ボードゲームレビュー第54回「アン・ギャルド」

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「アン・ギャルド」
発売元:ニューゲームズオーダー
作者:ライナー=クニツィア
プレイ人数:2人用
対象年齢:8歳以上
プレイ時間:30分


 

 どうも、ゲーム大好きライトノベル作家の番棚葵です。
 今回は、フェンシングをコンパクトにまとめ、その躍動感を余すことなく伝えてくれる対戦ボードゲーム、「アン・ギャルド」をレビューします。

 フェンシングは皆さんもご存じ、騎士の剣術がスポーツになったもの。
 細身の剣を優雅に使いこなし、一進一退の攻防戦を繰り広げるさまは、見ているだけで手に汗握ります。
 こんな格好いいスポーツを、一度体験したいと思いませんか?
 しかしインドア派で運動は苦手だよという人も中にはいるはず。
 そんなあなたにぴったりなのが、この「アン・ギャルド」なのです。
 ゲーム内容は恐ろしく簡単で、カードを使ってコマを進め、的確な攻撃を行うだけ。
 対戦専用、つまり二人いればプレイは可能なので、誰か一人暇を持て余している人間を引っ張ってくればすぐにでも遊べます。
 なお、デザインに「ライナー=クニツィア」氏の名前がありますが、これはどちらかというと正統派な作品(クニツィア氏に失礼!)。
 むしろ、フェンシングをカードとコマと小さなボードだけで、これほどに再現できるのかと、驚愕すること間違いなしの良作なのです。

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 さて、このゲームですが、先述したようにプレイの方法は簡単です。
 交代で数字の書かれたカードを出して、ボード上のマスに照らし合わせ、その数字ぶんコマを動かすか、可能なら敵を攻撃します。
 数字は基本的に距離を表していて、1~5までの幅があります。
 つまり、1のカードを出せば、距離を1マス前進か後退が可能(ボード上のマスは一直線に並んでいるため、横には動けません)。もしくは、距離1にいる敵を攻撃できるのです。
 このとき、数字はぴったりでないといけないというのがポイント。
 つまり、3という数字は「1~3」の距離を表すのではなく、あくまで「3~3」の距離を表します。
 なので、カードによっては自分の動きたいように動くことはままならず、どの数字を使用していくか慎重に選ぶ必要があります。
 そして、ボード上を前後した後に、攻撃が無事ヒットすれば、そこでポイントゲット。
 このポイントを先に5点取れば、そのプレイヤーの勝利となるのです。
 シンプルかつ、フェンシングを忠実に体現したゲームシステムといえるでしょう。

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 でも、これだけ単純だと遊ぶのに物足りないのでは?
 そう思われた方もご安心ください。
 このゲームには、「基本ゲーム」「標準ゲーム」「完全ゲーム」の三段階のルールが用意されており、先ほど説明したのは一番簡単な「基本ゲーム」です。
 では、「標準ゲーム」以降は何が変わってくるのかというと、カードで行えるプレイの種類が増えてきます。
「移動」と「攻撃」だけを担っていた数字に、「受け流し」と「強力な攻撃」の効果が増えたよ!
 ――急にゲーム展開がくどくなったように思うかもしれませんが、そんなことはありません。
 これら増設された行動も、移動や攻撃と同じくカードを出すだけで簡単に処理できるからです。
 受け流しは、相手が攻撃をしてきた時に可能で、その攻撃に使用されたカードと同じ数字のカードを持っていれば、それを出すことで攻撃を回避できます。
 要はフェンシングにおける防御を示していて、これにより容易にポイントを取られることを防げます。
 また、受け流した後に、さらに防御側は相手に対して「反撃(攻撃すること)」を行えるので、「受け流し」の行動は超重要になってくるのです。
 そして、その受け流しに有効なのが、「強力な攻撃」。
 これは攻撃の際にカードを二枚出すことで行われます。相手はこれを「受け流し」したければ、同じカードを二枚出さないといけないのです。
 このゲームでは、数字はすべて五枚ずつしかないので(そして手札は山札からランダムに引いてくるので)、同じ数字のカードが二×二=四枚出そろう確率は限りなく低い!
 よって必殺の一撃となりうる、まさに「強力な攻撃」なのです。
 この二つの追加により、選択の幅が増えてくるので、駆け引きを楽しむことができるようになります。
 さらに上級の「完全ゲーム」では「標準ゲーム」までのルールをふまえつつ、「移動攻撃」という新しい行動が可能になります
「移動攻撃」は「移動」の後に「攻撃」をするもので、相手に「反撃」か「後退」という防御方法を選択させ、それが不可能なら勝利します。
 もしもこの攻撃に防御側「後退」を選んだ場合、ボード上をプレイしたカードの数字マスぶん後退し、距離を取ることになります。
 ただし、そこで防御側の手番は終了となるので、さらに相手の追撃が迫ってくる可能性があります。そういう意味では「移動攻撃」は強力なのですが、相手との距離を上手に取る必要がある他、距離を読まれて「反撃」によりポイントを取られないよう、気を配る必要があります。
 こうしてみると、「基本ゲーム」→「標準ゲーム」→「完全ゲーム」と、難易度が上がるにつれて純粋に選択肢が増えており、無理のないステップでゲームの奥行きが広がっているのがわかります。
 これは、難易度設定としては大変ユーザーライクであり、余計なイベントカードとかの増設がないぶんステップアップがとても楽に行えるので、全ての難易度で遊ぼうという気が起きる良設計と言えるでしょう。

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 カードの数字とコマだけでフェンシングの「間合いの取り方」「距離の詰め方」を見事に再現したこのゲーム。
 ただシンプルなだけでなく、カードの内容がわかりやすい(1~5のカードがそれぞれ5枚ずつ)ため、手札を読んだりすることも可能で、タクティカルな戦いも楽しめます。
 もちろん、カード運が絡んでくる他、一瞬で勝負が決まるゲーム性も相まって、何の後腐れもなくすっきりとプレイすることが可能。
 もしも、フェンシングに興味があるなら(別に興味がなくても)、プレイする価値はあります。
 最初は「基本ゲーム」慣れたら「標準ゲーム」、いよいよ自分をこのゲームの熟練者と認め始めれば「完全ゲーム」を遊んでみるといいでしょう。
 エアホッケーとか、対戦格闘ゲームに近いゲーム操作感覚も手伝い、何度でも楽しむことが可能です。
 大勢の友人を集めて、大会などを開いてみるのも面白いかもしれません。

 ただし、初心者を「完全ゲーム」で封殺して楽しむとか、そういう外道な遊び方は避けましょう!
 フェンシングは「騎士」の剣術ですからね!

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ライター紹介

番棚葵(ばんだな あおい)
 ライトノベル作家。
 同人サークル「冒険者の館」でゲームも制作。
 古今東西問わずアナログゲームが好き。
 ボードゲーム、カードゲーム、TRPGなど様々なジャンルのゲームをたしなむ。

代表作
・ライトノベル
「生徒会ばーさす!」
「Dソード・オブ・レジェンド」
「神をしめなわっ!」他
(集英社スーパーダッシュ文庫より)
・ノベライズ
「カードファイト! ヴァンガード」
(角川つばさ文庫より)
・ゲーム
「メイガス」
(同人ゲーム)