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ボードゲームレビュー第263回「ヴィクトリアン・マスターマインド」

「ヴィクトリアン・マスターマインド」
作者:アントワーヌ・ボウザ/エリック・M・ラング 作
メーカー:グループSNE
プレイ人数:2~4人
対象年齢:14才以上
プレイ時間:約45~60分

 毎度どーも、ライターの松風です。
皆さん、スチームパンクはお好きですか?
異質に発展した蒸気文明というモチーフはどこか不気味さがありながら華やかさもあり、独特な魅力がある世界観ですよね。
以前ご紹介したゲームの中では『イマジナリウム』などが思い出されます。
ただ、夢の中の不条理感が前面に押し出されていた『イマジナリウム』と違って、今回取り上げるタイトルはもっと正統派(?)なスチームパンクです!
タイトルはズバリ『ヴィクトリアン・マスターマインド』!

 プレイヤーは国際的な犯罪組織を率いる悪漢(ヴィラン)となって、各国の科学者を誘拐して巨大メカを建造したり、都市を象徴するモニュメントを奪ったり、未知の超技術が記されたダヴィンチ文書を集めたりしながら世界征服を狙います。
ただし派手な犯罪を繰り返していると、当然ながら犯罪組織の足跡を追う秘密警察の捜査網は強化されてしまいます。
あくまでヴィランとしての活動は密やかに、エレガントに行っていきましょう。
最も悪の限りを尽くして世界を混乱の渦に叩き込んだプレイヤーこそが『機械世紀の犯罪王(ヴィクトリアン・マスターマインド)』と呼ばれるのに相応しいヴィランとなれるです!
とまぁ、こういうイントロダクションだけでもうワクワクしてきませんか?
ゲームのメカニズム的には変則的なワーカープレイスメントとなっております。
 では早速ゲームの中身を見ていきましょう。
まずは『中央ボード』と呼ばれるゲームボードを配置します。
ここにはゲームの舞台となる5つの都市と、それぞれに『エージェントタイル』や『ミッションカード』、『建造物コマ』等を置くスペースが描かれています。
セットアップでは『初期ミッションカード』と『建造物コマ』を所定の箇所に配置しておきます。

 『中央ボード』の上には『秘密警察ボード』が置かれます。
これはプレイヤーと敵対する秘密警察の捜査力を表していて、『秘密警察レベル』を表す針が最後の12のマスまで進行するのがゲーム終了条件の一つになっています。
針の初期位置はプレイ人数によって変動します。
それからプレイヤーは自分が担当する色を選んで、『火力マーカー』を1の所に置いておきます。
火力と『秘密警察レベル』の関係については後述します。

 次に、各プレイヤーは自分が担当する『マシーンシート』を選びます。
好きなものを選んでも構いませんし、ランダムに引くのもいいでしょう。
この『マシーンシート』がいわゆるプレイヤーボードになります。
 蜘蛛型歩行メカ! イルカ型飛行船! モグラ型ドリル戦車! タコ型潜航艇! 移動要塞! 空中戦艦! 等など、それぞれ違った形状とパワーが書かれています。
どれもロマンあふれるビックリドッキリメカなので、どのマシンを選ぶか迷ってしまいますよね。
そんな時はシートに書かれたマシーンのパワーで決めるのも良いかも知れません。

 シートを選んだら、『セグメントピース』と呼ばれるマシーンのパーツを表すタイルと、『科学者コマ』1個を受け取っておきましょう。
その他のトークン類はまとめて『中央ボード』脇にでも置いておきます。

 ではここからがゲームスタートです!
スタートプレイヤーは「最も邪悪に笑った者から」と決められているので、皆さん悪党らしい笑い方を研究しておきましょう!(笑)
 手番が来たらまず、自分が持つ『エージェントタイル』の山の一番上のタイルを取って、『中央ボード』の5つの都市のどれかに配置します。
この時、『エージェントタイル』は自分だけが確認して、所定の位置に裏向きに置きます。
もし他のプレイヤーの『エージェントタイル』が既に置かれていたら、その上にスタックして重ねます。

 さてこの『エージェントタイル』、1枚か2枚置かれている場合はそのまま次のプレイヤーに手番が移行します。
しかし、選ばれた都市に3枚の『エージェントタイル』が置かれたら、プレイを中断して手番プレイヤーがスタックを解決します!

