ボードゲームレビュー第236回「ザ・マインド」

「ザ・マインド」
デザイナー:ウォルフガング・ウォルーシュ
メーカー:アークライト
プレイ人数:2~4人
対象年齢:8才以上
プレイ時間:20分

 


 

「第九話 瞬間、心、重ねて」

というわけで、みなさんおなじみまして。もしくは、はじめまして。
作家でフリーライターの、新井淳平です。
担当29回目となる今回のレビュー作品は、こちら。

『ザ・マインド』。
描かれているのはウサギでしょうか。不思議なパッケージですね。
それもそのはず、このゲームにはモチーフが存在しません。マインド=精神、というタイトルが全て。
みんなの心と力を合わせてゲームシステムと戦う、協力ゲームです。
しかし、いろいろある協力ゲーの中でも、これはおそらく最高難易度。
なぜなら、全くと言っていいほど意思疎通が行えないからです。
情報共有禁止、会話も禁止、ジェスチャーも禁止。
……これはもうニュータイプとして覚醒するしか(汗)

【ゲーム準備&コンポーネント紹介】
まず、プレイ人数に応じた枚数の〈ライフカード〉と〈流れ星カード〉1枚を、卓の中央に並べます。
……ハイそこ「手裏剣」って言わない。写真右は「流れ星」です。テキスト様の言うことは絶対!
ライフは失敗していい回数、流れ星は難所切り抜けアイテム、といった感じ。
今回は4人でプレイしたので「ライフ4・流れ星1」でした。4回失敗したらゲームオーバーってことね。
カードはそれぞれゲーム進行に応じて増減するので、残りは卓の端にストックにしておきましょう。

続いて〈レベルカード〉を卓上にセットします。
大きい数字が下、小さい数が上に来るよう降順で重ねて、山にします。一番上が「レベル1」ね。
こちらも使う枚数はプレイ人数ごとに決まっていて、2人ならレベル1~12。
以下、「3人:1~10」、「4人:1~8」となっています。
レベルは、現在のラウンド数と、そのラウンドで1人当たりに配る手札の枚数、を表します。
山の一番上が「レベル5」なら、5ラウンド目で、手札は各自5枚ずつ、ということ。
クリアするごとに上から1枚ずつ取り除いていき、どんどんレベルが上がっていくという流れです。
――クリアって具体的に何をするの?
それは最後のコンポーネントを見ると、わかっちゃうかもしれません。

こちらがその〈数字カード〉。「1」から「100」までの、計100枚存在します。
これを裏向きでシャッフル。山札にして、レベルに応じた枚数、各プレイヤーに手札として配ります。
ここでピンと来たあなた……ニュータイプです。……じゃなくて!
『THE GAME』というゲームを連想した人はご名答。
ゲーム大賞にもノミネートされた人気作なので、ご存知の方も多いのではないでしょうか?
やることは、それとほとんど同じ。

――数字が昇順になるように手札をプレイしていく。それだけです。

例えば、プレイヤー4人の手札が「1」「5」「17」「36」だった場合。
「1」のプレイヤーは開始と同時に、いの一番で手札を出さないといけません。
「1」より小さいカードは存在しませんからね。
次に「5」、次に「17」、次に「36」という順番でみんなが手札を出せれば、クリア。
ミッション成功です。山札の一番上の〈レベルカード〉を取り除き、次のレベルに進みましょう。
でも、もし「1」の次に「17」か「36」が出されてしまったら失敗。
昇順が成立しなくなってしまいますからね。

プレイされたカードより低い数字の手札を持っていた人は、すぐにそれを申告しましょう。
ここでゲームは一時中断。
〈ライフカード〉を1枚消費して、プレイカードより低数のカードを全て捨て札にします。
例えば、「1」の次に「36」が出された場合。
「5」の人か「17」の人が、宣言してゲームを止めます。
場の〈ライフカード〉1枚を消費=脇に除ける(ここでライフが尽きたらゲームオーバー)。
全プレイヤーは「36」以下の全手札(この例だと「5」と「17」)を脇に除け、ゲームを再開します。
ちなみにこの例だと、ここで全員手札を使い切った形になるので、クリア。次のレベルに進みます。
――とまあ、これが基本的な流れ。

何はともあれ、ライフ、流れ星、数字カードをセットして、手札を配り終えたら準備は完了。
いよいよゲームを始めていきましょう。
……「クェス、実戦の空気を感じるだけでいいんだ。ついて来い!」

【ゲームの流れ】
このゲームには手番の概念が存在せず、全員がリアルタイムでプレイしていきます。
目指すのは、先程も述べたように「数字が昇順になるよう全員が手札を使い切る」こと。
手札の配布が終わったら、まずプレイヤーたちは手を卓上に置いて集中します。
まだ手札の内容を確認してはいけません。焦ってフライングしないようにね。
全員が卓上に手を置いたら、その瞬間にゲームスタート。
素早く手札を取って、内容を確認。
全員の手札の中で数字が一番小さい、と思う人から、そのカードを場に出していきます。
「1」を持っていたら、これは一番簡単。誰より早くプレイすることが使命です。
「12」くらいが少し考えどころ。出すのが遅くなってはいけませんが、早すぎるのも問題。
1ケタ台の手札を持っている人を飛ばしてしまうかもしれません。
ちょっとだけ様子を見てからプレイするようにしましょう。
……Don’t think! Feel!

