ボードゲームレビュー第242回「カスタムヒーローズ」

「カスタムヒーローズ」
作者:ジョン・クレア
メーカー:アークライトゲームズ
プレイ人数:2~6人
対象年齢:14歳以上
プレイ時間:45分

 


 

「ピンチの時にはオイラを呼びなっ…」

というわけで、みなさんおなじみまして。もしくは、はじめまして。
作家でフリーライターの、新井淳平です。
担当32回目となる今回のレビュー作品は、こちら。

『カスタムヒーローズ』。
トランプゲームの『大貧民(大富豪)』に似た、トリックテイキングのゲームです。
1ラウンドは「準備」「メイン」「ボーナス」の3フェイズ構成。
基本的に各プレイヤーは小さい数=〈戦力値〉のカードから順に手札をプレイしていきます。
『大貧民』よろしく、同じ数値のカードは同時にダブル出し、トリプル出しもできます。
ただ、ここで『大貧民』と違うのは、次の人も同値のカードを出せる、ということ。
場のカードが「3ダブル」のとき「4以上ダブル」でなく「3ダブル」も出せるんです。
そして、もしこのように同値のカードがプレイされた場合、次の手番の人のプレイ順が飛ばされます。
『UNO』の「SKIP」の要領ですね。
自分がプレイした後、誰もプレイしないまま手番が自分まで1周したら、1トリック終了。
この「トリック」を繰り返し、10枚の手札を使い切った人から順にメインフェイズを抜けていきます。

メインフェイズの後は、ボーナスフェイズ。
早く抜けた人ほど、多くの「VP=勝利点」をGETできます。
4人プレイなら「1位:5VP/2位:3VP/3位:1VP/4位:-1VP」。
他に「パワー」と〈強化カード〉も手に入るのですが、それについてはのちほど。

ゲームは、誰かが「10VP以上持った状態で1位通過」すると終了。
早ければ、わずか3ラウンドで勝負がついてしまうわけです。
――ところがどっこい、そうは問屋が卸さない。
10VP以上の時にトリック最下位になると、強制的に9VPになってしまうというルール。
うまくタイミングを狙ってきっちり1位を取らないと、優勝はできません。
勝利を目前に圏外へ落ちてしまう、なんてことも。
……「どうした?ヒーロー…どうしたよっ。ヒーローなのだろ、オイッ。」

――と、ここまでが基本的な流れ。
しかし、このゲームのポイントとなってくるのは、タイトルにもある「カスタム」要素。
手札の〈キャラカード〉に、透明な〈強化カード〉を重ねることで、様々な効果がもたらされます。
〈強化カード〉のタイプは〈オーラ〉〈右手武器〉〈左手武器〉〈仲間〉の4種類。
どの種類も単体では使えず、〈キャラカード〉のスリーブ内に差し入れる形で使用します。
なお、タイプが別なら最大4枚同時に〈キャラカード〉に重ねて使うことも可能です。

●オーラ(緑アイコン):【戦力値の上書き】
〈キャラカード〉左上「1~10」の〈戦力値〉を「13」や「14」などの数値に、直接上書きします。

●武器(右手=青/左手=赤):【戦力値の修正】
〈戦力値〉の下にある2マスの空欄のうち1つに[+3]や[-1]などの修正を加えます。
右手武器(青)と、左手武器(赤)の2種類があり、2マスのそれぞれに対応。
手札をプレイする際は、これらの修正を加えた後の数値を採用します。
例えば「3[+2]」は「5」、「8[-3]」も「5」。この2枚を同時に出すと「5ダブル」になります。
もちろん、元々「5」のカードとのダブル出し、トリプル出しも可能。
あとは、右手左手それぞれ1枚ずつ〈キャラカード〉に重ねて、「1[+2][+4]」=「7」とか。
「3[+5][-1]」=「7」、「10[+3][+1]」=「14」とか。
この「14」を〈オーラ〉による上書きの「14」と同時に出せば「14ダブル」なんてのもできちゃう。
……最高かよっ。byねる

