ボードゲームレビュー第252回「ヌースフィヨルド」

「ヌースフィヨルド」
作者:ウヴェ・ローゼンベルク
メーカー:ホビージャパン
プレイ人数:1~5人
対象年齢:12才以上
プレイ時間:約(プレイ人数×20)分

 


 

毎度どうも、お久しぶりな感じのライター松風です。
さて、ボードゲームを色々プレイしていますと、時折「なんでそれでゲームを作ろうと思ったの?」って言いたくなるような題材を目にします。
特に海外製のゲームで、我々日本人に馴染みのないものがモチーフだったりすると、「なんかよく分からんな。止めとこう」と食指も鈍くなったりしますよね。
でもそんなゲームに限って、やってみると抜群に面白かったりするので、食わず嫌いはもったいないですよ!

ということで、今回は『ヌースフィヨルド』というタイトルをご紹介いたしましょう。

はてヌースフィヨルドとはなんじゃいな? とネット検索しても、まず出てくるのはこのボードゲームに関する記事ばかり(笑)
実はノルウェーのロフォーテン諸島という所にある小さな漁村の名前なのです。
11世紀以降、タラやニシンの漁業で賑わったノルウェー最古の漁村という事ですが、現在は村ごと観光用のテーマパークになってしまっているようです。
そんな日本人にとって馴染みがなさすぎる、正にどマイナー中のどマイナーな村が今回の舞台です!

そんな舞台で何をやるのかと言いますと、この村にある漁業会社のオーナーとなって港とその周辺を開発し、会社を大きくしていくのが目的となります。
分かってはいましたけど、やっぱりこれだけでは欠片も面白さが想像できませんよね……。

デザイナーは『アグリコラ』や『カヴェルナ』、『パッチワーク』といった計画性の高いマネージメント重視のゲームをよく手がけるウヴェ・ローゼンベルク氏。
この『ヌースフィヨルド』もご多分に漏れず、計画性が大事なワーカープレイスメントゲームとなっております。
さしずめ「農業のアグリコラ、漁業のヌースフィヨルド」といった所でしょうか。
とはいえ、ゲーム性は『アグリコラ』よりも同氏の『グラスロード』に近いと言われているようですね。

では早速ゲームを見ていきましょう。
セットアップはちょっとやる事が多くて最初は戸惑うでしょうが、コンポーネントが多いだけで順番にカードやコマを並べていくだけですので問題ないでしょう。

中央にあるのが『共通ボード』と呼ばれ、ワーカーを配置してアクションを行っていくボード類になります。
左上にあるのが実際にワーカーを置いていく『アクションボード』、その右隣が『長老カード』と『船タイル』を並べておく『船・長老ボード』です。
その下、いくつか丸いお皿が並んでいるのが『晩餐会ボード』と呼ばれる、余った魚を給餌しておくボードになります。
さらにその下側に2枚並んで置かれているのが『建物ボード』で、自分の手元の『港ボード』に建てる『建物カード』を並べておくスペースです。
パッと見では『晩餐会ボード』がよく分からないボードでしょうか。
役割についてはおいおい説明していきますのでご安心を。

個人の手元には、緑の地面と海岸線が描かれた『港ボード』と『漁フェイズ』の進行が書かれた『長老会ボード』の2つが並べられます。
『長老会ボード』はゲーム中獲得した『長老カード』を並べておくだけ。
主にプレイヤーが見るのは『港ボード』の方になるでしょう。
こちらにはゲットした『建物カード』を並べていけるのですが、右半分のスペースには『森林タイル』が置かれ、最初はふさがった状態から始まります。
つまり、人の手が入っていない土地を開拓していくところからスタートせねばならないのです。

ゲームは合計7ラウンドで行われ、手元に配られるワーカーは各自3人ですので、つまり21手番行えばゲームは終わっちゃうという事ですね。
多いか少ないかで言いますと、色々手を広げるには若干少ないと感じるくらいのバランスになっていると思います。
ですので、ある程度方針を決めてプレイに臨んだ方がいいでしょう。
とはいえ、少し独特なプレイ感のあるゲームですので、ルールメカニズムを理解できた二回目以降が本番と考えるくらいでいいと思います。

