ボードゲームレビュー第43回「ぱんつぁー・ふぉー!」

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「戦車道ボードゲーム ぱんつぁー・ふぉー!」
発売元:国際通信社
作者:堀場 亙
プレイ人数:2人用


 

「五十鈴殿! 五十鈴殿ぉ!
 『ぱんつぁー・ふぉー!』をお付き合い頂けませんか?
 戦車道全国高校生大会を再現した、戦車道ボードゲームであります!
 わたしが手取り足取りお教えしますから!」

 秋山優花里さんの熱心なお誘いに、快諾する五十鈴華さん。
 かくて二人はご飯食べ放題を賭け、盤上の戦車戦に挑むのでした。

 皆様、初めまして。もしくはお久し振りです。
 ゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」代表の綺月と申します。

 今回は麗しの大和撫子が戦車戦を嗜みとするアニメ「ガールズ&パンツァー」を原作にした、戦車戦シミュレーションゲーム「ぱんつぁー・ふぉー!」をご紹介します。
 「ガールズ&パンツァー」は戦車と女子高生という異色の組み合わせながら、スポーツとして戦車戦をしっかり設定して考証している作品で、ミリタリーファンをうならせつつも、より多くのアニメファンを楽しませた大人気作品です。
 そのコラボレーションはマンガ、小説、劇場アニメ、テレビゲームのみならず、舞台となった茨城県大洗町の応援・協力など、幅広い知名度を獲得しています。

 そんな「ガールズ&パンツァー」をボードゲーム化したのが、日本のウォー・シミュレーションゲーム界の老舗、国際通信社です。
 海外ウォー・シミュレーションの翻訳から専門誌発行、オリジナルのゲーム作品の発売を手がけて30年、信頼と実績のメーカーさんです。
 国際通信社さんが豊富な知識と経験を生かしつつ、「ガールズ&パンツァー」の徹底した作り込みと、それでいて幅広い視聴者を楽しませた方針までも追求したのが「ぱんつぁー・ふぉー!」なのです。

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 なので「シミュレーション」という言葉に、身構える必要はありません。
 皆さんが普段遊ばれているボードゲームやカードゲームと同じ感覚で、しっかりと遊べるゲームなのです。

 しかもゲームのルールは「ガールズ&パンツァー」の魅力的なお嬢さん方、秋山優花里さんと五十鈴華さんのアニメ本編を彷彿とさせる賑やかな実演解説が付属DVDを視聴するのが一番!
 「ぱんつぁー・ふぉー!」公式HPでも3分のダイジェスト解説が視聴できますし、それでばっちりとルールが分かる、親切簡単設計。
 実際のプレイも、思ってるよりお手軽です。

 まずプレイヤーは2人です。ルールブックに書かれたシナリオを相談して決め、自分の指揮する学校を選んだ後、それに書かれたマップと、戦車とキャラクターのマーカー、シナリオカードを用意します。

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 次に各プレイヤーはシナリオに指定されたとおりに、マップのヘクス(マス)へ、自校の戦車とキャラクターのコマを置きます。

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 そしてアクション、イベント、リアクション、強制、の各カードに、選んだシナリオカードを加えて良くシャッフルし、山札を作ります。

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 最後に各プレイヤーは山札からカードを5枚引きます。もし強制カードを引いた場合は捨て札にして下さい。そして手札が5枚になるようにして下さい。
 なんと準備は、これだけです。

 そして先行プレイヤーから、ゲームを開始します。各プレイヤーは以下の手番を交互に行います。
 まずドローフェイズ。山札からカードを1枚引いて、手札に加えます。もし強制カードを引いた場合、ここで公開してその通りにします。

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 次にアクションフェイズ。手札からアクションカードを1枚使えます。本作では戦車の移動や射撃、その他の行動も全てカードを使って行うのです! そしてパスも可能。なので手札のカードとマップ上のマーカーを見れば、この手番にできる行動とその修正は一目瞭然なのです。しかもアクションは大きく分けると、カードを使って戦車を移動させるか射撃するかの二択です。移動させたい戦車の移動可能ヘクスを数え、場所を決めて移動。あるいは撃破したい目標との距離と射線を確かめ、撃てるなら2個のダイスを2回振って射撃。これだけですよ!
 そしてイベントフェイズ。イベントカードを1枚使用するか、パスをします。
 最後にエンドフェイズ。手札を5枚になるよう調整します。それが終われば、相手プレイヤーに手番を譲ります。
 以上がゲームの流れなのです。

 カードやマーカーの種類の多さ、マーカーに書かれた性能の数字の多さに戸惑いそうですが、各フェイズで使えるカードはきちんと分けられてますし、カードの内容を見つつ、使う性能を順番に見ていけばよいようにデザインされてます。
 アクションを行う際に、マーカーの数字を一度に全て計算する必要は無いので、ご安心を。
 戦車やキャラクターの強さや特徴、カードの役割などは、練習試合を一回遊んでみればすぐに体感できるでしょう。戦車やキャラクターの状態を示すマーカーも、ゲームを分かりやすくしてくれますし、臨場感を高めてくれます。プレイヤー同士でルールが飲み込めたら、そこで練習試合を切り上げて本格的に遊べば良いと思います。