●仲間(黄)【特殊能力の付与】
〈キャラカード〉下部に「特殊能力テキスト」を付与します。
ただし〈仲間カード〉の効果は、〈オーラ〉や〈武器〉のように重ねただけでは発揮されません。
発揮するためには、テキスト左下に描かれた数の「パワー」をコストとして支払わなければいけません。
――「パワー」って何?
黄色い五角形のトークンが〈パワートークン〉。ゲームスタート時は各プレイヤー2個持っています。
基本的に各ラウンドのボーナスフェイズで、早抜けの順位に応じた量「パワー」をGETできます。
「1位:0個/2位:1個/3位:2個/4位:2個」。
「VP」とは逆に、抜けるのが遅いほうが多くの「パワー」をGETできる形。これで逆転が狙えるわけです。
また、「パワー」は特殊能力のあるカードを能力を発揮せずプレイすることでも1個得られます。

写真手前が〈パワートークン〉のストック。
奥の赤い三角形は〈VPトークン〉。スタート時にこちらは1個だけ持った状態です。
あと、左上に映っているのが「ついたて」。
「VP」は公開情報ですが、手持ちの〈強化カード〉と「パワー」は非公開情報なので、ついたての後ろに。
なお「パワー」は最大で6個までしか持てません。
7個以上になったときは、即場に捨てるか「変換」するかしないといけません。
「変換」というのは「パワー×4」払って「VP×1」を得ること。
なお、これは所持数をオーバーしていないときでも、手番中はいつでも実行できます。

では話を戻しまして。
具体的な〈強化カード〉の種類と、その特殊効果をご紹介していきます。

▼炎上ウサギ(コスト1)
このカードは1枚で2枚分存在するものとみなす。
つまり「5[炎上ウサギ]」1枚だけプレイすると、「5ダブル」の扱いになるわけです。
「5」と「5[炎上ウサギ]」という2枚をセットで出せば「5トリプル」の扱い。

▼角ガエル(コスト1)
このカードの〈戦力値〉は一緒にプレイした別のカードの〈戦力値〉と同じとみなす。
つまり「1[角ガエル]」を「10」と一緒にプレイすると「10ダブル」の扱い。
1枚で出す時は発動しても無能ですが、ダブル、トリプルで高値と合わせれば、かなり強力になります。

▼キツネ巫女(コスト1)
次のプレイヤーの手番から、戦力値の大小の強さが逆転します。
つまりこれは『大貧民』でいうところの「革命」。
「3[キツネ巫女]」で出せば、次の人は「3以下」のカードしか出せなくなります。
ただし、この逆転効果はそのトリック限定。次のトリックになると元に戻るので気をつけましょう。
また、『大貧民』ならば「革命返し」で強弱の関係を元に戻すことができますが、このゲームでは不可。
ひとたび「キツネ巫女」が発動したら、そのトリックが終わるまでもう強弱関係は変わりません。

▼玉クジラ(コスト1)
この能力を発揮したトリックでこのカードをプレイしたプレイヤーが勝利したら、直ちに「VP×1」得る。
上記3種のようにトリックを有利に運ぶ効果はないですが、「VP」が得られる効果は魅力的。
しかも「1ラウンド」ではなく「1トリック」勝つだけで「VP×1」は、けっこうおいしいです。
なお、もしこの効果で「10VP」になり、さらにボーナスフェイズで「VP」が入る場合、ゲームセット。
「10VP」持った状態で1位通過したことになるので、優勝となります。

通常の〈強化カード〉の種類は以上です。
他に、初期強化カードとして「子ドラゴン」と「昇華形態」があるのですが、これらはちょっと特殊。
詳しくは【ゲームの流れ】でご紹介しますね。

ちなみに〈強化カード〉も、ボーナスフェイズで順位に応じてGETできます。
「1位:1枚/2位:2枚/3位:2枚/4位:3枚」。
「パワー」同様、これも逆転のため劣勢の人のほうが多く獲得できる形になっています。
……「ほいじゃお願いっ……次のゲーム、オイラにくりっ。」

【ゲームの流れ-セットアップ】
「1~10」の〈キャラカード〉10枚1セットを遊ぶ人数分取り、残りは箱に仕舞う。
各プレイヤーは「ついたて」と「VP×1」と「パワー×2」を持つ。
また、初期強化カードとして「子ドラゴン×1」「昇華形態×1」を持つ。
(「昇華形態」は絵柄が異なるが、効果は同様ですべて同じ扱い)
余った「子ドラゴン」と「昇華形態」は使わないので箱に仕舞う。
〈強化カード〉を全てまとめてシャッフル。「強化カード袋」に入れて、内容が見えないようにする。
各プレイヤーは「強化カード袋」からランダムに1枚ずつ〈強化カード〉を引いて持つ。
スタートプレイヤーをじゃんけんなど適当な方法で決定する。

