲーム、プレイヤーは別に航海に出ないんです残念!

代わりにプレイヤーが演じるのはこのコインブラの街に古くから住む有力者。
しかし、コインブラが栄えるにつれて、街の治安はちょっとばかり危うくなったりもしています。
そこであなたは伝統ある一族の長として、この街の影響力の強い人物──評議会議員・商人・聖職者・学者といった人々に護衛を提供しているのです。
なんせ賄賂でなびいてくれる人たちばかりではありませんからね!
というわけで、プレイヤーはあの手この手で街の名士たちの関心を買い、巡礼に人を送り出したり海洋貿易に投資したりと忙しい日々を送ることになります。

セットアップは多くのゲームと同じく所定の位置にタイル類やマーカーを置いていくだけですので、そう難しくもないでしょう。
特筆すべき点としては、初期の『人物カード』と『巡礼者コマ』のスタート位置を手番順の逆回りで選択していく部分でしょうか。
このゲームは手番順がゲーム中に変動するタイプですので、先手有利にならないようにという配慮でしょう。
最初に手番の逆順、つまり『手番トラック』の数字が大きいほうのプレイヤーから、『人物カード』を2枚取るか、『巡礼者コマ』のスタート位置を取るかを選択します。
全員がどちらか選んだら、今度は手番順に従ってもう一度、今度は先ほど選ばなかった方を取っていきます。
カタンドラフトとかロチェスタードラフトと呼ばれるやり方ですね。

『人物カード』は拡大再生産に必要な様々な効果を生み出しますし、『巡礼者コマ』がたどる巡礼のルートも結構重要です。
どちらをまず重視するかが、今回のプレイの方向性をある程度決定づけるでしょう。

さて、それではプレイの手順に行ってみましょうか。
このゲームは全部で4ラウンド行います。
各ラウンドはA~Fまでの6つのフェイズに分かれており、最後に次ラウンドの準備をして1ラウンドは終了します。

A:ダイスロール
ボード上の『手番トラック』の1にマーカーがあるスタートプレイヤーがダイスをすべて振ります。
なんだか普通のゲームに比べてあんまり見かけないダイスの色をしてますね……。

B:ダイスの選択と配置
カラフルなダイスの色と出目には両方ちゃんと意味があります。
スタートプレイヤーから順に、ダイスプールから1つダイスを選んで、出目は変えずに自分の『ダイスホルダー』にセットし、ボード上の『都市スペース』に配置します。
『都市スペース』では、『城』には『恩恵タイル』が、『都市上層部』から『都市下層部』までには『人物カード』が並びます。
これらをダイスでゲットしていくわけですね。

手番が進んでいくと、それぞれの『都市スペース』には各プレイヤーのダイスがずらりと並ぶことになります。
この時、一番上にある『城』は出目が低い方を、それ以外の『都市』は出目の高い方にカードやタイル獲得の優先権があります。
ちなみにダイスを置く際には、途中割り込みも発生します。
例えば、すでに『都市上層部』に6と4のダイスが置かれていたとしましょう。
もし自分の手番でピックアップしたダイスが5だった場合、そのダイスは6と4の間に割り込んで置く事ができるのです!
当然、『城』では逆にダイス目の低い順に優先権があるわけです。

全プレイヤーが手元にある3つの『ダイスホルダー』を使い切ればこのフェイズは終了です。
つまりピックアップできるダイスは3個までということになりますね。
『恩恵タイル』、あるいは『人物カード』はどちらも効果のおいしい物が多いので、自分の手筋に合ったものを優先していきましょう!

C:ダイスの回収
先ほどBフェイズで置いたダイスを自分の『プレイヤーボード』に回収しつつ、タイルやカードの購入を行うフェイズです。
ここでは『手番順トラック』に縛られることなく、『城』から『都市下層部』へと順に解決していきます。
『城』にある『恩恵タイル』を得るにはコストがかかりませんが、即時ボーナスを得たら手元に残らない使い切りの効果です。
かなり強力な効果ばかりなのですが、こればかり選んでいては『人物カード』が全然集まらず、それによる毎ラウンド効果やボーナスを得ることが出来ません。
そればかりか、ゲームボード右側にある『影響力トラック』の進み方も鈍ってしまいます。
『影響力トラック』は毎ラウンドでの収入の多寡に関わってきますし、最終的にはマジョリティボーナスも得られるたいへん重要な得点源です!
お城のご利用は計画的に!

3つある『都市スペース』ではコストを払って『人物カード』を購入します。
このゲームで通貨となるのは『コイン』と『護衛』の2種類の『資源』です。
どちらも『プレイヤーボード』上のトラックで管理されています。
どっちのコストを払うかは『人物カード』左上を参照してください。
『盾』のアイコンなら『護衛』を、『金貨』のアイコンなら『コイン』を使用します。

そして実は……いくら払うのか、は自分が置いたダイスの目と同じ数の『護衛』か『コイン』なのです!
つまり、さっきのBフェイズにおいては、欲しいカードと払えるコストまでを見越してダイスピックを行わなければならないのです。
優先的にゲットするには高い目をピックせざるを得ませんが、さりとて高い目を選び続けてもコストがジリ貧になるこのジレンマ!

