ボードゲームレビュー第69回「フェレータ」

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「フェレータ」
 発売元:ニューゲームズオーダー
 作者:M.A.カサソラ
 プレイ人数:3~5人
 対象年齢:12才以上
 プレイ時間:約60分


 戦いには戦術が要る。
 戦術は道徳から開放されたものであり、
 卑怯もなにもない。

 ――秋山真之

 皆様、初めまして。もしくはお久し振りです。
 ゲーム&シナリオ制作チーム「Team・Birth-tale」代表の綺月と申します。

 今回ご紹介するのは、『フェレータ』というゲームです。
 ハイランドの覇権をめぐり、『薔薇の家』と『鷹の家』の二大公家が、貴族を率いて激突しました。
 プレイヤーはどちらかの公家の下、参戦する貴族として虎視眈々とチャンスを狙います。
 二大公家の争いに乗じて、権勢を極める。それがプレイヤーの目的なのです。

 かつて中世イングランドで起きた『薔薇戦争』が、本作に近いでしょうか。
 1455年にヨーク公リチャードが、イングランド王ヘンリー6世に反旗を翻しました。
 そして赤と白、二つの薔薇の旗の下に分かれた貴族たちが、骨肉の争いを繰り広げたのです。
 片方がひとたび勝利を得ても裏切りや反乱が頻発し、戦乱が続いて混迷を極めました。
 この戦いはイングランド全土を荒廃させたとも、貴族がほぼ絶滅したとも後生に伝えられています。
 それはあくまで伝承ですが、そう語り継がれるほどに激しい争いだったのです。

 『フェレータ』は、この薔薇戦争を想起させます。
 戦いを勝利するために手段を選ばず、あるいは味方を裏切り、勝つ側に寝返ってでも、己の栄達を目指すのです。
 自分が属する公家に忠義を尽くし、勝利に貢献するもよし。
 利にさとい野心家として、敵味方を入れ替えるもよし。
 日常を離れ、ゲームならではのしたたかな、イングランドの群雄割拠を楽しめるのです。

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 ゲームの目的は、3人で遊ぶときは9ラウンド、4人なら8ラウンド、5人だと10ラウンドで、最も多くの勝利点を得ることです。
 あるいは全ての土地が同じ陣営に『征服』された時に、勝利点を計算して勝利者を決定します。
 二大公家の領地を巡る戦いが、その手段です。
 そう。この戦争の主役であり、自分が仕える二大公家さえも、貴方の栄達のための駒に過ぎません。
 いかに一戦一戦を勝利し、あるいは勝者の側について、より高い勝利点を得ていくか。
 たとえ必ず勝てる戦いでも、得られる勝利点が低ければ、他の貴族を出し抜けません。
 出せるはずの戦力を温存して次の戦いに備えたり、劣勢な敵に内応して逆転させるなど、計算高く戦い抜くのが『フェレータ』の醍醐味なのです。

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 ではゲームの準備からプレイまで、ご説明しましょう。
 まずはカードなど、構成物の説明です。
 行動カードは6枚あり、各ターンで行えるプレイヤーの役割を決めます。
 「外交家:5」は、戦いの際に戦力を+5します。
 「外交家:2」は、戦いの際に戦力を+2、兵站カードを1枚得ます。
 「戦略家」は、勝利点2点を得て、戦略カードを得ます。
 「建築家」は、拠点カードを1枚置くか、配置済みの自分の拠点1枚を裏返します。
 「農業家」は、兵站カードを3枚得ます。
 「反逆者」は、所属する公家を変更し、勝利点1点を得ます。

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 兵站カードは27枚。これが戦いの際に各プレイヤーが投入する戦力になります。四人以下の場合は『2』『3』『4』『5』のカードが各5枚、『6』が2枚、『8』は1枚の計23枚を使います。

