ボードゲームレビュー第52回「シノビクラン」

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「シノビクラン」(原題:Shinobi Clans)
発売元:POSTHUMAN STUDIOS/日本語翻訳:ホビージャパン
作者:ユルゲン=マイヤー(Jürgen Mayer)
プレイ人数:3~5忍者マスター用
対象年齢:13歳以上
プレイ時間:60分


 

「我が身すでに鉄なり。我が心すでに空なり。天魔伏滅……!!」

 皆様、初めまして。もしくはお久し振りです。
 ゲーム&シナリオ制作チーム「Team・Birth-tale」代表の綺月と申します。

 今回は日本が誇るエンターテイメントテーマ「忍者」を題材とした、ドラフトカードゲーム「シノビクラン(原題:Shinobi Clans)をご紹介させて頂きます。
 とはいえパッケージのイラストは、とてもクールでスタイリッシュな忍者さん。カードのキャラクターも、カラフルでシリアス、ミステリアスな雰囲気が魅力的。
 外国のデザイナーさんが作られた「ニンジャ」のゲームで、カタカナで発音した方がしっくりきそうです。

 かつてアメリカでショー・コスギ氏がニンジャブームを巻き起こし、アメコミでもニンジャは大人気。日本でも「ニンジャスレイヤー」という小説がもうすぐアニメになって放送予定。
 ですが本作は、海外の人がニンジャに抱く愛すべき「カン違い」が、実にクールに美しくまとめられています。
 むしろ黒を基調とした忍者のイラストは、「影の軍団」シリーズのコミカルさと重厚なシリアスさを感じて、私はワクワクしました。

 その印象にたがわず本作は実にシリアスな駆け引きと、それが明かされたときのドラマチックな展開と結末が楽しめるのです!!

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 プレイヤーの皆さんはシノビクランの上忍、すなわち忍の一族を率いる頭領です。
 配下として雇い入れた忍者たちや、手に入れた武器などを用いて、標的の暗殺や護衛の任務を請け負います。
 任務が成功すれば、金が手に入る。
 3回の任務で、もっとも金を手に入れたプレイヤーが勝者です。

 頭領たるプレイヤーの勝利のために、雇い入れた忍者は使い捨ての駒、まさに「死して屍拾う物なし」のシビアな世界観。
 忍びのはかなさ、もの悲しさを感じます。

 そして本作は、二通りの遊び方が楽しめます。
 非公開の基本ドラフトによる、運の要素が多い手軽なパーティーゲームとしての遊び方。
 そして公開での上級ドラフトは、知略を尽くすシリアスな遊び方です。

 ちなみにドラフト(draft:英語)とは、カードなどの分配方法のひとつで、カードなどを1つずつ順番にプレイヤーへ渡していく方法です。
 プロ野球がこのドラフト方式で、チームに雇用したい選手を分配してますね。
 このドラフトが基本ドラフトで非公開の場合、他のプレイヤーに配られたカードは、最初のうちは分かりません。なので運の要素が強いわけです。
 しかし上級ドラフトとされる公開であれば、誰がどのカードを引き、集めているか一目瞭然。それを踏まえた計算と駆け引きが重要で、実にシリアスになります。

 このように本作「シノビクラン」は、サツバツとした異国情緒あふれるビジュアルと、私たちの知る「忍者」の戦いという、二つの魅力を併せ持っているのです。

 ゲームの遊び方も、簡単ながらドラマチックです。

 まずはゲームの準備です。
 運を重視して遊ぶなら基本ドラフト、知略をがっつり競うなら上級ドラフト、どちらか皆で決めましょう。
 そして開始プレイヤーを決めるために、報酬カードをランダムで引きます。最も金の高いカードを引いた人が開始プレイヤートークンを得て、開始プレイヤーになります。
 10個の契約トークンを受け取ります。契約トークンは使用プレイヤーが分かるよう裏面が色分けされており、表面には5つの目標で暗殺と護衛に分かれています。
 戦闘カードをよくシャッフルして、山札を一つ作って、場に置きます。この山札の隣を捨て札置き場にしましょう。なおゲーム中に山札が尽きたときは、捨て札をよくシャッフルして山札に作り直します。
 戦闘カードは大きく分けて「忍者」「武器」「イベント」の3種類あります。
 これで準備完了です。手札はゲーム開始後にドラフトで配るのが、本作のキモですね。

 ではゲーム開始。本作は3つのラウンドを、5つのフェイズで順番に行います。

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1:目標フェイズ
 まず目標カードをランダムに3枚引いて、順番に並べます。縦に並べると見やすいでしょう。5人プレイに時は、4枚引いて下さい。
 そして報酬カードも目標カードと同数引いて、カード下部の報酬金額が見えるように順番に1枚ずつ下へと重ねます。
 報酬金額はカード下部の左側が護衛成功、右側が暗殺成功です。護衛と暗殺で報酬が異なるので注意しましょう。
 暗殺は護衛より難しいので、目標カードに暗殺報酬が追加されています。
 また目標カードには護衛側の戦力に加算される、自前の護衛力が描かれていますので、チェックしておきましょう。

2:補充フェイズ
 プレイヤーに戦闘カードの山札から、手札を分配するフェイズです。ここに注目!! 基本か上級、どちらかのドラフトという手順を踏んで分配します。ご注意を!!

