ボードゲームレビュー第62回「クレムリン」

「クレムリン」
発売元:ニューゲームズオーダー
作者:ウルス・ホステトラー
プレイ人数:3~6人
対象年齢:50歳以上(註:ロシアンジョークと思われます(店長))
プレイ時間:20分~120分

<ご挨拶>
 どうも、はじめての方、はじめまして。
 おひさしぶりの方、おひさしぶりです、高円寺です。

 再びキウイゲームズ様のゲームレビューに、寄稿させていただくことになりました。

 さあ、張り切ってまいりましょう! 今回、ご紹介するゲームはこちらです!!

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 ――――――うわあ……。

(パッケージをそっと閉じる)

 うん、ないな。これはちょっと、ない――うん、ないな。

 いや12月って結構、賑やかな時期でしょう?

 そんな時期にどうしてこんな、鉛のように重たいタイトルのゲームを持ってくるのかな?

 すでにこの時点で、読者さんの心を凍てつかせてしまったであろう、ゲームのレビューを続けさせていただきます。

<概要>

「うおお、赤い、赤いぞ!」
「Урааааааа!!!!」
「あまり私を怒らせないほうがいい!」

 他のメンバーもパッケージを見ただけで、じっとしてはいられないありさま。

 もうすでに尋常ではない、このゲーム。

 と、とりあえずパッケージを開けてみましょう。

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 まず何かボードが出てきましたね。

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 ……おや?

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 ………………。

 まだ世の中を知らない子供以外の人間の目に、なぜかハイライトが入っていません。

 ……ダメだ、あまりの気まずさにふと隣に目を向けます。

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 『 シ ベ リ ア 』

 これまでルールやゲームシステムが重いゲームは、多々ありました。

 ですが、たった4文字で胃にこう、ズンッてきたゲームは初めてです。

 ちなみにこれは『人民ボード』というそうです。

<スタートアップ>

 さて、さきほどの『人民ボード』に

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 こちらの『政治局』ボードをくっつけて

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 ゲームボードが完成です。

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 ボードの上に乗っている注射器のようなものは、『年齢メーター』といいます。
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 さらに黒い『嫌疑マーカー』に白い『療養マーカー』、星型の『パレードマーカー』に20面のダイス。

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 続けて『影響力チップ』を用意します。

 さて、いよいよゲームスタート、と行きたいところなのですが、その前にカードに記述してある情報をご説明します。

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 これが『政治家カード』と呼ばれるものです。

 それぞれ24枚全てにキャラクター名と年齢が割り振られています。

 この『政治家カード』がこのクレムリンにおいて、中核を成す存在だと言えるでしょう。

 まず『政治家カード』の中から「アバラチク・ニエストル」を取り出し、共産主義のトップである書記長の地位に配置します。

 その後『政治家カード』をよくシャッフルし、上から7枚めくり、

【一級局員】
『KGB長官』
『外務大臣』
『国防大臣』

【二級局員】
『イデオロギー担当書記官』
『産業大臣』
『財務大臣』
『スポーツ大臣』

 このように政治局の各ポストに据え、その年齢に応じて横に『年齢メーター』を添えます。

 続けて5枚の『政治家カード』を政治局員候補リストに配置し、先ほどと同様に『年齢メーター』をセットします。

 残りの『政治家カード』は人民リストに配置します。

 最後に『進行マーカー』をターントラックの【1951】年に、フェイズトラックの【療養】に配置して、これでスタートアップは全て終了です。

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<ゲームの進行>
 貴方は人民の一人で、現在のそして未来の政治局員の誰かに対して、影響力を持っています。

 それらは『影響力チップ』で数値化され、約1~10までの10人に及ぼされます。

 まずその影響力を書記長である「アバラチク・ニエストル」以外の10人に秘密裏に割り振って、国家運営に望むのです。

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(注:これらの影響力の割り振りは専用の『影響力シート』に書き込むことができます)

 ええ、秘密裏にです。(黒い笑顔)

 もうここまでくれば、大きなゲームの流れはわかってきたのではないでしょうか?

 当然、他のプレイヤーも影響力を割り振っており、その人物の支配権は数値の多く割り振ったプレイヤーに委ねられるのです。

 また影響力の公表は小出しにすることができ、例えばある政治家に10を割り振っていても、相手プレイヤーから支配権を奪うだけの数値を宣言しておき、ゲーム終盤に「実は9割り振っている」ということも可能なのです。

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 そして最終的に「勝利」した、つまり書記長の座に付き、国家の英雄となった政治家に対し、最も大きな影響力を公表していたプレイヤーがゲームの勝者となります。もし影響力が同じだった場合、その政治家をコントロール「していなかった」ほうのプレイヤーが勝者となります。

 つまり陰の支配者、すなわち『黒幕』になることがこのゲームのコンセプトなのです!!

