ボードゲームレビュー第231回「コンテナ 10周年記念版」

「コンテナ 10周年記念版」
作者:フランツ=ベノ・デロンシュ
メーカー:マーキュリーゲームズ/日本語翻訳:ホビージャパン
プレイ人数:3~5人
プレイ時間:約70~90分

 


 

<ご挨拶>
どうも、はじめての方、はじめまして。
おひさしぶりの方、おひさしぶりです、高円寺です。

またまたキウイゲームズ様のアナログゲームレビューを担当させていただくことになりました。

本日ご紹介するゲームはこちら、その名も『コンテナ 10周年記念版』になります!

ということでパッケージを開けるとこんなプレイヤータイルが。

「あ、店長わかりました。これ『ダーダオチェン』や『グラバー』だ」

「そうですね、あれと似た経営系のゲームですね。でも……」

「でも?」

「この作品のデザイナー、フランツ=ベノ・デロンシュ氏。
実はミュンヘンの裁判官だった方でして」

「ミュンヘンの裁判官!? 現役の!?」

「いえ残念ですが、すでにこの世を去られておられます。
晩年にゲームデザイナーとしてご活躍された方です」

「そんなエリートが作ったんですか、これ」

「はい、だからこそ他の作品とは違う視点からの経営戦略が楽しめますよ」

他にも巨大なコンテナや船のコマに圧倒されつつ、さすが10周年記念版だと感心もひとしお。

では内容をご説明していきましょう!

 

<概要>

簡単に説明するとこのゲームは自分でコンテナを生産し、それを他のプレイヤーに売却するゲームです。
他のプレイヤーに購入したコンテナは自分で価格を決定し、商店に並べることができます。
つまり安く買って高く売る、商売の基本です。

しかしながらこの『コンテナ』が他の経営ゲームと一線を画しているのには、明確な理由があります。
それは【プレイヤーが生産できるコンテナの種類には限りがある】ということです。
当然どの種類のコンテナを生産するかの判断は、プレイヤーに委ねられます。

おわかりいただけるでしょうか――このゲームでは【市場価格】の概念が発生することを。

 

<スタートアップ>

まず外国の島ボードをテーブルの中央に広げてください。
このボードでは【競り】が行われます。

次にプレイヤーボードを各プレイヤーに配布します。

これはお金カードです。
それぞれのプレイヤーに手持ち金20ドルを配布した後、残りは銀行として機能します。

写真の中に「0」と書かれているカードがありますが、これはブラフカードです。
このゲーム『コンテナ』の中では【競り】が発生しますので、その際にブラフとして使用します。

これはコンテナの価格カードです。
自分の国で商品はどれだけの価値を持つのか、相場を示していると思ってください。

当然ながら同じ商品でも国々によって需要が異なりますから、相場は変わります。
しかし、それを交渉相手に悟らせないよう上手く立ち回って稼がなければ、良い商人とは言えません。
相手にこちらが必要としている高得点コンテナを悟らせないよう、ゲーム終了時まで伏せていましょう。

これがこのゲーム中に商品として取り扱われるコンテナです。
各5色の17個ずつあり、これらのうち二種類以上のコンテナがなくなった時、ゲーム終了です。

最後にコンテナを運んで輸送するコンテナ船と倉庫コマ、工場コマです。
写真の左下に見えるのが倉庫コマ、右下にあるのが工場コマです。
なお工場コマについてですが、プレイヤーはあらかじめ1つの工場コマを持つことができます。
しかしながら、最初に配布された工場コマと同じ色の工場コマは建設できない、と制約があります。
これによって、コンテナに市場価格を持たせることに成功してるわけですね。

この形になりましたか?
それではゲームスタートです!

 

<ゲームの進行>

――ようこそコンテナの世界へ――

このゲームは手番前アクションと通常アクションの、二つのアクションからターンが構成されます。

■手番前アクション

・金利の支払い

■通常アクション

・倉庫1軒の建設/工場1軒の建設
・工場の商店のためのコンテナ生産
・港の商店のためのコンテナ購入
・船の航行

ではそれぞれのアクションについて、もう少し詳しくご説明しましょう。

<金利の支払い>
ゲーム中、資金不足に陥ったプレイヤーは借金カードを受け取ることで、銀行から借金することができます。
しかしながらこの借金カードを持っている場合、プレイヤーは手番開始時に借金カード1枚ごとに1ドルを銀行に支払わなければなりません。
金利が払えなくなったプレイヤーは”債務不履行”と見なされ、銀行は借金カード1枚ごとにそのプレイヤーのコンテナを1個差し押さえられます。

<倉庫1軒の建設/工場1軒の建設>

このアクションでプレイヤーはコストを支払って、倉庫か工場を建設することができます。
ただし、それぞれ1アクションを消費します。

・工場を建設した場合
「コンテナの生産」アクション実行時、より多くのコンテナを生産できます。
しかし、工場の商店に置けるコンテナ数は工場1つにつき2つまでです。

・倉庫を建設した場合、他のプレイヤーに販売できるコンテナを港エリアにより多く持てます。
しかし、港エリアに置けるコンテナ数は倉庫1つにつき1つです。

<工場の商店のためのコンテナ生産>

このアクションにはプレイヤーは、まず自分の右隣のプレイヤーに1ドルを支払います。
現実の生産でも発生する生産コストだと思ってください。

コストを支払うとプレイヤーはストックからコンテナを取って、自分の工場の商店に置けます。
その際、プレイヤーはコンテナの価格を設定することができます。
しかし先ほど工場の建設で触れた通り、工場の商店に置けるコンテナの数は工場の数の2倍以下です。

