ボードゲームレビュー第64回「ムラーノ島」

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「ムラーノ島」(原題:Murano)
発売元:LookoutGames・MayfairGames/日本語翻訳:ホビージャパン
作者:インカ・ブラント&マルクス・ブラント
プレイ人数:2~4人 
対象年齢:10歳以上
プレイ時間:60~75分


 皆様、初めまして。もしくはお久し振りです。
 ゲーム&シナリオ制作チーム「Team・Birth-tale」代表の綺月と申します。

 今回ご紹介するボードゲームは、「ムラーノ島」と申します。
 中世から近世へと移り変わるヨーロッパの一大変革期、ルネサンス時代に繁栄を極めた「ヴェネツィアン・グラス」。
 イタリア語では「ムラーノ島のガラス」と呼ばれる「ヴェートロ・ディ・ムラーノ」で商才を競い、名声を競うガラス商人のゲームなのです。
 「ヴェートロ・ディ・ムラーノ」の美しさは、映画「旅情」で世界中の人々を魅了した「赤のゴブレット」が有名。
 ルネサンス期の王侯貴族が「ヴェートロ・ディ・ムラーノ」で食卓に飾るのは一種のステータスであり、数々の絵画、特に良く好まれた題材である「最後の晩餐」の作品群で多く見られるほどです。
 そして「ヴェートロ・ディ・ムラーノ」には、人々の関心をかき立てる歴史も持っています。
 優秀なガラス職人の「マエストロ」たちを、ムラーノ島に閉じ込めて門外不出とし、その製法を護ろうとしたのです。
 孤島に封じられた職人たちが代々受け継ぐ、美の結晶の秘密。
 このミステリアスな雰囲気が、「ヴェートロ・ディ・ムラーノ」の美しさをいっそう輝かせます。
 皆さんは運河で7つの島に分断されたムラーノ島のガラス商人となり、マエストロの「ヴェートロ・ディ・ムラーノ」を売りあげて名声を勝ち得るのです。

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 デザイナーは「村の人生」などの名作を発表している、プラント夫妻。
 行動の取捨選択と計画性が悩ましい、やり応えのあるゲームデザインに定評があります。

 そんなプラント夫妻による本作の勝利条件は、最も多くの「名声」、すなわち勝利点を得ることです。金貨は手段に過ぎません。
 本作での「最高の商人」とは、富によって名声を勝ち得た商人を指します。
 ゲーム終了時にもっとも名声の高いプレイヤーが、勝者なのです。

 金貨を稼いで店を建て、美しいガラスを作って商売するだけでは、名声(勝利点)を得られません。
 有力者を示す「人物」カードを入手し、そこに書かれた条件を満たしてこそ、他の商人を出し抜いて勝利点が得られます。
 しかもこの「人物」カードから勝利点を得るには、その島に自分が雇ったゴンドリエーレ(船頭)を配置しておかなければなりません。
 例え高得点の「人物」カードを得て、あの島で条件を満たしても、船頭がその島に居なければ「人物」カードを使えないのです。

 「人物」カードを入手し、船頭を島に配置して、ゲーム終了時に条件を満たした島で「人物」カードを使って、勝利点を大きく獲得する。

 このために様々な計画を立て、何をするか選び、他のプレイヤーの狙いを推理して出し抜くのが、「ムラーノ島」なのです。
 こう聞くと難しそうに思えますが、心配ご無用。

 手に入れた「人物」カードを、船頭を配置した島に使えば、その島で「人物」カードに書かれた条件を達成している分だけ、勝利点が手に入る。
 「人物」カードは島に置かれた船頭一つに、1枚だけ使える。使った「人物」カードと船頭は、使い切りとなる。

 この二つを念頭に入れて、一手番に1アクションずつ、ゲームを進めていくだけでいいのです。
 なので自分の手番に考える事は少なく、勝つための計画や推理に集中できるのが、本作の優れたゲームデザインでしょう。

 では、もう少し詳しく「Murano」の遊び方を説明していきましょう。

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 まずはゲームの準備。今回は2~3人用で説明しますね。
 2~3人用では使わないもの、4人用のルールについては、ここでは割愛します。

 ゲームボードは2~3人用の面と、4人用の面がそれぞれ描かれています。
 島の一つがカード置き場になってる面が、2~3人用の面です。
 4人用は、カード置き場がボード上にありません。タイル置き場は両面ともにありますので、ここが分かりにくいので要注意です。
 カードは「人物」と「特殊な建物」に分け、良くシャッフルして伏せた山札を作り、カード置き場にそれぞれ置きます。さらに「人物」の山札から5枚をひいて、箱にしまいます。この5枚は今回は使用しません。

