ボードゲームレビュー第32回「ギルドマスター」

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ギルドマスター
メーカー:アークライト
作者:ホープ・S・ファン

プレイ人数:2~4人
対象年齢:12歳以上
プレイ時間:約30分

 


 

 どうも、ゲーム大好きライトノベル作家の番棚葵です。
 今回は二~四人で遊べる対戦型カードゲーム「ギルドマスター」をレビューしたいと思います。
 
 進歩! それこそが暗黒時代に必要なものです……即断即決で行動する人物が、こんな豚一頭しかいない街で暮らすのはもうたくさん。
 すべてを変えてやりましょう。あなたは集会所を建て、共に働く同志を、ヨーロッパ中に広く募りました。(日本語訳本文より)

 田舎町の町人Aから、いきなりヨーロッパ中にコネクションを持つことができるとは大した行動力ですが、もっとすごいのはこの舞台は恐らく中世だということ(※フレーバーからの推測)。
 インターネットもない時代に、こつこつと膨大な人脈を築き上げた彼らに幸あれ。というか、我々プレイヤーのことらしいのですが。
 ともあれ、この行動力に富んだ人たち(プレイヤー)は、「ライバルに先んじてことを運ばなければならない」と考えたらしく(これも本文より)、組合を完成させて交易を確立させ、経済を安定させる競争に走ったのです。
 希代の実業家がそろい踏みしているのだから、力を合わせてヨーロッパをより豊かにしてはどうか。
 いえいえ、すべては競争主義があってこそ成り立つというもの。血で血を洗う、対戦型ギルド経営ゲームの始まり始まりなのです。
  

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 とはいえこのゲーム、実は細かく資産コストを管理するような面倒くさいゲームではありません。
 基本ルールは実に簡単で、「同じ職人カードを五色集めてギルドを作る」というものです。
 このゲームには、「暗殺者」「農家」「歴史家」「商人」「踊り子」「機織り」という六つの職人カードが存在し、それぞれ「赤」「青」「紫」「緑」「黄」の五色に分けられています。
 この職人カードを一種類、五色ぶん集めれば(例えば「歴史家」なら「赤、青、紫、黄、緑の歴史家一枚ずつ、計五枚」を集める)その職人カードの列は裏返り、「ギルド」として成立します。
 その「成立したギルド」を一定数支払うことで、場の中央にある任務カードを取得することが可能。
 この任務カードには点数が書いてあり、点数の合計が最初に20以上になったプレイヤーが勝利者となるのです。
 ね、シンプルでしょう?
 それなのにこのゲームは、とても絶妙なゲームバランスの上に成立していて、プレイヤー同士が常に一喜一憂しながら、ドキドキハラハラ行く末を見守ることになります。
 その理由は……ここまで書けば、大体察した人もいるのではないかと思うのですが、一重にプレイヤーが集める職人カードのせいであり、これらが持つ能力がすべての原因です。

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 六つの職人カードには能力が備わっており、手札から自分の場(集会所と呼びます)に出すことでその能力を発揮できます。
 能力がない職人カードなど存在せず、どの能力もゲーム進行に影響を与えるというか、この能力がゲームのバランスを決定するすべてですので、どれも漏れなく強力な効果を持っています。
 例えば「暗殺者」は他のプレイヤーが集会所に置いている職人カードを一枚選んで捨て札にできます。
 いきなり他人のカードに介入できるばかりか、特定のカードを集めるのが目的のゲームでそれを捨てるなんて乱暴もいいところですが、残念ながらこのカードを使うのに何のデメリットも存在しません。
 つまり、どれだけ「暗殺者」を使っても合法なわけで、泣き寝入りするよりは、目には目、歯には歯の精神で、自分も「暗殺者」を使って他プレイヤーの職人カードをキルしていくのが建設的でしょう。
 また、他の職人カードの能力も、それぞれ個性的なものばかり。
 自分の集会所の職人カードと他プレイヤーの集会所の職人カードを交換する「商人」。
 特定の数を集めると自動的に点数をもらえる「農家」。
 手数と手札を増やしてくれる「踊り子」。
 捨て札からカードを回収して集会場に置ける「歴史家」。
 手札からさらにカードを集会場に置くことができる「機織り」。
 どの職人カードも特に対価やデメリットを必要とせず、手軽に発動してくれます。
 一手番で行えるアクションは手札の補充も含めて二回ですので、いかに上手に職人カードの能力を発揮するかで、ゲームの進行速度は変化します。
 集会所に置いてあるカードの枚数によっては、さらに高レベルの能力も使えるので、能力によるゲームメイクの浸食率は留まることを知りません。
 そして、「暗殺者」「商人」は他プレイヤーのプレイに直接影響する割に使い勝手がいいので、結果として……商業の革命のためには、多少の流血もやむなしといったところでしょうか。

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 かように他者への妨害ばかりで、ぎすぎすしそうなこのゲームですが、さにあらず。
 この能力のインフレを、一つのルールがまるっと綺麗に治めています。
 それは「ギルドとして成立したら、そのカードには能力が効かないこと」。
 五色五枚集めれば自動的に職人カードは「成立したギルド」となり、任務カードを取得するためのコストとなります。
 この「成立したギルド」には能力が通用しないので、プレイヤーも積極的に妨害用の職人カードを取るだけでは、ゲームに勝利できないことに気づくはずです。
 そして任務カードを集めることで点数が手に入るのですから(「農家」の能力でも点数をもらえますが、任務カードのそれに比べれば微々たるものです)、このゲームはさっさとギルドを成立させてコストを作るのが一番かしこいプレイスタイルと言えます。
 ここで「歴史家」や「機織り」が真価を発揮します。これらは一枚よぶんに「カードを置くことができる」能力を持つので、一気にギルドを成立させてしまうことも可能なのです。
 それに加えて、手札を増やしてくれる「踊り子」、細かい点数を詰めて20点への道を築いてくれる「農家」も捨てがたく、すべてのカードが抜群のバランスで存在し、ゲームを盛り上げてくれるのです。

 このゲームではさらに、任務カードにも能力を持つものがあって、プレイヤーたちに様々な選択肢を与えてくれます。
 他者を妨害に走ってもよし、他者の妨害を華麗にかわしてギルドを成立させてもよし。
 手札の状況によって、多彩な戦術を考えることができるのが特徴であり、醍醐味なのです。
 そして見事最初の勝利者となった快感といったら……筆舌に尽くすものがあります。
 機会があれば、ぜひ一度遊んでみてください。
 組織をまとめ上げ経済を動かすとは、かくも大変なものなのだなぁ、としみじみ実感できますよ。 

 

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ライター紹介

番棚葵(ばんだな あおい)
 ライトノベル作家。
 同人サークル「冒険者の館」でゲームも制作。
 古今東西問わずアナログゲームが好き。
 ボードゲーム、カードゲーム、TRPGなど様々なジャンルのゲームをたしなむ。

代表作
・ライトノベル
「生徒会ばーさす!」
「Dソード・オブ・レジェンド」
「神をしめなわっ!」他
(集英社スーパーダッシュ文庫より)
・ノベライズ
「カードファイト! ヴァンガード」
(角川つばさ文庫より)
・ゲーム
「メイガス」
(同人ゲーム)