 手番プレイヤーはまずスタックしてある3枚の『エージェントタイル』を丸ごと表向きにします。
つまり最初に置かれていたタイルが一番上に来る、というわけですね。
めくられた『エージェントタイル』はこの上から順に解決の処理を行っていきます。

 タイルの処理は2つ。
1.エージェントタイルの持ち主が都市に記されている『戦利品』を獲得する。
2.エージェントタイルの持ち主は置かれたタイルの能力を使用できる。
 順を追って説明しましょう。
『中央ボード』に描かれた各都市は、どういった『戦利品』が得られるか決まっています。
 ロンドン:『銅板』1個が得られます。
モスクワ:『秘密警察ボード』上で自分の火力を1上げられます。
ワシントン:『ボルト』1個が得られます。
パリ:『科学者コマ』1個が得られます。
ローマ:『ダヴィンチ文書トークン』1個が得られます。
 基本的にマシーンを完成に近づけたいのであれば、ロンドンで銅板を、ワシントンでボルトを獲得していくのが近道です。
銅板やボルトを得たら、『マシーンシート』上の好きな空きスロットに、対応する『資材トークン』を配置します。
マシーンの部位(セグメント)を構成する資材スロットがすべて埋まれば、見事セグメントが完成し『セグメントピース』を置くことが出来ます。
完成したセグメントからはこれ以降ずっと有効なボーナスが貰え、ゲームが有利になっていきますので、どんどんマシーンを完成させていきましょう。
マシーンの完成はゲーム終了条件でもありますので、最終的にはみんなこれを目指さなければいけないんですが、それだけやっててもこのゲームでは勝てません。

 パリで得られる『科学者コマ』は使い捨ての消費アイテムで、使う個数によって強力な効果を発揮してくれます。
最初は2人までしか獲得できませんが、マシーンのとあるセグメントを完成させることで4人までストックできるようになります。
科学者を各国から誘拐してきては使い捨ての道具として消費していく様は、正に悪の秘密結社っぽいですよね。
 また、ローマで得られる『ダヴィンチ文書トークン』は『混乱ポイント』(いわゆる勝利点)になります。
このトークンには1と2の面があって、最初は価値1の面でしか置けませんが、セグメントを完成させることで価値2の面で得られるようになるのです。
どのマシーンにも共通しているのですが、『ダヴィンチ文書トークン』を置ける『図書室』というスロットは10個しかありません。
つまり価値2で稼ぎたかったら、そのセグメントの完成を急がなければならないわけですね。
『ダヴィンチ文書トークン』を集めるメリットはもう一つあって、ダヴィンチ文書を5個集めた段階で自分の手番に置く『エージェントタイル』を、山の一番上からでなく自由に選べるようになるのです!
詳細は後述しますが、これは結構大きいメリットですよ!

 さて、『エージェントタイル』に書かれたエージェントにはそれぞれ固有の能力が持たされています。
それをちょっとご説明いたしましょう。

 No.2:都市の戦利品をもう一個得られます。単純ですがテッパンとも言える強力な能力です。
 手下:その都市にある『ミッションカード』を達成できます。カードに書かれた条件を達成していたら報酬がもらえます。
 工作員:1つ下にスタックされている『エージェントタイル』の能力を妨害します。ただし自分のエージェントであれば妨害は起こりません。
 砲手:火力が足りていれば、置かれた都市の建造物を強奪できます。ただし派手に活動することになるので『秘密警察レベル』が上がってしまいます。
 エンジニア:『機関室』に書かれたマシーンの固有パワーを使えます。もし対応するセグメントを完成させていれば追加のボーナスパワーも同時に使用できます。
 基本的には自分を有利にする能力ばかりなんですが、たった一つ、工作員の能力があるおかげで他人のエージェントが置かれた都市に後から置くのにリスクが発生してしまうのが悩みどころになります。
一応能力を封じられても都市の『戦利品』は得られるのですが、エージェントの活躍するせっかくのチャンスを潰されるのは悔しいですよね。
これがいいジレンマになってプレイに緊張感を与えてくれます。