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 タイルも「宮殿」「店」「街道」「特別な建物」「ガラス工房」を、それぞれの種類に分けて、対応するタイル置き場に伏せて置きます。この時「宮殿」「店」「街道」は、良くシャッフルします。「街道」は適当に二つに分けておきます。
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 ボード外周には、一番外に「勝利点トラック」が描かれています。
 その内側に「アクションスペース」と呼ばれるマスがあり、錨マークが描かれてるマスに、船コマを置きます。色は気にせずランダムに置いて下さい。
 各プレイヤーは自分の色を選び、その色の船頭のコマとマーカーキューブを受け取ります。
 受け取った船頭の1つをボード外周の「勝利点トラック」の5点のマスへ、2つをボード上の共通ストック置き場に置きます。残りは自分の前に置きます。
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 マーカーキューブは、店などのタイルが誰のものなのか分かるように、配置したタイルの上に置いて使います。
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 各プレイヤーに金貨5枚を渡し、残りの金貨はゲームボードの側にストックします。
 そしてガラスコマを各色10個ずつ、袋に入れたら準備完了です。

 ゲームを始める前に、カードとタイルについて説明しましょう。

 「人物」カードは、ゲーム終了時に勝利点を獲得するためのカードです。色々な条件が書いてあり、満たせば勝利点を得られます。手に入れた「人物」カードは、得点計算までは他のプレイヤーに非公開です。アクションで積極的に手に入れると、作戦の幅が広がるでしょう。
 「特殊な建物」カードは、プレイ中に特別な効果を発揮するカードです。この効果は強力で、プレイヤーの計画を大きく助けてくれるでしょう。「特別な建物」タイルを設置したときに1枚、入手して公開します。入手した次の手番から、効果を発揮します。

 タイルには「紋章」が描いてあるものがあります。「紋章」は「人物」カードで示される条件に関係しているので、要注意です。
 「街道」タイルは、石畳マスにしか置けません。3色の「観光客」が描かれているタイルもあります。他の建物のタイルは「街道」タイルに隣接する茶色マスにのみ設置可能なので、出店計画の基本となるでしょう。「観光客」の有無も重要です。
 「宮殿」タイルは、設置すると勝利点が3点、手に入ります。「人物」カード以外で勝利点を得る、有力な手段です。
 「店」タイルは、設置された島の「観光客」に商いをし、金貨を手に入れられます。得られる金貨の数は、その「店」の「旗・日よけ」と同じ色の「観光客」の分だけです。設置するとマーカーキューブを一つタイルの上に置き、勝利点が2点、手に入ります。「街道」との兼ね合いが悩ましくなります。
 「ガラス工房」タイルは、ガラスコマを生産するのに必要です。ガラスコマは多くの金貨を、一度に手に入れられます。また「ガラス工房」を設置したとき、マーカーキューブを一つタイルの上に置いて、勝利点を1点得ます。ただしガラスコマを作ると周辺に煙害が起こり、1つにつき2点、勝利点を失います。勝利点は0より下がりませんが、勝利点がなければガラスコマは作れません。ハイリスク・ハイリターンの資金稼ぎとなります。 
 「特別な建物」タイルは、「特別な建物」カードを手に入れる手段です。設置したら「特別な建物」カードの山札から3枚引き、1枚を選んで手元に表向きで残し、2枚を山札の下に伏せて戻します。手に入れた「特別な建物」カードは、次の手番から効果を発揮します。すぐに効果が発揮しないのと、効果が公開情報となるのが、要注意です。

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 「人物」カードと「特殊な建物」カードの内容は、ルールブックに載っています。
 一クセも二クセもあるカードばかりなので、ゲーム開始前にさっと確認しておくといいでしょう。また手に入れた際にも、再確認しておくことをお進めします。

 そしてゲームの終了条件は、「2種類のタイルが、ストックから無くなった時」です。
 終了条件を迎えたら、その時の手番プレイヤー以外の全てのプレイヤーが、一手番を順番通りに行います。最後のプレイヤーが手番を終えたら、得点計算に入ります。