さて、1ラウンドは3つのフェイズに別れています。
最初にくるのが『漁フェイズ』。
ここは全員同時にプレイを行います。
まず、自分の『港ボード』の最下段、船と数字の書かれたゲージのような欄を見てください。
ここが『漁獲量トラック』と呼ばれるスペースです。
左端にある頼りなさげな小さいボートが、最初にあなたの持っている船です。
その隣のトラックに書かれた数字(最初は3)がラウンド頭に手に入る魚の数になります。
このトラックは『船タイル』を買い増す事でどんどん埋まっていき、それにつれて1ラウンドに得られる魚の数が増えていきます。
ゲームが進むと、魚は様々なところに配られる事になりますので、多いに越したことはないのです!

『漁フェイズ』で得た魚はまず自分が雇っている長老に分配されます。
もし『長老ボード』上に『長老カード』が置かれていたら、一人に付き1匹の魚を献上せねばなりません。
長老たちはそれぞれ独自の得意分野があり、その経験を生かして自社のために力を貸してくれます。
なので、役員報酬(?)として魚を支払うわけですね。

次に、発行済みの自分の色の『株券』の上に魚を1匹づつ載せていきます。
詳しくは後述しますが、要するに自社の株券を持っているプレイヤーに、配当金代わりに魚を渡していくわけです。
何と言ってもこのゲームは漁業会社を運営するゲームですからね!
もちろん、自社株は自分で買うのもアリですので、自社の『株券』が手元にあれば、その上にも魚を配置します。
ちなみにゲーム開始時には、発行済み株券2枚と未発行株3枚を各自持っています。

それでも魚が残っていた場合には、自分の『港ボード』上にある『貯蓄スペース』に保存できます。
ただし、最大でも8匹までしか貯蓄できませんので、埋まっていた場合は廃棄という事になり、共通ストックに戻すことになります。
配置するスペースが多いけれど、漁獲量が足りない! という場合は「長老→自社株券→貯蓄スペース」の順に割り振ることができます。
全員が魚を分配し終えたらこのフェイズは終了です。
自分が保有している『株券』(自社他社問わず)の上の魚は『個人ストック』に移され、カードの購入に使う『資源』(コスト)として扱います。
この「ラウンド頭に獲れた魚はそのまま手に入らず、株式の配当として収入になる」というのがこのゲームのミソなのですよ!

2つめのフェイズは『労働フェイズ』です。
ここはスタートプレイヤーから時計回りに3周するまで(ワーカーコマを使い切るまで)1回づつ手番を行っていきます。
手番が回って来たら、自分の『ワーカーコマ』を1個、『アクションボード』か『船・長老ボード』のどこかのスペースに選んで配置します。
アクションスペースの左上に書かれた数字は、そこに配置できるコマの最大数を示しています。
なので、使用したいアクションがあれば、出来る限り早くワーカーを送り込みましょう。

コマを配置したスペースのアクションは、即座に実行されます。
これはマストの行動なので、コマを置いたけど効果は使いたくない、というのは通りません。
どうしても置きたいスペースがない場合はパスも出来ますが、行動回数が減ってしまうのであまりおすすめは出来ません。
1ラウンドの手番はあくまで3回であり、手元に残っているワーカーの数ではないのです。

では実際にアクションの解説に行きましょう。
『アクションボード』の左上から順に見ていきます。

◆『+1金』……名前の通り、1金を『共通ストック』から自分の『個人ストック』に移せます。
どちらかと言うと他にすることがない時に選ぶハズレアクションかも。

◆『貯蓄取り崩し』……『港ボード』上の『貯蓄スペース』に置いた『資源』すべてを『個人ストック』に移せます。
『漁フェイズ』で溢れた魚や、『伐採』で入手した木材が対象です。
逆に言うとこれをしない限り魚は溢れっぱなしになってしまうんですが、魚8匹のために1行動消費したものか悩むところです。
ただし、『個人ストック』に置ける木材は最大12個までですのでご注意を。(魚は事実上無限に置けます)