 基本ドラフトの場合、まず最初の手札を第1ラウンドは4枚、山札から他のプレイヤーには非公開で配られます。第2ラウンドでは2枚、第3ラウンドでは配りません。
 この最初の手札が、第1~2ラウンドでの戦い方の指針となるでしょう。長所を伸ばすか、短所を補うか、思案のしどころです。
 次にドラフトを行います。最初の手札とは混ざらないようにして、山札から戦闘カードを第1ラウンドでは6枚、裏向きに配ります。第2ラウンドでは8枚、第3ラウンドでは10枚です。
 各プレイヤーは配られたカードを見て、1枚を引いて非公開で自分のドラフト手札にします。そして残ったカードを隣のプレイヤーに渡します。
 第1と第3ラウンドでは時計回り、第2ラウンドだけ逆時計回りでドラフトのカードを回し、全員が同じ枚数のドラフト手札を取り終えたら終了です。
 最後に最初の手札とドラフト手札、そして前のラウンドで残して置いた手札があれば加えて、10枚になるよう手札を調整して下さい。余ったカードは捨て札置き場に公開で置きます。

 上級ドラフトでは、次の手順を行います。
 まず第1ドラフトで、開始プレイヤーが第1ピックトークンを持ち、山札からプレイヤーの2倍の戦闘カードを公開で引いて、場の中央にドラフトプールとして置いて下さい。
 そして第1ピックトークンを持つプレイヤーから時計回りで、ドラフトプールから好きなカードを1枚手札にします。そして最後のプレイヤーから逆時計回りで、ドラフトプールからカードを1枚選び、手札に加えます。
 全員が手札を2枚得たら、第1ピックトークンを時計回りに次のプレイヤーに渡し、今のドラフトを行います。
 なお前のラウンドから持ち越した手札は、自分専用のカードプールとして公開します。順番が回ってきた際、ドラフトプールではなく自分のカードプールから手札に加えることができます。
 こうして計5回のドラフトで、全員の手札は10枚になります。手札に加えなかったドラフトプールとカードプールのカードは、全て捨て札にします。

 以上、基本ドラフトと上級ドラフトでした。
 基本ドラフトでも回ってくるカードは確認できますし、引きたいカードや引かせたくないカードを選ぶことができるので、なかなか熱い駆け引きが楽しめるでしょう。
 上級ドラフトの場合、まさにカード選びから虚々実々の化かし合いになるかと思います。自分の目標と依頼をどう隠し、他のプレイヤーを誘導するかが肝要かと。

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3:契約フェイズ
 自分の契約トークンを2枚選び、裏向きに非公開で場へ置きます。出してない契約トークンと混ざらないよう、きちんと分けて下さい。
 出した自分の契約トークンは、いつでも確認できます。
 同じ目標に暗殺と護衛を、同時に行うことはできません。

4:忍者フェイズ
 開始プレイヤーから順番に時計回りで、手札を1枚ずつプレイするか、パスをするか選びます。
 パスをするとこのラウンドでは以後、残りの手札をプレイできません。ずっと自分の順番を、パスすることになります。
 カードをプレイする場合、「忍者」「武器」「イベント」のカードで、処理が異なりますのでご注意下さい。
 「忍者」は、非公開のまま目標カードの上に置きます。重ねておくのをスタックと呼びます。目標カードの下半分の各種アイコンが見えるよう、ずらしてスタックすると良いでしょう。この時、プレイした順番が変わらないよう、気をつけて置いて下さい。イベントカードの効果や次の戦闘フェイズで、スタックの順番が重要な意味を持ちます。
 「武器」は目標カードの左に護衛側、右に暗殺側、それぞれの戦闘枠というスペースを設けて、好きな方に1枚ずつ順番に並べます。武器カードは重ねず、近い順に1枚ずつ置きましょう。
 「イベント」は目標カードや武器カードに重ねず、出した瞬間に公開して、効果を適用します。そして捨て札にします。手札が補充されたり、他のプレイヤーの手札を見たりと、権謀術策が駆け巡る瞬間です。

 多数の「忍者」が目標カードに容赦なくスタックされ、「武器」が左右の戦闘枠に次々と広がっていけば、敵味方入り交じっての大激闘です!!
 全員が全ての手札をプレイするか、あるいはパスし終えたら、次の戦闘フェイズに進みます。