 以上で、準備完了です。
 それではゲームを開始しましょう。プレイヤーの手番は、時計回りで巡ります。

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 手番のプレイヤーは、「アクションを実行する」か、「パスをする」か、どちらかを選びます。
 アクションを実行する場合、「アクションスペース」にある8隻の「船コマ」を動かして、最後に動かした船のマスのアクションを実行します。実行不能の場合は、強制的に「パス」になります
 船コマは、他の船コマがなく、他の船を追い越さずにたどり着けるマスに、移動できます。例えば4マス先に他の船があれば、1~3マスまではどのマスにも行ってアクションが行えるのです。
 また金貨を払えば、複数の船コマを動かすこともできます。最初の1隻目は無料で、2隻目は1金貨、3隻目はさらに2金貨、と言うように、1金貨ずつ値上げされた分を支払えば、何隻でも動かせます。動かす際のルールは、変わりません。
 そして最後に動かした船コマのアクションを、実行するのです。
 ルールブックには「必要なら金貨を使って、複数の船コマを動かすべきだ」と、助言が書かれています。それほどアクションの実行は重要ですし、チャンスは限られているのです。いざという時のために、金貨を用意しておかなければならないでしょう。
 しかし金貨を得る機会も限られていて、勝利に直接は結びつかないのです。

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 アクションを実行しない、あるいはできない場合は、「パス」をします。
 「パス」した手番プレイヤーは、ストックから金貨1枚を受け取り、「船コマ」を1隻選んで、移動ルール通りに動かします。
 この時、動かした先の「アクション」は実行しませんし、複数の船コマを動かすこともできません。

 そして「アクションスペース」にあるアクションは、簡単にまとめますと以下の通りです。

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 ・金貨2枚を受け取る。2カ所。
 ・ガラス工房を買う(タイルを入手)。2カ所。
 ・店を買う(タイルを入手)。2カ所。
 ・宮殿を買う(タイルを入手)。2カ所。
 ・特別な建物を買う(タイルを入手)。1カ所。
 ・人物を募集する(カードを入手)。2カ所。
 ・船頭を配置する(船頭コマを入手)。2カ所。
 ・建設(入手したタイルを配置する)。3カ所。
 ・収入(島を指定し、店で金貨を得る)。1カ所。 
 ・製造(ガラスコマを入手、売却して金貨を得る)。1カ所。
 ・ゴンドリエーレ(船頭)を雇うか解雇する。1カ所。

 各プレイヤーは以上の「アクションスペース」に船コマを進め、アクションを行います。
 そして金貨やタイル、カード、コマを入手し、それぞれの島に配置して条件を整え、勝利点を稼いでいくのです。

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 「ムラーノ島」が面白いところは、「思い通りに進めず、しかし妨害しきれず」という絶妙のバランスの中で、「しかしこうすればうまくいく!」「新たな手を使おう」と、最後まで試行錯誤と駆け引きを楽しめるところでしょうか。
 「アクションスペース」を進む船コマは、予想以上に動かず渋滞し、時に大枚をはたいたプレイヤーが大胆に動かしたりします。
 「特別な建物」カードの効果で出し抜く人、他のプレイヤーの狙いを読み、効率よくアクションを実行していく人、島の建設競争に相乗りして漁夫の利を得る人など、1回のプレイですらその時々で様々な展開を皆が演じます。
 他のプレイヤーがどの島でどんな条件を満たそうとしているのか、あるいは「人物」カード以外の勝利点や妨害することで、自分より優位に立とうとしているのか。
 「人物」カードの勝利条件もですが、「特別な建物」カードの効果と、タイルの配置、アクションとの組み合わせに慣れれば慣れるほど、あっと驚く戦術を披露できる多様性に、本作は満ちてます。
 初回からも楽しいゲームですが、二回目からはもっと熱い駆け引きを楽しめる、懐の深いゲームだと言えるでしょう。

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 さぁ、麗しきヴェネツィアの硝子細工の島へ。ゴンドリエーレの歌声と共に。
 皆様が「ムラーノ島」一のマエストロとして、見事に輝かれんことを!!

 

ライター紹介

綺月鏡水(きづき きょうすい)
 ゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」代表。
 ゲームシナリオライター・プランナー・シナリオディレクター
 専門学校講師「ゲームシナリオ・ゲーム企画等」
 アナログ、デジタルを問わずゲーム好き。
 メカアクションやファンタジー、戦記物、ラブコメなどのゲームシナリオを主に執筆。

代表作
 歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ。
 恋愛アドベンチャーゲーム「はち恋」。
 対戦立体パズル「コンボる?」
 対戦カードゲーム「ぺあぺあ☆エクスチェンジ!」
 その他、多数。