ボードゲームレビュー第40回「ワンス・アポン・ア・タイム」

ワンス・アポン・ア・タイム
発売元:ホビーベース
作者:リチャード・ランバート/アンドリュー・リルストーン/ジェイムズ・ウォリス
プレイ人数:2~6人
プレイ時間:20~40分


 

毎度どうも、お久しぶりです。松風です。
もうすっかり梅雨の時期となりまして、雨が降る度に外出が億劫になったりもするものです。
(追記:収録時期は6月中旬でした)
というわけで、お家でボードゲームするチャンスも増えてまいりましたね。

今回ご紹介するのは『ワンス・アポン・ア・タイム』というゲーム。
一部では名作との評価も高い、このジャンルの定番とも言えるゲームだったのですが、今まで日本語化の機会に恵まれていませんでした。
それがこの度、ついに日本語版が出た! という訳でご紹介する運びとなりました。

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では、これは一体どんなゲームなのかと申しますと、端的に言えばカードを使ってプレイヤーみんなで物語を紡いでいくゲームです。
ストーリーテリングゲームなどとも言いますが、必要なのは数枚のカードと想像力。
それが全てと言っても過言ではないでしょう。

コンポーネントには『物語カード』と『結末カード』と呼ばれるカードが二種類。
物語カードには『割り込みカード』という特殊なカードもありますので、厳密に言うなら三種類ということになりますね。
各プレイヤーには、結末カード1枚と、物語カードが数枚(人数によって変わります)配られます。
そして『語り部』となったスタートプレイヤーから物語を語っていくのです。

語り部は自分の語ったお話の中に、手札の物語カードに書かれた単語をうまく登場させられたら、カードを公開します。
例えば、『兄弟・姉妹』のカードを使うなら、「むかしむかしあるところに二人の兄弟がいました」などと言いながらカードを場に出すのです。
ただし、一つの文章の中では一枚のカードしか出せません。
先ほどの例ですと、「むかしむかしあるところに二人の美しい姉妹がおりました」と言って『兄弟・姉妹』のカードと『美しい』というカード二枚を同時に出すことは出来ないのです。
「むかしむかしあるところに二人の姉妹がおりました。彼女たちは大層美しく、国中の評判になるほどでした」という形でなら、それぞれのカードを出してもOKです。

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こうしてどんどん物語カードに則したお話を作っていき、全ての手札がなくなった状態で、うまく自分の持っている結末カードに書かれた結末に繋げられたら勝ちです。
しかし面白いのは、この物語が全員参加だという事。
つまり勝利者は一人!
他のプレイヤーは、どこかで語り部の物語に割り込んで、自分の物語を語り始めなければいけません。
この時に起こせる割り込みという行動にはいくつかの決まりがあります。

普通の物語カードで割り込む場合、自分が持っている物語カードの単語を語り部が口にした時、そのカードを切ることで話に割り込む事ができます。
例えば、自分の手札の中に『壺』というカードがある時、語り部が壺の話を物語に出したら、そこに壺のカードを出して割り込める、という事です。
しかし、これはそうなかなか機会が巡ってくるものではありません。
そこで、もうちょっと成功しやすい『割り込みカード』の出番です。

物語カードと割り込みカードには、それぞれ『じんぶつ』『もの』『ばしょ』『ようす』『できごと』の五種類の『物語要素』がアイコン付きで描かれています。
語り部が物語カードを出した時、同じ物語要素が描かれた割り込みカードを使えば、すぐに割り込んで話を引き継げます。
この時、出した割り込みカードの物語要素は使いません。
単に割り込むためのカードとして機能するのです。
つまり、割り込みカードは、語り部が出したカードとアイコンが合ってさえいれば強引に主導権を奪えるカードというわけですね。
ちなみに割り込みカードは普通に物語カードとしても使用できますので、自分の語るストーリーに使ってもいいですし、物語カードと同じ割り込み方にも使えます。

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さて、ここまで来て、物語を語るって難しそうと思った方もおられるでしょう。
しかし、大丈夫。頭から終わりまで破綻のないストーリーを作る必要はないのです。
コツとしては、カードを出す時、ただそのカードに書かれた物語要素を述べるのではなく、少し脚色して話すことです。
『少女』というカードを使う時に、美しいとか幼いとかみすぼらしいとか、何か要素をくっつけるだけで、その後の展開はずいぶんはっきりしてくると思います。
『森』というカードなら、広いとか暗いとか、どんな森なのか描写しておくと、参加者もイメージを共有しやすくなって、物語が豊かになっていくことでしょう。
150種類以上ある物語カードには「少年」や「魔女」といった分かりやすい単語をはじめとして、『悲しい』とか『時が経つ』とか様々な言葉が書かれています。
はじめはその組み合わせの膨大さに圧倒されるかもしれませんが、一人だけで物語を作るのではないと思えば気も楽になりますよね。
あとはしっかりとオチをつける準備をしておけば大体OKです。

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まぁ、そうは言っても即興で物語を考えるのは割としんどいもの。
話してる最中に語り部が「今、何についてしゃべってたっけ?」なんて事もよくあります。
そこで、他のプレイヤーは語り部があまりに話を引き延ばしていたり、矛盾だらけの展開にしたり、なかなか次の言葉が出てこなくなったりしたときに、異議を唱えて中断させる事もできます。
異議が他のプレイヤーたちにも認められると、語り部は山札から1枚物語カードを取って手札に加えた上で、左隣りのプレイヤーにバトンタッチしなくてはなりません。
ですが、こうしたペナルティはあまり厳密に適用していると話が進まなくなって場の雰囲気も悪くなりますので、おおらかに裁定していくのがいいでしょう。

このゲームに必要な思考パターンは、通常の競技ゲームや協力ゲームとは違います。
各プレイヤーは自分の持っている結末に少しでも近づけようと、物語を修正してきます。
一応、勝利者を決めるゲームではありますが、明確なルールの元にリソースを駆使しつつ勝利を目指す、といったタイプのゲームではありません。
それゆえに確固とした勝ち筋もなく、ゲームの流れは参加者の資質に左右されやすいです。
ですが、セオリーに縛られない千変万化する物語は、上手くはまれば大きな達成感と感動をもたらしてくれるでしょう。
たくさんある物語カードは、簡単には遊び尽くせないほどのバリエーションを語り部たちに与えてくれます。

こういったゲームは、苦手な人はとことん苦手だと思われますが、演劇やTRPGに慣れた方には馴染みやすいかもしれません。
ヒリヒリとしたリソースマネジメントゲームも楽しいものですが、こういったゲームもまた趣深いものです。
お茶会でもしながらゆるゆるとおとぎ話を紡ぐ、そんな優雅なプレイスタイルで楽しんでみてはいかがでしょうか。

さて、今回のゲームはいかがだったでしょうか。
ではまた次回、お会いしましょう。

 

ライター紹介

松風志郎(まつかぜ しろう)
 ゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」所属。
 ゲームシナリオライターだけでなくゲームのシステムデザインなども手がける。
 アナログゲームとの関わりは古く、幅広いジャンルをたしなむ。
 世界観にとっぷりと入り込めるゲームが好き。

代表作
 歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ
 大戦シミュレーションゲーム「萌え萌え2次大戦(略)」シリーズ
 大戦シミュレーションゲーム「出撃!乙女達の戦場」シリーズ
 恋愛アドベンチャーゲーム「はち恋」
 その他多数。