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 シミュレーションだから、駆け引きが難しい。そんな不安も、心配ご無用。
 戦車やキャラクターの強さ弱さは、分かりやすく表されてます。攻撃力が弱い戦車の射撃は装甲の厚い戦車に跳ね返されますし、移動力や射程の長短も、はっきり差が出てます。射界という聞き慣れない言葉も、要は全方位に撃てる戦車と前しか撃てない戦車の二種類です。
 自校の戦車をどこに移動させたら、敵校の戦車を撃破できるか。敵校がどの戦車を撃破したいと思ってるか。マップの障害物を利用したり、逃げたりして、どう自校の戦車の安全を確保するか。

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 自分の手札を見て作戦を練り、相手がカードを使った場合を考えて、手番を行う。
 これは一般的なボードゲームやカードゲームと、同じ事なのです。
 手札の内容を把握し、ボードの上のコマやマス目、カードの内容を把握して、自分の勝ち筋や他のプレイヤーの行動を予測するのですから。
 むしろ1~2時間級のヘビーゲームよりは、格段に分かりやすく遊びやすいと思います。
 それでいてより複雑なゲームに劣らず駆け引きを楽しめる、本格派も満足できるウォー・シミュレーションゲームの要所も押さえた逸品と言えるでしょう。
 ウォー・シミュレーションはモチーフとなる時代や事物への思い入れを満たし、可能な限り忠実に再現する側面が強いため、ゲームに込められた情報量が多くなりがちです。
 それが難解さを生じさせる大きな要因なのですが、この「ぱんつぁー・ふぉー!」はその難解さを上手くまとめ上げたアニメ「ガールズ&パンツァー!」という土台を、見事に生かした作品だと思うのです。

 ただ本作をウォー・シミュレーションの入門用として乱用するのは、避けた方が良いかも知れません。
 やはり本作も「ガールズ&パンツァー」への思い入れが強いため、間口は確かに広いですが、万能ではないと思います。 
 個人的には「ガールズ&パンツァー」の各話の再現度やウォー・シミュレーションとしての公平さに重きが置かれ、アニメのような展開をプレイヤーが自由に行う機会が少ない気がします。
 ヒロイン達の機転や意外な展開が、ルールブックのシナリオとシナリオカードにまとめられており、それ以外のカードや各マーカーでは行いにくく感じたのです。
 それとアニメに登場した戦車を忠実に再現した結果、戦力比はやや偏りがちかと思います。

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 本作はシナリオを使わずに遊ぶ事もできるのですが、戦車の性能差は圧倒的なので、プレイヤーの選択によっては全く勝ち目のない状況も生じてしまう恐れがあるのです。
 個人的にはアクションカードやリアクションカードに、もう少し戦車の性能差を埋める逆転要素があった方が、アニメにはないが確かに「ガールズ&パンツァー」だと言える展開を楽しめるんじゃないかと考えています。

 もっともルールブックに記載されたシナリオは本当に良くできており、激戦かつ劇的な決勝戦「黒森峰女学園VS大洗女子学園」は2ステージで再現、また「アンツィオ高校VS大洗女子学院」戦が盛り込まれるなど、サービス満点の内容。
 シナリオカードをうまく解釈して組み込む事で、自由なシナリオを組み、楽しく遊ぶ事ができるかと思います。
 であれば私の懸念は、ただの杞憂に過ぎないでしょう。そうした一手間も「ぱんつぁー・ふぉー!」の楽しみの一つかも知れません。
 また乱用は避けた方が良いと書きましたが、分かりやすくお手軽で、ウォー・シミュレーションの入門用としても優れたゲームなのは間違いありません。
 ウォー・シミュレーションや「ガールズ&パンツァー」に興味がある人には、お薦めして問題ないでしょう。カードをプレイするごとに一喜一憂、ハラハラドキドキの戦車戦を繰り広げる事、うけ合いです。自分の好きなキャラクターになりきって、あのシーンを再現するのもまた楽し!

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 さて皆様は見事、戦車道を極める事ができるでしょうか?
 そして優花里さんと華さん、どちらのお嬢さんが勝利の栄冠を手にしたのか?
 確かめて見たい方は、ぜひ本作をお手に取ってみて下さい。
 その際にはDVDをご覧になるのを、お忘れなく☆
 さぁ、ご一緒に。
「ぱんつぁー・ふぉー!」

 

ライター紹介

綺月鏡水(きづき きょうすい)
 ゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」代表。
 ゲームシナリオライター・プランナー・シナリオディレクター
 専門学校講師「ゲームシナリオ・ゲーム企画等」
 アナログ、デジタルを問わずゲーム好き。
 メカアクションやファンタジー、戦記物、ラブコメなどのゲームシナリオを主に執筆。

代表作
 歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ。
 恋愛アドベンチャーゲーム「はち恋」。
 対戦立体パズル「コンボる?」
 対戦カードゲーム「ぺあぺあ☆エクスチェンジ!」
 その他、多数。