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 土地カードは14枚。同じ種類が2枚ずつあり、『鷹の家』と『薔薇の家』の面があります。うち1種類2枚は5人用です。土地カードには『基本戦力』と、その陣営の人数で増減する『勝利点』が書かれています。
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 拠点カードは15枚。各プレイヤーの色ごとに、3枚ずつあります。『屋敷』の面は兵站カードを増やし、『商館』の面はゲーム終了時に勝利点のボーナスがあります。
 所属カードは5枚。各プレイヤーの色ごとに1枚ずつあり、『鷹の家』と『薔薇の家』の面があります。 

 この他、スコアボードは各人用のスコアマーカー5枚と、ラウンドマーカー1枚を上に置き、勝利点とラウンドを示します。
 また傭兵カードは1枚で、選択ルール用です。

 では『フェレータ』を遊ぶ、準備に参りましょう。
 4人以下で遊ぶ場合、5人用のカードを取り除きます。
 5人で遊ぶ場合、5人用ルールがあるので、気をつけてください。

 まず各人は色を選び、所属カードと拠点カード3枚を受け取ります。
 スタートプレイヤーを適当な手段で決めたら、初手番カードと戦略カードを得て、所属カードを『鷹の家』にします。
 次のプレイヤーから所属カードを『薔薇』『鷹』『薔薇』といった具合に交互にして、各人の所属を決めます。
 次に土地カードを異なる種類で揃うよう、『鷹』と『薔薇』に二つに分け、交互にランダムで円形に並べていきます。
 並べ終えたら初手番プレイヤーから順に、『屋敷』の面を上にした拠点カード1枚を、空いている土地カードに置いていきます。
 残った拠点カードは、手元に置いておいてください。

 そして兵站カードをよくシャッフルし、各人に3枚ずつ手札として配ります。手札は他のプレイヤーには見せないようにします。
 残った兵站カードは伏せて山札とし、土地カードの輪の外側で見やすいところに置いてください。
 そしてスコアボードも土地カードの輪の外側で見やすいところに置き、全員のスコアマーカーをスコアの「0」のマスに、ラウンドマーカーをラウンドの「1」に置きます。

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 最後に行動カードをよくシャッフルし、土地カードの輪の中に、伏せてランダムにおいてください。
 これで準備は終了です。引き続き、プレイの流れを説明しましょう。

 まずラウンド開始。
 手順1。最初に戦場を決めます。
 『戦略カード』を持っているプレイヤーが、隣接していて所属が異なる2つの土地を戦場として選び、その間に『戦場カード』を置きます。
 この時二つの土地の『基本戦力』で有利不利を考え、各陣営の参加人数を数えて、勝った場合に得られる『勝利点』に気をつけましょう。
 『フェレータ』で勝利点を稼ぐ最も大きい手段は、戦いに勝って得る勝利点です。負けたら勝利点を得られません。
 また勝った陣営の参加人数が多いと、得られる勝利点も少なくなり、また同じ陣営で同じ勝利点を得ることになります。
 なので、どう出し抜くか、あるいは勝ち馬に乗るか、優位を維持するか、この段階で自分の手札も見つつ、考えておくと良いでしょう。

 手順2。行動の選択です。
 初手番カードを持つプレイヤーは土地カードの輪の中の行動カードから5枚を取り、内容を見て1枚を選んで、他のプレイヤーに見せずに獲得します。
 そして反時計回り(左回り)の順で、各人は同じように1枚ずつカードを選んで行きます。全員が1枚を得て、残ったカードは土地カードの輪の中に戻します。
 戦場を決められた際の考えに沿って、自分の行動を決めると良いでしょう。
 ただし自分に回ってきたカードから、誰がどの行動を選んだか、推理する必要があります。
 自分の狙いはうまくいくのか、変えた方が良いのか。
 行動順で情報量も回ってくる役割の数も変わるので、機会を逃さないのがコツの一つでしょう。
 ここで要注意なのは、全員が同じ陣営の時は『外交家:5』も、『反逆者』と同じく所属陣営が変わる点です。
 また『戦略家』を誰も選ばなかった場合、次のラウンドも同じプレイヤーが『戦略カード』を持ち続け、手順1で戦場を選びます。