【ゲームの流れ-準備フェイズ】
セットアップで用意した、全〈キャラカード〉(4人プレイなら40枚)をひとまとめにしてシャッフル。
これを各プレイヤーに手札として10枚ずつ均等に、ランダムに配ります。
ここで「子ドラゴン」の能力を発揮したい人は、ついたての前に「子ドラゴン」を出します。
出すときはもちろん、事前に何かの〈キャラカード〉のスリーブに入れて重ねた状態で。
なお、能力発揮しない場合は、メインフェイズで通常の〈キャラカード〉としてプレイすることになります。
この場合は、他の〈強化カード〉同様、プレイした際に「パワー×1」が手に入ります。
さて、それで「子ドラゴン」の能力が具体的にどんなものかと言うと――

▼子ドラゴン(コスト:「VP×2」をこのカード上に乗せる)
この特殊能力を発揮させたラウンドで1位になった場合、まずこのカード上のVPを取り戻す。
そのうえで、準備フェイズでプレイした「子ドラゴン」1枚につき「VP×2」を直ちにストックから得る。
1位になれなかった場合は、何も起こらず、カード上のVPはストックに支払う。
なお、もしこの効果で10VPになり、さらにボーナスフェイズでVPが入る場合、ゲームセット。
10VP持った状態で1位通過したことになるので、使ったプレイヤーが優勝となります。

一気に優勝を掴むための勝負どころ能力、といった感じですね。
VPが劣勢の状態からでも、数枚同時に使えば、ドンっと巻き返しが効きます。
しかも「子ドラゴン」をすでにプレイしている分、メインフェイズで消化しなければならない手札の数が少ない。
これは、ラウンドで1位を取りやすくなるので、悪くない戦術です。
しかし、背水の陣。負けたときは「VP×2」を失ってしまうので、イチかバチかなところでもあります。
ギャンブルに打って出る勇気がある方は、ぜひ複数枚一気に仕掛けてみましょう。
……「チクショー…かっちブーだなドラゴン、てめぇ……」

【ゲームの流れ-メインフェイズ】
さあ、ここからが本番。
――と言っても、ほとんどレビュー冒頭で説明済みですが(汗)
スタートプレイヤーから手札を、数値の低いカードから順に、場にプレイしていきます。
『大貧民』のように、同じ数値のカードは同時にダブル出し、トリプル出しもできます。
もし場のカードと同値のカードがプレイされた時は、次の人の手番はSKIPされます。
手番中は適宜〈強化カード〉を〈キャラカード〉のスリーブに入れてカスタムができます。
特殊能力のあるカードをプレイしたときは、能力を発揮するかどうかをすぐに宣言。
発揮するならコストを払い、発揮しないときは「パワー×1」をストックからGETします。
トリック中、手札をプレイできないとき、したくないときは「パス」が可能。
この場合『大貧民』と違い、一度「パス」しても次の自分の手番でカードを出すこともできます。

一人がプレイした後、他の誰もプレイしないまま手番が1周してその人まで戻ってきたら、1トリック終了。
その人が親になって、次のトリックの1手目を、また手札からプレイします。
こうしてトリックを繰り返し、手札を使い切った人から、順次「ボーナスフェイズ」を始めます。
一人を残して全員が手札を使い切ったら、トリックおよびメインフェイズは終了です。

――とここで、ひとつ事例を紹介したいと思います。
トリックに勝つには。
基本的には「10」が最高値ですが、トリックやラウンドが進むともっと大きい数がどんどん出てきます。
例えば「13」とか「14」とか。この辺の数値になると、勝つのがなかなか難しい。
……「その薄い羽根では海を渡る事は出来ない。」
これで決まったろう、と大きな数値を出しても、上回られてしまうこともしばしばです。
でも、実入りを増やす「玉クジラ」も発動したし、意地でもこのトリックには勝ちたい。
あるいは、「子ドラゴン」を使ったからこのラウンドは1位で抜けたい。
そんなときは時は――コレだ!