◆『魚の給仕』……『晩餐会ボード』上の空いているお皿に魚を出せ、埋めたお皿ごとに1金を得ることができます。
各お皿には数字が書かれていて、これが「置くために支払う魚の数」になります。
後に行くほど要求される魚の数は増えるのが厄介ですね。
なお、実際にお皿に乗せる魚は1匹だけな事に注意してください。
ここでお皿に置かれた魚は、後述の『長老』が能力を使うためのコストになります。

◆『建物の建設』……『建物ボード』上にある『建物』を1軒選んで、書かれているコストを支払うことで自分の『港ボード』の空きスペースにそれを建てる事ができます。
『建物』は勝利点になる他、ゲームを有利に進める特殊効果を発揮します。
『長老』とのシナジーを加えれえば、リソースをガンガン稼ぐこともできますので、自分の戦略に合ったものを選びましょう。
『建物』と『長老』の組み合わせを考えるのがこのゲームの悩ましくも楽しい部分(の一つ)なのですよ!

◆『株券の発行』……自分の『個人ストック』にある『未発行株』を1枚取り、裏返して『株券』にして「新たに発行された株券」と書かれたスペースに置きます。
これをすることで即座に2金が手に入ります。
初期の手元には『未公開株』が3枚あるはずですので、ここではゲームを通して6金手に入れられるわけです。
『株券』の発行は『資源』の入手数に関わって来ますので、なるべく序盤からガンガン発行していきたいですね。
逆にゲーム終了までに発行できなかった『未発行株』は-1点になってしまいますので注意!

◆『全株券の購入』……先程の「新たに発行された株券」スペースにある全ての『株券』を一括購入します。
購入には『株券』一枚につき1金を『共通ストック』に支払わなければなりません。
『株券』は前述の通り、ラウンド頭の『漁フェイズ』で魚がもらえるだけでなく、ゲーム終了時には1枚につき1勝利点にもなります。
そう考えれば、余裕がある時にガッと買い占めたいところですが、『株券』はみんなが欲しいもの。
当然早いもの勝ちですし、ちまちま1枚づつ確保していたのでは手番に余裕が無くなってしまいます。
ラウンドが進めば支払う金額は割引されていくなど、どのタイミングで買うのかが非常に重要な駆け引きの対象になるでしょう。

◆『伐採』……『港ボード』上にある『森林タイル』を1枚取り除き、木材5個を『個人ストック』に送ります。
ゲーム開始時には4枚の『森林タイル』が置かれていますが、これらを除去することで『建物』を置く空きスペースを作りつつ、『資源』まで得られるお得なアクションです。
ただし、気をつけなければならないのは、ゲーム終了時に『建物』が置かれていない空きスペースは-1点されてしまうということです!
無計画に開拓するのも考えものですね。

◆『間伐』……このアクションを選ぶと、『港ボード』上にある『森林タイル』1枚につき木材1個をゲットできます。
『伐採』よりも少なすぎるのが少々残念ですが、空きスペースを作らなくてもいいのが便利です。
なお、『森林タイル』があればあるほどもらえる木材も増えますので、『建物』に依存しないプレイスタイルの際には『植林』とのコンボで猛威を奮ってくれるでしょう。

◆『植林』……減ってしまった『森林タイル』はこのアクションで増やすことができます。
このアクションで『森林タイル』2枚を重ねて、空いているダブルスペースに置きます。
『森林タイル』は大きいので、横に2マス分のスペースにまたがって置くことになります。これをダブルスペースと呼ぶのです。
空きスペースを塞ぎつつ、木材ゲットの機会を増やせるのはいいのですが、再度空きスペースを作るには2枚とも『伐採』しなければいけないことに注意です!