こういった感じで、空気を読みつつ、手札を出していきます。
この間、意思疎通は禁止。
会話もジェスチャーもダメ。できるのはまさに、空気を読むことだけ、です。
――しかし。
もし、「ちょっと待って」という気持ちになったら、ゲームの中断を申請することが可能です。
そんなときは大きな声で「ストップ!」と叫びましょう。
……「ザ・ワールド! 時よ止まれ!」

プレイヤーの誰かが「ストップ」を宣言したら、全員いったん手を止めて、卓上に手を置きます。
スタート前と同じ状態ですね。こうして初心に立ち返り、集中力を高めるのです。
全員の呼吸が合ったら、再び手札を持って、素早くゲームを再開しましょう。
……そして「時は動き出す……」

また、これ以外にもう1つだけ行える特別なアクションがあります。
それが「〈流れ星カード〉の使用提案」。使いたいと思った人は、無言で手を上げましょう。
これに同意する人は、同じように手を上げます。
全員の同意が得られたら、場の〈流れ星カード〉を1枚取り除きます。
これによって、全プレイヤーは自分の手札のうち、一番小さい数字のカードを捨てることができます。
ひと難所乗り切れるわけですね。
さらに、各自が捨てたカードの数字が見えることで、残りの手札の数字がある程度絞れます。
「50」を捨てた人がいれば、その人の残る手札の数字は「50以上」。
手札の数字が「場の数字~50未満」の人は、彼の動向を気にしなくて済みます。
とはいえ大胆になりすぎず、でも慎重にもなりすぎず、みんなの気持ちを1つにして臨みましょう。
……One for all, All for one. ~1人はみんなのために、みんなは1つの目的のために~

無事全員の手札がなくなれば、そのレベルはクリア。次のレベルに進みます。
ちなみに、このとき取り除く〈レベルカード〉の隅にアイコンが描かれていたら、それはボーナス。
指定の〈ライフカード〉や〈流れ星カード〉をGETできます。
脇に置いておいたストックから、場に追加しましょう。
ただし、場に置ける数は上限が決まっています。ライフは最大で5、流れ星は3。
それ以上はボーナスに描かれていたとしても得ることができません。
所持数いっぱいで取りこぼすくらいなら、どちらも思い切って使っていくよう心がけましょう。

【ゲームの終了】
〈レベルカード〉の山が尽きるところまで無事プレイしきったら、ゲームは完全クリア。
プレイヤーみんなで、仲良く勝利を讃えあいましょう。……ポジピース☆
しかし一方、ゲームの途中で場の〈ライフカード〉が尽きてしまったら、そこでゲームオーバー。
プレイヤーたちの敗北です。……ほとんどの場合こうなる(泣)
完全クリアはとてつもなく困難な道のりですが、失敗しても挫けずに再チャレンジ!
バラバラの心を1つにして、イジワルなゲームシステムをやっつけましょう。
……4つで1つの星座を描く四重星[トラぺジウム]のようにね。

【まとめ】
「『THE GAME』から言葉を奪ったような感じ」
プレイヤーの1人はそんなふうにこのゲームを表しました。
確かにルール面では適切な表現。
でも、プレイ感覚はこちらのほうが、より緊張感に満ちています。
なんといっても、意図的な表現が全て封じられていますから。
そんな中で、自然と出てくる目や手の動きから、仲間の心理や手札の内容を読み解いていく。
もし身構えている様子が見受けられたなら、彼の手札はきっと場の数字に近いはず。
反対に、超然と構えているようだったら、場の数字より圧倒的に高いはず。……などなど。
察する能力が試されます。
しかし、それにも増して重要になってくるのは、時間の感覚です。
時間がどれぐらい経っているかで「みんなけっこう上なんだ」というのがわかる。
そこで、「だったら俺のほうが低いかも」みたいに読み合う。
こういった時間と心理の動きこそが、まさにこのゲームの肝なのです。
……「ああ、アムロ……刻が見える……」

1ケタのカードがあれば、すぐに出しにかかる。
10台は落ち着いて普通の速度で出す。20台は少し様子を見て出す。
目安としてはそんな感じでしょうか。
難しいのは、ちょっとしか数字が違わない場合や、連番状態になっていた場合。
これを入れ子にせず切り抜けるためには、かなり精度の高い読みが求められます。
ちなみに、今回のプレイではレベル4クリアが精一杯でした(汗)
4人プレイの最終レベルは8。
つまり、感覚だけを頼りに32枚を昇順で出しきらないといけない。
そんなのもし達成できたら……アメイジング!
もう奇跡の領域ですよ。……みんなエスパーだよ!

でも、クリアが困難なだけあって、成功したときの盛り上がりは抜群です。
プレイヤーみんなが一丸となった達成感。
言葉や動作を使ったやり取りはほぼ皆無なのに、心が通じ合うという体験。
プレイを繰り返すほど、どんどん意思疎通の精度が上がっていくのが、楽しくてしょうがないです。
これは唯一無二のゲーム体験だと思います。
このおもしろさは、実際にやってみないとわからない。
ルールはシンプルでプレイ時間も短め。
触りやすい作品ですので、ぜひ一度プレイしてみてください。
そうすれば……この気持ちがわかるはずだシンクロニシティ。

――といったところで、今回はここまで。
以上、「『ONE』は終わらない」新井淳平がお送りしました。ではではまた~。

【ライター紹介】
新井 淳平(あらい じゅんぺい)
「小説家」兼「フリーライター」。
ゲームシナリオのライティングにも携わる。
ボードゲームのプレイスタイルは、出遅れ追い上げ型。
ダイス運は、最悪だけどドラマティック。
【著書】
『シンデレラゲーム』(オリジナル小説・映画化)
『猫侍 久太郎、江戸へ帰る』(ノベライズ小説)
『猫侍 玉之丞、争奪戦』(ノベライズ小説)