 砲手で得られる『建造物』には、『工場』『溶鉱炉』『大学』『モニュメント』の4種類があります。
どれもゲーム終了時には2点の『混乱ポイント』になりますが、『工場』ならボルト1個、『溶鉱炉』なら銅板1個、『大学』なら『科学者』1個がおまけでもらえます。
『モニュメント』は『混乱トークン』1個がもらえますが、これは最終的に『混乱ポイント』2点になるので、『モニュメント』1個強奪すれば実質4点分のポイントになる計算になります。
ただし、砲手が活躍できるのは自分の火力が『秘密警察レベル』を上回っている時だけ!
つまり建造物で稼ぎたいなら、まめにモスクワにエージェントを送り込む必要があるってことですし、それを見越して工作員が配置される可能性もあるわけです。

 3枚あるエージェント能力の処理が終わったら、『エージェントタイル』はそれぞれの持ち主に返還されタイルの捨て場に置かれます。
捨て場に置かれた『エージェントタイル』は、今あるエージェントの山が尽きないとリシャッフルされません。
つまり一度使えば再使用できるまでにタイムラグが発生するわけですね。
ここもこのゲームの悩ましいポイントになることでしょう!

 ゲームの勝利点である『混乱ポイント』を稼ぐには、『建造物』『ミッションカード』『ダヴィンチ文書』の3つのルートが有るのが見えてきましたね。
また、マシーンのパーツにもポイントが付いているものがあるので、これの完成を目指すのも重要です。
おそらくゲームに慣れないうちはあれもこれもと手を出すよりも、どれか2つくらいに絞って、そこに有利になれるセグメントを完成させていくと良いでしょう。
そうしないとエージェントがうまく回らなくなるゲームバランスになっているように感じました。
 いずれかのプレイヤーがマシーンの全てのセグメントを完成させるか、『秘密警察レベル』が最大の12になってしまうかすると、全員が最終ラウンドを行ってゲームは終了します。
そして都市に残った『エージェントタイル』を順に解決したら、最終得点計算を行います。
最も多くの『混乱ポイント』を持っていたプレイヤーこそ、邪悪な機械世紀を支配する輝かしき犯罪王、ヴィクトリアン・マスターマインドです!

 基本は都市にエージェントを配置していくワーカープレイスメントでありながら、その能力が一見して分からないというトリッキーさがこのゲームの魅力ですね!
『エージェントタイル』の配置にはプレイヤーの個性が出やすく、そこをどう読み切るか、といった駆け引きがとてもアツくなるでしょう。
ロマンしかない各マシーンや、ボードに描かれたメーター、しっかりした立体の『建造物』コマなど、コンポーネントの雰囲気作りもばっちり決まっています。
スチームパンクでピカレスクなノリがお好きなら、文句なくオススメできるタイトルと言えます!
見た目に反してルールはさほど重くなく、慣れればさっくりとプレイできるのも良いポイントですよ!
ぜひヴィランになりきって、世界を股にかけた暗躍(という名のパワープレイ)を楽しんでみてください。
 ところで、イントロダクションのストーリー上で行方不明のシャーロック・ホームズ氏は一体どこでどうしているんでしょうね?(笑)
 といったところで、今回のゲームはいかがだったでしょうか?
それではまた次の機会にお会いしましょう。
ライター紹介
松風志郎(まつかぜ しろう)
ゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」所属。
ゲームシナリオライターだけでなくゲームのシステムデザインなども手がける。
アナログゲームとの関わりは古く、幅広いジャンルをたしなむ。
世界観にとっぷりと入り込めるゲームが好き。
代表作
歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「萌え萌え2次大戦(略)」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「出撃!乙女達の戦場」シリーズ
恋愛アドベンチャーゲーム「はち恋」
その他多数。