ちなみに、『資源』が足りずに取れるカードがないとか、どのカードもいらないという場合は『困窮アクション』を選ぶことで『護衛』2と『コイン』2を得ることができます。
正直言ってショボい効果ですので、よっぽどじゃないと選びたくないアクションですね……。

D:新たな手番順の決定
さて、先ほど得た『恩恵タイル』や『人物カード』の上、または『手番順トラック』に『王冠』が描かれている場合があります。(いくつかの人物カードの上には『王冠トークン』というものが乗ります)
全員でこれの獲得数を数え、王冠の数が多いプレイヤーから『手番順トラック』を埋めていきます。
これが次のフェイズからの行動順になるわけですね。
スタートプレイヤーがダイスピックで有利なのは火を見るより明らかですので、これを狙うのも戦略です!

E:影響力収入の獲得
このフェイズでは、先ほど決まった行動順に従って、『影響力トラック』から収入を得ていきます。
ここで物を言うのが、先ほど回収したダイスの『色』です!!
よく見れば、『影響力トラック』の色とダイスの色は対応していますね。
そして自分のマーカーがトラックのどの位置にいるかによって、もらえる収入の額も変わってくるのです!
『人物カード』によるコネの力、ホント大事……。
そしてどのトラックから収入を得るか、ダイスピック時に決めておくのも大事。

なんかもうダイスの色と出目があらゆる事が結びついていてクラクラしてきそうですよね。
ちなみに1個だけ存在する「白いダイス」はオールマイティと言いますか、任意のトラックを選んで収入を得られます。

ここで一つ重要なのが紫色の『聖職者カード』の収入で得られる『巡礼者の移動』です。
ボード中央にある『巡礼者マップ』とそこに置かれた『修道院タイル』……なにやら新たな得点源の匂いがしますね……!

この収入を得たら、そこに書かれた数字分、自分の『巡礼者コマ』が移動します。
どこかの修道院にたどり着いたら、そのタイルに描かれたボーナスを得て、自分の『ディスク』を1枚置いていきます。
これはすでにボーナス受け取り済みの印であると同時に、後の布石にもなり得ます。

例えば、Ⅲと書かれた修道院の中には「自分のディスクが置かれた修道院1つごとに勝利点2点を得る」という効果があったりします。
こういう修道院には後半に訪れることが出来たら、ものすごい点数がドカッと入ってくるのです!
逆に、「これ以降あなたが修道院にディスクを置くたびに勝利点1点を得る」なんていう修道院もあります。
これは序盤に行きたい修道院ナンバーワンですね。
また、揃えるのが難しい『特許状ボーナス』(人物カードのセットボーナス)を補える『ワイルド特許状』が、なんと2つももらえる修道院なんかもあるのです!

つまり、『巡礼者コマ』が動けば動くほど様々な特典をゲット出来るというわけで、信心深いといい事だらけってワケですよ!
いろいろあって目移りする『影響力トラック』ですが、どれを伸ばすかは予め決めておいたほうが良いかもしれません。
最終的にはマジョリティボーナス(1位の人から順に高得点がもらえるアレ)も絡んできますからね!

F:航海への投資
このフェイズでは、ボード下部にある『航海カードスペース』に並んだ『航海カード』から1つを選び、その航海に投資することができます。
大航海時代要素、ここにあったよ!!

必要な『資源』の額がそこそこ大きいため、やるかどうかは考えどころですが、うまく行けば割と大きいリターンが得られます。
ラウンドに1回しか投資できず、スペースが6つあるということは、全部に投資することは出来ないわけですから、投資先も慎重に選びましょう。

これらを繰り返して、4ラウンド終了後に最終得点計算を行い、最も多く得点を上げたプレイヤーが勝利します。

ダイス一つに考えさせられる要素がギッチリ詰め込まれていて目眩がしそうなゲームですが、ゲーム進行そのものは素直と言いますか、やってみれば意外とスムーズに理解できるでしょう。
反面、勝ち筋が多いゲームですので、何をすれば有利なのかを見極めようとすると長考してしまい、ダウンタイムが多くなりがちではあります。
ですが、これほどゲームメカニクスを詰め込まれた上でキッチリまとまった作品もなかなかお目にかかれません。
この辺はさすが『ロレンツォ』を作ったデザイナーたちだと思わせてくれますね。
ですが、『ロレンツォ』とは全く違うダイスの使い方に驚きました。

勝ち筋が多いというのも、決して複雑だとかダウンタイムが長いといったデメリットばかりなわけではありません。
裏を返せば、色んな遊び方が出来る懐の深さがあると考える事もできるでしょう。
例えトップを独走しているように見えるプレイヤーがいても、どっかでデカいボーナスを逃しているはずですので、最後まで諦めずに参加できるはずです。
そういう意味では、重ゲー慣れしていない方にもオススメできるゲームかな、という気もしますね。
脱初心者を目指すゲーマーさんも、この『コインブラ』で重ゲーデビューしてみませんか!?
リプレイ性もバッチリですし、遊びごたえは十分にありますよ!

といったところで、今回のゲームはいかがだったでしょうか。
それでは、また次の機会にお会いしましょう。

 

ライター紹介

松風志郎(まつかぜ しろう)
ゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」所属。
ゲームシナリオライターだけでなくゲームのシステムデザインなども手がける。
アナログゲームとの関わりは古く、幅広いジャンルをたしなむ。
世界観にとっぷりと入り込めるゲームが好き。

代表作
歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「萌え萌え2次大戦(略)」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「出撃!乙女達の戦場」シリーズ
恋愛アドベンチャーゲーム「はち恋」
その他多数。