ボードゲームレビュー第45回「女海賊 鄭夫人」

「女海賊 鄭夫人」(原題:Madame CHING)
発売元:HURRICAN/日本語翻訳:ホビージャパン
作者:ブルーノ・カタラ ルドヴィック・モーブラン
プレイ人数:2~4人
対象年齢:8歳以上
プレイ時間:約45分

 


 

毎度どうも、松風です。
夏ももう終わり気味な気配ですが、みなさん今年は海に行かれましたか?
行ってないという方も大丈夫。
ボードゲームには海をテーマにした物も多いんです!

という訳で、今回ご紹介するのは「女海賊 鄭夫人」です。
あ、「鄭夫人」の部分は「マダム・チン」と読んで下さい。

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舞台となるのは19世紀の南シナ海。
海賊集団のボス鄭一亡き後、跡を継いだ妻の鄭一嫂の部下となり、技術を磨いたり実績を上げて海賊の中で成り上がっていこうというゲームです。
ちなみに鄭一も鄭一嫂も実在した人物で、特にこのゲームのタイトルでもある鄭夫人こと鄭一嫂は、清王朝に逆らって数万人規模の海賊集団を形成した伝説の海賊として、中国(特に香港)では人気のある人物のようです。

ルールはさほど難しくありません。
しかし得点に絡む要素が色々あるので、それをいかに戦略的に獲得していくか、がこのゲームの要点になります。

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順を追って見て行きましょう。
まずはセットアップです。
カード類はシャッフルした後、ボード上の所定の位置に置かれます。
この内、航海カードは4枚ずつ各プレイヤーに配られ、これが初期手札になります。
次に、任務タイルを裏向きにしてシャッフルした後、人数に応じて決められた枚数だけランダムで引き、ボード上の同じ番号の所へ配置します。
任務タイルは鄭夫人のために達成するべき目的となり、大きな得点源です。
あとは各プレイヤーが自分のコマの色を選んでボードのスタート位置に置けば大体準備完了です。

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次に実際のゲームの流れに入りましょう。
山札となっている航海カードからプレイ人数分めくってボード上に配置します。
この時、1枚は必ず裏向きに置いて下さい。
これらが次にゲットする手札の候補となるのです。
そして全プレイヤーは、手札から1枚航海カードを選んで裏向きで手元に置き、いっせーのでオープンして、最も数字の高いプレイヤーから行動を開始します。
手番になったプレイヤーは、出した航海カードが前に出した航海カードの数字より大きかったら、ボード上のコマを前に進めることができます。
ただし、同じ色のカードなら真っ直ぐ進めますが、違う色のカードだった場合、船は斜め右の方向に進むことになります。
それからボード上に置かれている航海カードの中から1枚選んで手札に入れます。

こうして並べていった航海カードの列が航海の過程を表しているのですが、航海をなるべく長く進めるためには、前に出したカードとの数字の差をなるべく小さく抑えなければいけません。
しかし、お目当てのカードを取るためには行動順を早くするため数字の大きいカードを出さざるを得ないのです。
このへんのジレンマがこのゲームの醍醐味といってもいいでしょう。

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船のコマがボードの端まで辿り着くか、場に出した航海カードが前回よりも小さかった場合、航海はそこで終了となり進んだマスの数字以下で一番近い数字の任務タイルを得ることができます。
そして、並んだ航海カードの中に特定のアイコンが3つ、もしくは4種類が1つずつ含まれていれば、技術カードを取得します。
技術カードにはゲームを有利に進められる特殊効果が付いているのですが、これは常時効果として以後いつでも効果を発揮してくれます。
ただし、アイコンの付いたカードはそれほど多くありませんので、アイコンを揃えようとして早々にカードの数字が跳ね上がり、短い航海になってしまうという事も往々にして起こりえるのです。

航海の終わったコマは開始地点に戻り、そこから新たな航海がはじめる事になります。
この時、前回の航海で最後に出した航海カードがはじまりの数字になります。
つまり「もうこれ以上進めそうにないな」と思ったらわざと低い数字のカードを出して航海を打ち切り、次の航海に備えるというのも大事な戦略になってくるのです。

全ての任務タイルがなくなるか、全ての技術カードを揃えて「白磁の真珠号」の指揮権を得たプレイヤーが出るとゲームは終了。
それまでに稼いだ金額=得点が最も多かったプレイヤーが勝利します。

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基本的にはカードをプレイし、ドラフトでカードを得る、の繰り返しで航海を進めるというシンプルなゲームとなっています。
しかし、技術カードを優先するか任務タイルを優先するかで、取るべき行動も変わってくるでしょう。
技術カードの効果は、手札を増やしたり、航海終了時に得られる任務タイルの数字を+6してくれたりと、強力なものが多くなっていますが、任務タイルほど得点には結びつきません。
そして得点の高い任務タイルは早い者勝ちなので、ここでもジレンマが発生します。
早上がりボーナスなどはありませんので、純粋に特殊効果を取るか得点を取るかを天秤にかけねばならないところがまた悩ましいですね。

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あと、遥か遠くの香港まで辿り着いたプレイヤーはボーナス得点として「香港港の略奪」カードを得ることができます。
これは10点というかなりの高得点を得られますが、しかし香港にたどり着くにはかなりの周到なカードプレイと運が必要です。
狙うのはかなり難しいですが、一発逆転を期して、あるいは高いアドバンテージを得るために挑戦してみるのもいいでしょう。

総じて、シンプルなゲーム性の中に複数の悩みどころがあって、なかなかに駆け引きが熱いゲームといえるでしょう。
遭遇カードという、相手を妨害したり航海を有利にしたりできるカードの存在も、さらなる駆け引きをもたらしてくれます。
慣れてくれば、どこで航海を打ち切るかといった「勝ち筋」の判断も見えてくるはずです。

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モチーフとなる鄭夫人にあまり馴染みがないこともあって、一見して特徴が掴みづらいかもしれませんが、プレイするほどに進むか戻るかの読み合いが楽しくなるゲームだと思います。
カードを使って船を進めていくというシンプルさを、遭遇カードでの戦闘などのやり取りが少し煩雑化させているきらいもありますが、そこはやはり海賊ということで戦闘の要素は入れたかったのでしょう。
そう考えると、これはこれでテーマに沿ったゲーム性を実現しているとも言えますね。
海賊モノといっても、たまにはカリブ海から離れてアジアの海でひと暴れしてみるのも一興かもしれませんよ?

といった所で、今回のゲームはいかがだったでしょうか?
それではまた次回お会いしましょう。

 

ライター紹介

松風志郎(まつかぜ しろう)
 ゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」所属。
 ゲームシナリオライターだけでなくゲームのシステムデザインなども手がける。
 アナログゲームとの関わりは古く、幅広いジャンルをたしなむ。
 世界観にとっぷりと入り込めるゲームが好き。

代表作
 歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ
 大戦シミュレーションゲーム「萌え萌え2次大戦(略)」シリーズ
 大戦シミュレーションゲーム「出撃!乙女達の戦場」シリーズ
 恋愛アドベンチャーゲーム「はち恋」
 その他多数。