ボードゲームレビュー第39回「アブルクセン」

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「アブルクセン」(原題:Abluxxen)
 発売元:ラベンスバーガー/日本語翻訳:メビウスゲームズ
 作者:ウォルフガング・クラマー/ミヒャエル・キースリング(代表作:勝利への道)
 プレイ人数:2~5人
 対象年齢:10歳以上
 プレイ時間:20分

 


 

 どうも、ゲーム大好きライトノベル作家の番棚葵です。
 今回は「6ニムト」やその他様々なテーブルゲームを世に送り出したW.クラマーの新作カードゲーム、「アブルクセン」を紹介いたします。

 このゲームの最大の特徴は、とにかくシンプルであること。ルールは簡単かつ、カードの構成も単純で、初心者でも気軽に手を出すことができます。
 それでいてルールに内包されている数々のアイデアが、決してプレイヤーを飽きさせないゲーム感覚を提供しており、かなりの時間楽しむことが可能です。
 その力量のほどは、オーストリアゲーム賞2014の大賞に選ばれたことからも明らか。
 芸術の域にすら感じるほど、余計な贅肉はこそげ落とし、バランスをシェイプアップしたゲームなのです。
   

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 先ほども述べましたが、このゲームのルールはいたってシンプル。
「同じ数字の書かれたカードを1枚以上出していく」ことで進行していきます。
 最終的に手札をすべて出しきったプレイヤーが勝利なのですが、ゲームである以上簡単にことは進みません。
 なぜならこのゲームには、他人のカードに干渉する「攻撃」という要素があるからです。
 この「攻撃」、自分が出したカードと同数のカードが他プレイヤーの場に存在する場合、その数字を比べてカードを出したプレイヤーの数字未満であるなら、比較対象となった他プレイヤーのカードは「どうにかされてしまう」というもの。
「どうにかされる」とか、えらくもにょもにょした言い方になりましたが、これはカードの処理の仕方に、複数の選択肢が存在するためです。
 まず、カードを出したプレイヤー(攻撃側)は、まず攻撃の対象となったカードを、自分のものにするかしないかを決定します。この時、カードが略奪された場合、攻撃を受けたプレイヤーは場の中央に並べられたカードから、略奪されたカードの枚数分カードを手札に補充します。
 攻撃側がカードを略奪しない場合、攻撃されたプレイヤーは攻撃の対象となったカードを手札に戻すか、捨ててから場の中央に並べられたカードから捨てた分だけ補充するかを決めます。
 つまり、三通りの選択肢が存在するわけで、これがこのゲームの戦略性を深めています。
 注目したいのは、攻撃を受けた側は必ず攻撃を受けたカードの枚数分、手札が増えるということ。手札を捨てていかなければならないこのゲームで、このペナルティはダイレクトに響きます。
 普通に考えていけば、攻撃を受ければ受けるほど手札は減少が遅くなり、攻撃側が一方的に有利な展開になるはずです。

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 そんな一方的なゲーム展開を突き崩し、絶妙な加減でバランスを取ってくれるのが、場の中央に並べられたカードです。
 これらは山札から一定枚数置かれ、公開されるのですが、これを狙って取ることで攻撃を受けたプレイヤーにも逆転のチャンスが舞い降りるのです。
 簡単に言うと、このゲームは攻撃の性質上、数字の大きいカードの方が有利となります。
 この数字が大きいカードが中央に並べられているとすれば、攻撃されたプレイヤーも喜んでそれを取るでしょう。そして自分の手番で改めて攻撃してやればいいわけです。
 また、このゲームは同じ数字であれば複数枚同時に出すことが可能です。
 せっせと同じ数字のカードを集め、ゲーム終盤辺りで一気に放出して手札を大量に消費すれば、一発逆転も可能となってきます。
 つまり、手札を整えてカードを上手に出すことが重要となるので、攻撃を受けて多少の手札が増えたところで大して気にならない、むしろチャンスが増えたと考えることもできるのです。
 もっとも、手札を整えることに集中しすぎると、他のプレイヤーがいつの間にか上がってしまったということも少なくはないので、状況に応じての判断力が必要となってくるのですが。

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 攻撃は条件を満たした対象がいれば、複数でも「必ず」発生します。
 自分の本意でなく相手を攻撃してしまうこともあるので――先ほども述べましたが、攻撃を受けることは手札を調整するチャンスなのです――そこからゲーム展開が変わっていくこともあります。
 もちろん、虎の子のカードで全員を攻撃し、手札を増やすことで牽制することも可能。
「同じ数字のカードを揃えて場に出す」という単純なアクションから、これだけの戦略を生み出してしまうアイデアはまさに秀逸!
 ゲームに慣れている人から、初心者でこれから始めようかなという人まで、幅広く楽しむことができる、まさにオールマイティなカードゲームなのです。
 皆さんも一度プレイしてみて、その懐の深さに触れてみてください。
 カードゲームの醍醐味ってこういうところにあるよな、と感動すること請け合いですよ~。

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ライター紹介

番棚葵(ばんだな あおい)
 ライトノベル作家。
 同人サークル「冒険者の館」でゲームも制作。
 古今東西問わずアナログゲームが好き。
 ボードゲーム、カードゲーム、TRPGなど様々なジャンルのゲームをたしなむ。

代表作
・ライトノベル
「生徒会ばーさす!」
「Dソード・オブ・レジェンド」
「神をしめなわっ!」他
(集英社スーパーダッシュ文庫より)
・ノベライズ
「カードファイト! ヴァンガード」
(角川つばさ文庫より)
・ゲーム
「メイガス」
(同人ゲーム)