▼昇華形態(コスト2)
このカードは1枚だけでプレイし、どんなカードよりも強いものとみなす。
つまり、『大貧民』における「ジョーカー」です。
しかもこの能力は、ダブルやトリプルに対しても1枚で対抗できるという無双ぶり!
仮に敵が4枚出しで来ようが、1枚だけで一刀両断です。

さらに、この「強いものとみなす」という概念。
「キツネ巫女」によって強弱が逆転している最中でも適用されます。
つまり、相手が「1[-3]」=「-2」だろうがなんだろうが「昇華形態」が勝つ。……アメイジング!
……「いけねぇ。呑まれたら終いだ…。ビビりゃまけるぜっ…臆せば……死ぬぜっ!!」

――しかし。
では逆に、敵に「昇華形態」を出されたら、もう打つ手がないのかと言うと――否。
……「教えてあげるよ、Mr.月本!! 君の甘さと、バタフライジョーの悲劇を!!」

このゲームは『大貧民』とは違って、同値のカードが出せる。
つまり、「昇華形態」には「昇華形態」を出せばいいのです。
これで、見事に上を取れるわけですね。
ちなみに、同値扱いなのでSKIP効果も当然発生します。
あと、「昇華形態」も〈強化カード〉の1種なので、もちろん能力発揮しないという使い方もあり。
その場合は、通常の〈戦力値〉を適用し、「パワー」も1個、手に入ります。
まあ、このカードはいわば切り札ですので、通常使用はあまりオススメしませんが(汗)

【ゲームの流れ-ボーナスフェイズ】
このフェイズは同時には行わず、手札を使い切ったプレイヤーから随時行っていきます。
やることは、ついたて裏にある早見表に従い、着順の「VP」「パワー」〈強化カード〉を得ること。
全員それが済んだら、次のラウンドを始めます。
なお、その際のスタートプレイヤーは、このラウンドで最下位になった人。
準備フェイズで全〈キャラカード〉をシャッフルして配る際、〈強化カード〉はスリーブに入れたまま。
一度カスタムされたカードは、ゲーム終了までそのままです。
一度スリーブに入れた〈強化カード〉は、もう取り出しませんし、取り出せません。
……「私はここまでだ、ヒーロー……また連れてきてくれるか?」

以上。こうしてラウンドを重ねていきます。何ラウンド目でゲーム終了、といった括りはありません。
先述もしましたが、基本的に「誰かが10VP持って1位抜け」するまで続きます。
一応、6ラウンド以上やって勝負がつかなかったときは「サドンデス」というルールを適用もできます。
そこのところ、詳しくはご自身の目でマニュアルをご参照ください。
このゲームでは、決して「勝利を分かち合う」ことはありません。……NOTポジピース。
誰が真のヒーローか、とことん戦い抜き、雌雄を決しましょう!
……「ヒーローは俺だぜっ!! 俺だかんねっ!!」

【まとめ】
「ああ、大貧民に+αって感じね」
……舐めてました。これが、おもしろい!
カスタムのシステム自体は簡単なことなのですが、圧倒的な深みの増し方です。
基本的なカードの種類は多くないのに、カスタムによってバリエーションの幅は無限大。
数値をプラスして強くしたり、マイナスして数値を揃えることでトリプルを狙ったり。
いろいろと考えがい、やりがいがあります。

しかも、自分が勝つためにカスタム使用した強カードは、次のラウンドでは十中八九、人の手に渡るんです。
そして同時に、人がカスタムした状態のカードが自分の元に来る。それをさらにカスタムして使う。
ラウンドを重ねるほどに、カードは半乱数的にカスタムされていく。
もうどんなカードがどれくらいあって、どこから何が出されるか、カウンティングなんて不可能。
しかし、この読めなさ、カオスさがたまらなくおもしろい。

本来、『大貧民』なだけでも、ダブル、トリプルなどで戦略性は充分なところ。
さらに、SKIPによる駆け引きや、特殊能力の使いどころの判断。
「昇華形態」による頂上決戦的な白熱と、メチャクチャ盛り上がりどころ豊富です。
ぜひ、皆さんも一度遊んでみてください。……癖になりますよ☆
――といったところで、今回はここまで。
以上、「僕の血は鉄の味がする…」新井淳平がお送りしました。ではではまた~。

 

【ライター紹介】
新井 淳平(あらい じゅんぺい)
「小説家」兼「フリーライター」。
ゲームシナリオのライティングにも携わる。
ボードゲームのプレイスタイルは、出遅れ追い上げ型。
ダイス運は、最悪だけどドラマティック。
【著書】
『シンデレラゲーム』(オリジナル小説・映画化)
『猫侍 久太郎、江戸へ帰る』(ノベライズ小説)
『猫侍 玉之丞、争奪戦』(ノベライズ小説)