ボードゲームレビュー第27回「サルガッソーからの脱出」

saru01

「サルガッソーからの脱出」
メーカー:ジャイアントホビー
作者:KTR
プレイ人数:2~6人
対象年齢:10歳以上
プレイ時間:約30分


 

 どうも、ゲーム大好きライトノベル作家の番棚葵です。
 今回は古き良きスペースオペラの空気ただようゲーム、「サルガッソーからの脱出」をレビューしたいと思います。
 
 このゲームの設定をざっくり説明すると、人類も宇宙人も混在するはるか未来のお話で、プレイヤーたちは宇宙を股にかける運び屋「スターダスト運送」に所属しています。
 宇宙船「ナイトクラーケン号」を駆り、毎度毎度ドタバタ運行をしていると、ある日危険な仕事が舞い込んできました。

 今回のお荷物は訳ありそげな女の子?!
 なんとお忍びで旅行中のお姫様だって!!(説明書より)

 おお、これは王道のシチュエーション! 姫様を守るクルーたちの、大活劇が見込める設定です!
 敵は宇宙海賊でしょうか? それとも、どこかのマフィア? もしくは王家の中でも姫と争う派閥の人間でしょうか。ともあれ、宇宙の星々を舞台にした大冒険が始まることは間違いありません。
 わくわくしながらゲームのボードを展開すると、そこには「マップで区切られた宇宙船」の姿が。
「んー?」と首を傾げながら説明書を読み進めていくと、「ナイトクラーケン号」のゲームでの状況について書かれてありました。

 こともあろうか宇宙の墓場と称される危険宙域「サルガッソー」に迷い込んでしまったのである。
 次々と起こる船内トラブル。
 目の前に迫りくる小惑星。
 船の外にはへんてこ宇宙海藻。
 はたして5人のクルーとおてんばプリンセスを乗せた「ナイトクラーケン号」は、無事サルガッソーを脱出できるのだろうか?!
 ハラハラドキドキの脱出劇が今、幕を開ける!! (説明書より)

 姫様のお忍び設定関係ないじゃん!!!!!
 思わず虚空に裏手ツッコミを入れてしまいましたが、よくよく考えてみればタイトルが「サルガッソーからの脱出」なので、姫様関係ないのは当然のことですね。
 それよりも、船内トラブル、小惑星、宇宙海藻といった危機感溢れる単語に心惹かれます。
 この苦難をプレイヤーの力量でどう乗り越えるのか。
 まさに「宇宙の男」としての技量を、プレイヤーたちは今問われようとしているのです。

saru02

 さて、このゲーム。いわゆる「協力ゲーム」というもので、プレイヤー同士で得点などを争うのではなく、互いに協力することでゲームを進めていきます。
 ここでわりと誤解されがちなのが、「協力ゲームはプレイヤー同士力を合わせられるから、普通のゲームより簡単なんじゃないか」ということです。
 正確には「プレイヤー同士が力を合わせなければクリアできないほどの難易度を誇るのが協力ゲーム」であり、この手のゲームはシステム自体が何の躊躇もなくプレイヤーの抹殺にかかってきます。
「サルガッソーからの脱出」もそのご多分にもれず、基本的には「観測ゲージ」と「脱出ゲージ」という二つのゲージを上昇させ、サルガッソーから脱出するのが目的となるのですが、その他にもゲーム上における「条件」があります。
 その条件というのが、主にプレイヤーたちの敗北に関わるもので、いくつかあげますと、

・クルーが一人でも死んだらゲームオーバー
・酸素室が破壊されて酸素が尽きてしまったらゲームオーバー
・小惑星が落ちてきて船体に衝突したらゲームオーバー
・宇宙船に宇宙海藻が一定以上からまったらゲームオーバー

 見事なまでのデス・トラップの嵐!
 ポップな口調で語られる、ほのぼのとしたスペオペ風の設定など、意にも介さないジェノサイダーっぷりです。
 ただし、ゲームシステムがよくできていて、これらデス・トラップはゲーム後半にならないと滅多に起きません。
 それというのも、ルールではプレイヤーの手番ごとにダイスを振ってアクシデントを決定、このダイスの目が高いほど悲惨なアクシデントが起きることになっているのですが、「観測ゲージ」「脱出ゲージ」が低いうちは、「ダイスを二個振って低い方を採用する」という良心的な措置が取られているからです。
 これがどちらかのゲージが上昇するにつれ、「ダイス一個を振った目をそのまま採用する」→「ダイスを二個振って高い方を採用する」と変化していき、アクシデントの発生率はどんどん高くなっていきます。
 つまり後半の方では、プレイヤーの手番ごとに小惑星が近づき、海藻が絡まり、酸素室は爆発を起こしと、スリル満点すぎる展開を楽しむことができるのです。
(もちろん、プレイヤーのダイス運が悪ければ、前半からスリル満点すぎる展開を楽しめます)