 手順3。兵站カードを使用します。
 初手番カードを持つプレイヤーから、今度は時計回りで、自分の手札から兵站カードを0~5枚選んで、自分の前に出して公開します。
 出した兵站カードの数字の合計が、今回の戦いで自分の所属陣営に加える戦力です。
 1枚も出さずに兵站カードを温存したり、所属陣営の戦力を少なくしても良いでしょう。
 また『反逆者』カードを選んでいた場合は所属陣営が変わり、出した兵站カードの戦力も変わった方の陣営に加わります。
 なので「もしあの人が出した戦力が、敵か味方に加わったら?」という予測も、必要になってきます。
 この「裏切り」を企む、あるいは予測して対策を講じる、あるいは無駄な消耗を避ける、といった戦略性が、本作の醍醐味なのです。

 手順4。行動カードを公開します。
 選んだ行動カードを公開し、ここで『反逆者』は所属陣営を変更します。
 また全員が同じ陣営の時だけ、『外交家:5』も所属陣営を変更します。
 この陣営の変更が、狙い通りに最大の戦果をもたらすのか。
 あるいは予想外の展開で、戦局が激変するのか。
 『フェレータ』最大の見せ場が、この手順4です。大いに盛りあがることでしょう。

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 手順5。戦を決着します。
 時に興奮冷めやらぬまま、戦力の計算をすることになるでしょう。
 それぞれの陣営の『土地カードの基本戦力』『所属陣営の兵站カード』『外交家の戦力』を合計し、高い方の陣営が勝利します。
 同点の場合は引き分けです。

 手順6。勝利点の獲得と、勢力圏を変更します。
 まず負けた方の土地カードの、勝利点の表を見て、勝った方の陣営の人数に対応した勝利点を、勝った陣営に参加したプレイヤー全員が得ます。
 また勝敗に関係なく『戦略家』を選んだプレイヤーは2点、『反逆者』を選んだプレイヤーは1点を獲得します。
 要注意なのは、誰も『戦略家』を選ばず、前のラウンドから継続して『戦略カード』を持ち続けた場合は、勝利点が得られない点です。
 同じプレイヤーが『戦略カード』を選び続けた場合は勝利点を得られるので、この違いに気をつけてください。
 獲得した勝利点の分、各プレイヤーはスコアボードのスコアマーカーを進めます。
 そして負けた方の土地カードは裏返して、勝った方の陣営に『征服』されます。これが勢力圏の変更です。
 なお引き分けの時は土地カードからの勝利点は得られず、『戦略家』『反逆者』だけが勝利点を獲得します。

 手順7。拠点を建設します。
 『建築家』を選んだプレイヤーは、拠点を建設できます。建設した『屋敷』や『商館』は、安定した戦力や貴重な勝利点を与えてくれるでしょう。
 自分の持つ『拠点カード』から1枚を、『商館』か『屋敷』を選んで、空いている土地カードに設置します。
 あるいはすでに設置した『拠点カード」1枚を、裏返すことができます。設置した『拠点カード』を別の土地に移動したり、手札に戻したりはできません。
 また『商館』は、各プレイヤー合計2枚しか建設できません。 
 『屋敷』は各プレイヤー3枚まで建設できます。

 手順8。戦略カードと戦場カードを獲得します。
 次の戦場を選べる『戦略家』は、ゲームの主導権を握る大きな存在です。
 『戦略家』を選んだプレイヤーは、『戦略カード』と『戦場カード』を獲得します。
 前述の通り、誰も『戦略家』を選ばなかった場合は、引き続き同じプレイヤーが『戦略カード』と『戦場カード』を獲得します。