<港の商店のためのコンテナ購入>

このアクションでプレイヤーは、他の工場の商店コンテナを購入することができます。
ただし、以下の制限がつきます。
選べる購入相手は1人だけであり、購入するコンテナの数も自分の港エリアの倉庫の数だけです。

相手が設定している価格の分だけコストを支払ってコンテナを購入したら、プレイヤーは初めて港エリアの商店に自分で価格をつけてコンテナを置くことが可能になります。

当然、価格を高く設定すれば他のプレイヤーは、貴方の商店を利用しようとはしないでしょう。

 

<船の航行>

このアクションでプレイヤーは自分のコンテナ船を、別のエリアに移動させることができます。
ゲーム『コンテナ』には3種類の船のエリアが存在します。

1:各プレイヤーが所有している港
2:公海
3:海外の島ボード

つまりプレイヤーボード同士の間にある隙間は、全て大きな公海とみなされるわけです。
そしてエリアからエリアへの移動は1アクションを消費しますので注意してください。

ここまでのゲーム流れを総括するとこうです。

・アクションは必ず1人につき2アクションまで。
・コンテナ生産には1ドル、コストがかかる。
・コンテナを生産した場合、価格を設定して自分の工場の商店に置ける。ただし工場の数に依存する。
・自分の港エリアの商店に置くコンテナは必ず他のプレイヤーの工場の商店で購入したもの。
・コンテナ船を移動させて、他のプレイヤーの港エリアに到達した時はじめてコンテナを購入でき、自分の船にコンテナを搭載できる。
・コンテナ船にコンテナが搭載されている状態で、はじめて海外の島ボードを利用できる。

プレイヤーのコンテナ船が海外の島ボードに到達した時、特別なイベントが発生します。
そう【競り】です。

全てのプレイヤーは【競り】に出されたコンテナに値段をつけて、競合します。
この時競り落としたコンテナこそが実は勝利点になります。

競り落とすことができたコンテナは、そのまま海外の島ボードの自分のエリアに置かれます。
最初に登場したコンテナの価格カードを、覚えていらっしゃるでしょうか?

この海外の島ボードに置かれたコンテナこそが、自分が伏せている価格カードが適用されるコンテナです。

つまり、他のプレイヤーが必要とする高得点のコンテナの色が予想できたら、ブラフカードを交えながら【競り】で心理戦を展開しましょう。

―――どうです? ワクワクしてくるでしょう?

<最後に>

この『コンテナ』、実際にご覧になって見ていかがでしたか?
私が実際にプレイした時、ゲームのあまりの完成度の高さに正直、震えました。

こんなにも手軽に、現実の経済を体感できるとは思っていなかったからです。

実際にプレイしている間、ゲーム中盤はある事態に陥りました。
皆、コンテナの価格を高目に設定したり、資金繰りに難航したりして、なかなかコンテナが売れないのです。
コンテナが売れない以上、他のプレイヤーも資金繰りが回らなくなります。
つまり【物価の高騰により社会の経済が停滞している状態】になるわけです。

「100円は持っているだけなら、ただの100円だ。
しかし使えばその100円は、200円分の価値を持つ」

そう、お金を回さないと現実の経済も回らないということを理解できました。
事実、他のプレイヤーが銀行から借金してまで無理やり進行して、はじめてゲームが進んだのです。

さらにこれは偶然だったのですが、ゲーム中、私はあることに気づきました。
自分が最初に配布された工場で生産できるコンテナの色を他のプレイヤーが生産していないことに。

この時、私の脳裏にある戦略が組み立てられました。
この希少な色のコンテナにわざと高い価格をつけて、売れないようにしたのです。
そう、市場に出回らないようにしたんですね。
ようは【市場操作】【買い占め戦略】です。

やはりはじめは売れなくて、自分自身も資金繰りに難儀しました。

しかしこのゲーム、全ての色のコンテナを揃えなければ高得点は狙えない仕様になってます。
つまりどんなに高くても、最後は購入しければならない。

「最終的に、富は自分のところに戻ってくるはず」
「資金的に余裕が出始めたら、自分で競り落としてしまえばいい」
「そうすれば他のプレイヤーの手元にはいかないはずだ、と」

お前は江戸時代に悪代官とつるんで塩を買い占めた越後屋か! と突っ込まれそうですがいいんです!
塩は甘いものだと気づいたんです! なんとでも言うがいいさ!

さて、この【買い占め戦略】なのですが、ゴール直前までは上手くいきました。
しかし、世の中上手くできているもの、他のプレイヤーに戦略を見抜かれてしまったんですね。
私は戦略通りに自分で価値を吊りあげたコンテナの色を自分で競り落そうとしました。

「いや、このコンテナの競りは諦めて自分で買取ります」

さすがエリートが作っただけのゲーム。
ちゃんとルールで自分で競り落とせるよう【買い占め戦略】へのカウンターが用意してありました。

悪の栄えた試しなし、ちゃんちゃん♪でした。

トホホ………。

ともあれ、この「コンテナ」は経済の仕組みが悩ましく体感できるゲームです。
10周年記念版が出るのもコンポーネントの豪華さも、納得できる内容でした!
皆で楽しく世界経済をぶん回しましょう!

 

ライター紹介

高円寺 克洋(こうえんじ かつひろ)
コンシューマゲームのシナリオライターやプランナーを経て、現在はゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」所属。
ハードボイルド作品や時代小説をこよなく愛するヘビースモーカー。

代表作
シュミレーションRPG「ベルウィックサーガ」
歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ
その他多数。