saru03

 このゲームの基本的な進め方は、宇宙船の部屋を修理しながら、観測室で観測ゲージを上げつつ、操縦室で脱出ゲージを上げるというものになります。
 このどの活動にも「判定」というものが必要で、これはダイスを振って行います。
 ゲーム開始時、プレイヤーはキャラクターシートをランダムに引くのですが、そこに書かれているキャラクターの能力にあわせて判定を行うことができるのです。
 全六種類のキャラクターにはそれぞれ特殊能力が決められていて、実に個性豊か。
 しかしこの中に「プリンセス」を見つけ、お忍び旅行中のお姫様は、扱いとしてはクルーの一人に過ぎないということに少しショックを受けます。
 というか、姫様は割と使いづらいキャラクターなので、できれば引きたくありません。キーキャラクターというより、お荷物扱いになっています。
 思わず脳裏に「冷たい方程式」という単語が流れますが、そこはぐっとこらえるべきでしょうか。
 なお、宇宙船の内部にある部屋はいずれもが大事であり、どこか一つが破壊されたらゲーム進行に支障が出るほどの重要性を持っています。
 これらがアクシデントにより、かなりの確率でドカンドカンと爆発していきますが、修理すれば何ごともなかったかのように使うことが可能ですので、定期的かつ効率的に修理していきましょう。
 その他、宇宙船の外にある海藻を掃除したり、迫り来る小惑星は一個ずつ(恐ろしいことに同時に二個以上襲いかかってくる可能性もあります!)回避したりと、やらなければならないことは山ほどあり、クルーがいくらいても足りないほどです。
 これらの難関を強引にでも突破できるように、キャラクターは判定を振り直したり、ダイスを増加したり、一部屋しか移動できないところを二部屋移動したりする「スペシャルアクション」も行えます。。
 が、この「スペシャルアクション」には「体力」を消費する必要があり、「体力」が0以下になるとそのキャラクターは死亡、つまりゲームオーバーとなってしまいますので、いつでもほいほいと使うわけにはいきません。
 かくして、力任せにその場その場で対処するのではなく、起きうるアクシデントに対してある程度の予測を立てつつキャラクターを的確な部屋に配置し、行動させる必要が出てくるのです。

「お前の『キャプテン』なら、船外活動の能力も高いだろ! 宇宙海藻を掃除してきてくれ!」
「いや、それより先に近づいてくる小惑星を避けなければいけないだろ。海藻は後回しだ!」
「小惑星は『ニヒル』の自分で回避する、やっぱり海藻掃除に行ってくれ! 体力があまってるお前が一番、除去できる確率が高いんだ!」
「おい、それより、酸素室の修理は誰がやるんだよ? もう酸素の残りカウント2しかないぞ!」

 こんな感じで右へ左への大パニック状態。
 くどいようですが、この状態で初期の「おてんば姫のお忍び旅行」設定なんて覚えている人はいません。
 そして、危険をすり抜け、体力を消耗し、行き着く先はサルガッソーからの脱出!
 ――できればいいのですが、これがなかなか難しい。
 個人的なクリア確率は10%にも満たず、自分たちがサルガッソーの一部になる可能性が高いです。
 だからこそ、クリアした時の喜びと、仲間全員と味わう一体感はひとしおなわけですが。
 
saru04

 このゲームの最大の特徴は、とにかく「ハチャメチャで楽しい」こと。
 迫り来る危機に、それを回避するスリル。これを常に味わうことができます。
 いつしかアクシデントを振るダイスに祈りをこめて、見事「何も起きない」状態を引いたら、全員でスタンディングオベーションということも珍しくありません。
 また、上で紹介したデス・トラップの数々も、その発動までに予測がつきますので、対処方法を考えるのが面白さの一つとなっています。
 どのキャラクターをどこに配置すれば、どういうふうに危機を乗り越えられるのか。
 この予測がすいすいと立てられるようになった時、あなたとその仲間たちは英雄的な宇宙の運び屋として、その名を馳せることができるでしょう。 

saru05

ライター紹介

番棚葵(ばんだな あおい)
 ライトノベル作家。
 同人サークル「冒険者の館」でゲームも制作。
 古今東西問わずアナログゲームが好き。
 ボードゲーム、カードゲーム、TRPGなど様々なジャンルのゲームをたしなむ。

代表作
・ライトノベル
「生徒会ばーさす!」
「Dソード・オブ・レジェンド」
「神をしめなわっ!」他
(集英社スーパーダッシュ文庫より)
・ノベライズ
「カードファイト! ヴァンガード」
(角川つばさ文庫より)
・ゲーム
「メイガス」
(同人ゲーム)