 手順9。兵站カードの廃棄、補充、調整を行います。
 まず各プレイヤーが使った兵站カードは一つにまとめて、捨て札にします。兵站カードが尽きた場合、捨て札をよくシャッフルして、新たな山札を作ります。
 次に『農業家』を選んだプレイヤーは、山札から3枚、手札に補充します。
 そして初手番プレイヤーから時計回りの順に、「所属している陣営の土地カードに置かれた、屋敷の数」だけ手札を補充します。ただし『農業家』を選んだプレイヤーは、『屋敷』からの補充は行えません。
 最後に『外交家:2』を選んだプレイヤーは、追加で1枚補充します。
 なお『屋敷』と『外交家:2』を合わせた補充の上限は、3枚までです。
 そして持てる手札の上限は、5枚までとなります。
 なお手札を5枚持っているプレイヤーは、補充での超過分を先に選んで捨てることで、山札から補充することができます。
 例えば『農業家』を選んだプレイヤーの手札が5枚の場合、先に3枚を手札から捨て、山札から3枚を補充できるのです。

 手順10。次のラウンドを準備します。
 最終ラウンドでなければ、全員が行動カードを土地カードの輪の中に返却します。
 そして初手番カードを、左隣のプレイヤーに渡し、ラウンドマーカーを1マス進めます。

 この手順1から10までを順に繰り返して、最も多く勝利点を稼ぐのです。

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 冒頭でも書きましたが、ゲームの終了は、参加人数で指定されたラウンドが終了したときか、全ての土地が同じ陣営に『征服』されたラウンドの手順9です。
 ゲームの終了時、『商館』を建設した勝利点のボーナスを計算して、最終得点を決めます。
 全てのプレイヤーは自分が建設した『商館』の数に、手元に残ってる手札の枚数を掛けて下さい。
 『商館』は2つまで建設できますし、『商館』を建設した土地の陣営はどちらでも構いません。すべて数えます。
 また数える手札の枚数は、3枚まで。4枚以上は数えません。
 例えば自陣営と敵陣営の土地に『商館』を1つずつ建設し、手札5枚のプレイヤーは、『商館』2つ掛ける手札3枚分で、勝利点6点を得ます。

 この勝利点のボーナスをスコアボード上で加えて、勝利点が最も高いプレイヤーが勝者となるのです。

 さて、なかなかに抜け目のないプレイが醍醐味の『フェレータ』ですが、如何でしょうか?

 8~10ラウンドで、各ラウンドの手順は10個と、一見すると複雑そうに思えます。
 しかし実際は「戦場を決め、行動カードを選び、兵站カードを出して、戦いの結果をまとめ、手札を補充し、戦略カードと初手番カードを移動する」と、大まかに5つのシンプルな流れなのです。
 なので行動カード選びでの作戦と推理、その次の兵站カードでの駆け引きに、集中することができます。

 奥深い戦略性や戦術生を楽しむために、丁寧ながらも遊びやすくデザインされたカードゲーム。
 「戦場での寝返り」という、なかなか体験できないことを存分に遊べるのが『フェレータ』最大の魅力です。

 果たして貴方はライバルを制し、最高の勝者となれるでしょうか?
 鷹と薔薇の戦いに終止符を打ち、繁栄をもたらすのは貴方の知謀と機転なのです!
 存分に神算鬼謀の限りを尽くし、戦いましょう!

 

ライター紹介

綺月鏡水(きづき きょうすい)
 ゲーム制作/シナリオライティングチーム「Team・Birth-tale」代表。
 ゲームシナリオライター・プランナー・シナリオディレクター
 専門学校講師「ゲームシナリオ」「ゲーム企画」など。
 アナログ、デジタルを問わずゲーム好き。
 メカアクションやファンタジー、戦記物、ラブコメなどのゲームシナリオを主に執筆。

代表作
 歴史シミュレーションゲーム「三極姫」「天極姫」シリーズ
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 その他、多数。