5:戦闘フェイズ
 では解決する目標カードを1つ選び、その目標の契約トークンを出しているプレイヤーは、そのトークンのみを表にして公開します。

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 次に目標カードに置かれた「忍者」のスタックを、上から順番に公開していきます。
 そしてその「忍者」の効果を適用し、暗殺側か護衛側の戦闘枠に、目標に近い順から1枚ずつ置いていきます。
 カードの効果によっては、空振りすることもあります。また戦闘枠に「武器」がある場合、「忍者」はその「武器」の上に置きます。
 この段階ではある側の「忍者」が取り除かれた場合、次にその側に来た「忍者」は目標に近い順になるので、空いた戦闘枠に置かれる事もあります。
 ご注意下さい。

 スタックが確定したら、その目標カードの戦闘枠を解決します。
 ここが「シノビクラン」の、もっとも盛り上がるところでしょう。
 あなたが伏せておいた「忍者」が姿を現し、鍛えた忍法を炸裂!! 与えた業物をかざし、敵へと躍りかかるのですから!!

 目標カードから近い順に、護衛側と暗殺側の同じ距離の戦闘枠の「忍者」と「武器」の能力を解決していきます。
 この時、能力は「武器」より「忍者」が優先されます。
 また「忍者」や「武器」のカードが取り除かれた場合、その戦闘枠は空にして、他のカードを動かさないで下さい。
 「忍者」の乗っていない「武器」カードは捨て札になります。

 そして目標カードの護衛力と護衛側の戦力の合計を護衛戦力、暗殺側の戦力の合計を暗殺戦力として比べます。
 暗殺戦力が護衛戦力を上回った場合のみ、その目標は暗殺成功です。

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 最後に任務が成功したプレイヤーへ、報酬を支払います。
 報酬額は目標カード、報酬カード、イベントカードの成功した依頼の報酬金額の合計です。
 複数のプレイヤーが同じ目標の任務を成功した場合、報酬を均等に端数切り上げで分配します。
 なんと一人だけ成功したプレイヤーは、報酬を独り占めです!

 以上の手順を、場の全ての目標カードで行い、終わったらラウンド終了です。
 パスして手札に残ったカードは自分の手元に残し、場に出た戦闘カードは全て捨て札にします。
 そして目標カードと報酬カードを、使用と未使用合わせてそれぞれ5枚に戻します。
 最後に開始プレイヤートークンを、時計回りに隣のプレイヤーへ渡し、開始プレイヤーを変更します。

 かくして3ラウンドを戦い、もっとも報酬を得たプレイヤーが勝利するのです。

 この「シノビクラン」は、想像以上にカードプレイの駆け引きが面白いゲームです。
 お値段はカードゲームとしてはやや高めなのですが、じっくりと遊べるので、その価値はあると思います。
 いっそ同じ目標で暗殺と護衛を同時に選べたり、目標を1つに絞るなどのハウスルールも楽しいかも知れません。

 なにより本作は、読み合いと策を講じるドキドキ感、それが一斉に公開され、その成否に一喜一憂する達成と解放の喜びが弾けます。
 上手く構築されたストレスと、それを一気に解消させるすばらしいカタルシスの快感があるのです。

 また依頼達成のために目標の戦力を向上させるだけでなく、他のプレイヤーのもくろみを打ち砕く手段もたくさんあって、「戦いは目的達成の手段は過ぎない」という忍びの極意を体験できるでしょう。
 例えば私はテストプレイで2ラウンド目までトップだったので、最後のラウンドで暗殺側の忍者や武器を集めた上でいきなりパスをし、暗殺成功による逆転を防ごうとしました。
 その企ては見事に粉砕されてしまったのですが、その洞察力のすごさと巧みな手管は、ここでは伏せさせて頂きます。だって忍者ですから☆
 かように己の目的をいかに隠しおおせ、他のプレイヤーとの損得勘定を制するか。武器やイベント、目標すらも利用すべき囮。
 本作は皆様の想像を上回る、「忍び」を体現したゲームだと思います。

「人知ることなくして功者なるを上忍」

 スタイリッシュに生まれ変わった「ニンジャ」たちの、クールでセンチメンタルな生き様を夢想しつつ。
 月無き夜の暗闘を、あなたの巧みな采配と深慮遠謀で制しませんか?

 

ライター紹介

綺月鏡水(きづき きょうすい)
 ゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」代表。
 ゲームシナリオライター・プランナー・シナリオディレクター
 専門学校講師「ゲームシナリオ・ゲーム企画等」
 アナログ、デジタルを問わずゲーム好き。
 メカアクションやファンタジー、戦記物、ラブコメなどのゲームシナリオを主に執筆。

代表作
 歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ。
 恋愛アドベンチャーゲーム「はち恋」。
 対戦立体パズル「コンボる?」
 対戦カードゲーム「ぺあぺあ☆エクスチェンジ!」
 その他、多数。