<一年の流れ>
 さすが世界でも最も閉ざされた主義の国家だけに、中はドロドロとした政治抗争が繰り広げられていました(笑)。

 では、そんなクレムリンでの一年の流れを、皆さんと一緒に体験してみましょう。

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 まず『療養フェイズ』です。

◆フェイズ1:療養

 政治局内で病気にかかっている(病気マーカーの乗っている)政治家は序列順(つまり書記長から)に、ゴーリキー市のサナトリウムへ療養に行きたいか否かを宣言していきます。
 なお、局員候補以下の政治家に、療養に行くという選択肢はありません(笑)。

 療養に行くことを選択し場合、『療養マーカー』がその政治家カードの上に置かれます。

 この年(ターン)の終わりまでその政治家は不在中になり、行動や投票が行えなくなります。

◆フェイズ2:KGB長官による粛清(パージ)

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 KGBの長官は、粛清(このゲームでは他の政治家をシベリアへ送ること)を試みることが可能です。実行する場合、KGB長官は目標の政治家1名の名を宣言した後、サイコロを振ります。

 書記長:18以上
一級局員:14以上
二級局員:10以上

 の目が出た場合、宣言された政治家は即シベリア送りになります。

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 ☆粛清が成功した場合、粛清を実行したKGB長官は、一歳加齢します。そして、さらなる粛清の試行が可能です。
 
 ☆粛清が失敗した場合は、KGB長官は3歳加齢します。そして、この年(ターン)はこれ以上、粛清には挑めません。

◆フェイズ3:スパイ調査
 このフェイズでは国防大臣が政治局のメンバーをスパイ容疑で取り調べにかけたり、前の年(ターン)から嫌疑のかかっている政治家を告発できたりします。

 告発が実施された場合、被告が有罪か無罪か、他のプレイヤーに票決を仰ぎます。無罪表が2票入れば無罪、2票に満たなければ有罪となります。

 ☆有罪となった場合、被告はシベリア送りとなります。
 ☆無罪の場合、告発を実施した国防大臣は3歳加齢します。

 なお、国防大臣は政治局内の政治家のうち、任意に何人でもスパイ容疑で取り調べを行えます。

◆フェイズ4:健康チェック

 このフェイズでは、政治局メンバーの健康チェックを行います。
 結果次第では、病気になったり、病死したりします。政治局以外の政治家は健康チェックの対象外です。

 政治局のメンバーは序列順に全員一回ずつサイコロを振ります。
 そして勤務中の政治家の場合は『健康チェックシート』の『勤務中』、あるいは『療養中』の表で、サイコロの目とその政治家の現在の年齢が交差するところを参照します。

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 そして病死してしまった政治家は、クレムリンの壁に葬られるのです!

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「アバラチク・ニエストル」書記長、高齢のため、あえなく病死………ご冥福をお祈りします。

<最後に>

 また書記長の座にいる政治家の権限に基づいた、『昇格』『降格』『入れ替え』『シベリアからの復帰』などの人事異動フェイズがありますが、レビューが冗長になるため、今回は割愛させて頂きまして。

 書記長の座にいる政治家は一年の締めくくりとして、『パレード』を実施し、人民に手を振って歓声に答えます。

 健康であれば、なんの苦労もなく「手を振れる」のですが、『病気マーカー』が1つ以上乗っていると、サイコロで目標値以上を出さないと「手が振れません」!!

 そうなのです。書記長が『パレード』で「手を振る」のは、偉大な祖国と親愛なる人民を安心させ、党を力強く導き、世界に権威を示す重大な仕事なのです!!

 ゆえに「パレードで手を振った書記長」は、『勝利マーカー』を一つ手に入れることができるのです!!

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 ある政治家が「勝利マーカー」を三つ揃えたら、ゲーム終了。

 そしてこのゲームのキモは、ゲームが終了した時点で隠し持っていた影響力を全て公開する瞬間です。
 勝者となった書記長に、最も多くの影響力を割り振っていたプレイヤーが『真の勝者』なのですから!!

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 書記長「テレンコ=テレンコ」が政治局内の勝者に。
 しかし実は支配権を宣言していたプレイヤーとは、まったく別のプレイヤーが高い影響力を割り振っていたため、ゲームの勝利は彼に。
 クレムリンを支配する、真の黒幕は彼だったのだ!!

 さて、この「クレムリン」は、いかがだったでしょうか?
 本作は普段できないブラックな権力闘争を、心置きなく楽しめるのが特徴なので、遠慮は無用。
 お互い大らかに笑い、驚き悔しがりながら、存分に陰謀劇をプレイするといいでしょう。

―――努力は報われる?
―――正直は成功の元?

 そんなものはまやかしだ!! 

 このクレムリンでは、そんな甘い幻想は通用しないのです(笑)。

 

ライター紹介

高円寺 克洋(こうえんじ かつひろ)
 コンシューマゲームのシナリオライターやプランナーを経て、現在はゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」所属。
 ハードボイルド作品や時代小説をこよなく愛するヘビースモーカー。

代表作
 シュミレーションRPG「ベルウィックサーガ」
 歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ
 その他多数。