◆『造船』……コストを支払ってより頑丈で大きな船を手に入れることができます。
手に入れた船は『港ボード』の『漁獲量トラック』に左詰めで置かれていき、『漁フェイズ』での漁獲量を増やしてくれます。
さらに、船には勝利点も付いてますので、大船団を組んで乱獲に走るのも一つの手です。

◆『長老の獲得』……『船・長老ボード』上に並べられた『長老カード』の、一番上にあるものの中から好きな長老を選んでお迎えします。
『長老カード』はセットアップの段階で、決まった順番通りに重ねて置くことになっています。
なので、選択できる長老はオープンになっている長老だけ、という事ですね。
長老をゲットした時、即座にその効果を(ワーカーの派遣なしで)1回使用できます。

◆『長老の使用』……こちらは『アクションボード』ではなく、手元の『長老会ボード』にワーカーを派遣することで、選んだ長老に能力を使ってもらいます。
『長老の獲得』の即時使用の時もそうですが、能力にはコストとして『晩餐会ボード』のお皿に置かれた魚を使用します。
なお、贅沢にも長老は必ず数字の大きいお皿から魚を持っていきます……。
この時、支払われた魚は『長老カード』の上部にある3つのマスに置かれます。(漁フェイズ頭で魚を支払うのと同じところ)
ここに魚が3匹貯まると、なんと長老は1匹を返してくれるんです。(個人ストックに1匹送り、2匹は共通ストックに戻します)
食い残しなのかおすそ分けなのかは見る人次第かもしれませんが……!

4人以上でプレイしている場合、『アクションボード』の上部に『模倣』と書かれたボードが追加されます。
ここにワーカーを置けば、すでに埋められているアクションの中から任意のものを選んで実行できるスグレモノなんですが、やっぱり埋まるのも早いんですよね、こういうのって……。

最後に3つ目のフェイズ、『帰宅フェイズ』です。
ここも全員同時にプレイしますが、次のラウンドの準備を行うだけですので、難しいことはなんにもありません。
ワーカーを手元に戻して、特定のラウンド時に指示されたカードを並べ直すくらいですので、実質プレイするのは2フェイズだけと言ってもいいかもしれませんね。

最初にも言いました通り、7ラウンドをプレイしてゲームは終了。
ゲームの勝利条件は一番勝利点を稼いだプレイヤーの勝ち、と分かりやすいものになっています。
意外と『未発行株券』や『港ボード』の空きスペースで受けるマイナス点が大きく響くゲームですので、そこのところは注意してプレイした方がいいでしょうね。

とまぁ『資源』の獲得方法にクセがありますが、プレイ感覚はライトかつ真っ当なワーカープレイスメントゲームと言えるでしょう。
流れを理解できればサクサク進められるのが特徴です。
反面、『建物』や『長老』とのシナジー効果や、リソース管理は頭を悩ませる要素でいっぱいです!
船をいっぱい作るのか、建物をいっぱい建てるのか、長老をいっぱい集めるのか、はたまた森林を増やして稼ぐのか、などなど……。
プレイ方針によって勝利点の獲得方法がガラリと変わるのが何度も遊びたくなる面白いポイントです。
全てに手を広げるのは手番の数もリソースも足りなくなりますので、どの要素を切り捨てるかが序盤の鍵でしょうね。
個人的には、稼ぎにくいリソースである『お金』をどこで稼ぐのかが一つの焦点になると思います。
『アグリコラ』に飽きた方も、ワーカープレイスメント初心者の方も、ぜひ思い切って挑戦してみてください。
思わずハマってしまうほどの面白さ・奥深さはありますよ!

といったところで、今回のゲームはいかがだったでしょうか?
それではまた次の機会にお会いしましょう。

 

ライター紹介

松風志郎(まつかぜ しろう)
ゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」所属。
ゲームシナリオライターだけでなくゲームのシステムデザインなども手がける。
アナログゲームとの関わりは古く、幅広いジャンルをたしなむ。
世界観にとっぷりと入り込めるゲームが好き。

代表作
歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「萌え萌え2次大戦(略)」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「出撃!乙女達の戦場」シリーズ
恋愛アドベンチャーゲーム「はち恋」
その他多数。