ボードゲームレビュー第86回「ウィッチャー・ザ・ボードゲーム」

「ウィッチャー・ザ・ボードゲーム」
発売元:アークライト
作者:Ignacy Trzewiczek
プレイ人数:2~4人
対象年齢:14才以上
プレイ時間:約120分

 


はいどうも、皆さんこんにちは。毎度おなじみ松風でございます。

さて、世に剣と魔法のファンタジーをテーマにしたボードゲームというものは、たくさんあります。
中には大ヒットした小説やビデオゲームからボードゲーム化された、いわゆる原作付きボードゲームなんてものも色々出ております。

そんな中から、今回は「ウィッチャー・ザ・ボードゲーム」をご紹介したしましょう。

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大元の原作は、ポーランドのベストセラーファンタジー小説。そこからコンシューマー/PC用にビデオゲームが作られ、シリーズ化されるほどの人気に。
シリーズ最新作の「ウィッチャー3」は作りこまれた世界観と膨大なやりこみ要素などが好評を博し、現在進行形で大ヒット中です。
当然、このボードゲーム版ウィッチャーも、原作の世界観を踏襲しつつ、ボードゲームらしい工夫を凝らしたゲームに仕上がっております。

プレイヤーが扮するのは、魔法剣士である「リヴィアのゲラルト」、その愛人で魔女の「トリス・メリゴールド」、吟遊詩人の「ダンディリオン」、ドワーフの王「ヤーペン・ジグリン」の4人となっております。
原作小説やビデオゲーム版に触れた事のある方には、おなじみの面子といえるでしょう。

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ヒーローたちのイラストの横に描かれているのは、自分の手番で取れるアクションの種類と、負傷トークン/凶運トークンを置くマスです。

「踏破」「調査」「強化」「休息」の4つのアクションは各ヒーロー共通ですが、残り1つのアクションはそれぞれ独自のものが書かれています。
ゲラルトなら「醸造」、トリスなら「詠唱」といった具合ですね。

ゲーム中、モンスターと戦ったり、カードの指示なんかでうっかりダメージを負うと、負傷トークンをハートのマークが描かれたマスに置いていきます。
負傷トークンが置かれた場所に対応するアクションは、自分の手番中に選べなくなってしまいます。
負傷トークンは軽傷と重傷の2つがあり、どちらも「休息」アクションで取り除けますが、重傷の方がより取り除きにくくなっていますので、怪我をしたらこまめに休息を取るべきでしょう。
ヤーペンはアクションを塞がないマスを2つ、追加で持っていますのでなかなか強力です。流石はドワーフ、強靭です。
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また、凶運トークンが置かれたアクションを実行すると、トークンを取り除くとともに凶運カードを引かなくてはなりません。
この凶運カードは文字通り、キャラクターに様々な不幸が襲いかかります。
さらなるダメージを受けたり、現在地に足止めされたり、せっかく手に入れたアイテムを失ったりと、散々な効果が多いのでなるべく引きたくないものですが、残念ながらプレイ中は頻繁に引くことになります。
ヒーローの往く道は険しい。

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ヒーローカードの下段には、初期配置場所である「開始地点」と所持金の数、手がかりトークンの交換レート、ヒーローダイスの成功扱いになる出目、使用できる任務カードの山札の色などが描かれています。

手がかりトークンは赤・青・紫の三種類あり、これらを集めて証拠トークンに変換することで、任務カードに書かれた任務を達成していくことになります。
ヒーローの得意分野によって、交換レートがそれぞれ違っていますので、任務カードの選択の際には考慮した方がいいでしょう。

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そして、各ヒーローにはそれぞれ専用の勇者ダイスが1つ、与えられます。
赤はゲラルト用、青はトリス用、紫はダンディリオン用、黄色はヤーペン用になります。
ゲラルトだけは、勇者ダイスをなんと3つももらえます。流石は主人公といったところでしょうか。

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これは各種イベント時に、それが成功したかどうか判定するためのダイスであると共に、戦闘にも使用します。
ヒーローカードに描かれた達成のシンボルが出れば判定は成功、というわけです。
各勇者ダイスのシンボル(出目)はダイスごとに違いますので、ここにもヒーローの個性が表れていると言えるでしょう。
ヤーペンは2つのうち、どちらかの出目が出れば達成になります。やるな王様。

一番右下に描かれているのは、そのヒーローが利用できる任務カードの山札の種類です。
これも赤(戦闘)・青(魔法)・紫(外交)の三種類があり、この内どこから引くのかが描かれているというわけです。
ヤーペンだけは赤と紫、両方から選べます。

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このような感じで、キャラクターによって色々と能力に差があるのですが、やはり主人公強し、という印象があります。
何と言っても、ダイスの数に物を言わせた戦闘が強い!

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ざっくりとした印象になりますが、他のヒーローたちはどうかと言いますと、

出来ることが多いものの、その分オプションルールが多くて手番が慌ただしいヤーペン。
お金を稼ぎやすくて人脈が豊富なものの、戦闘に弱いダンディリオン。
汎用性が高いものの、強化による成長方針を考えないと器用貧乏になりがちなトリス。

といった感じの個性が、付けられています。
このゲーム、キャラクターが死亡してゲームからリタイアする事はありませんので、どのキャラでもうまく「強化」していけば活躍の目は十分にあるでしょう。

とにかく大きいゲームボードには、原作の舞台である様々な都市が描かれています。

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それぞれの都市はルートで結ばれていて、「踏破」で移動する際にはこのルートに従わなくてはいけません。
デュエン・カネルからシントラ、あるいはノヴィ・グラドへ行く海上ルートは、陸路で行くよりも大幅なショートカットができるようになっていますが、お金がかかるのがネックです。

さて、では実際このゲームは何をしていくのか? といった所を解説していきましょう。
コンポーネントの多さにちょっと圧倒されますが、プレイの流れ自体はさほど煩雑ではありません。

各プレイヤーはまず、自分のヒーローが利用できる任務カードの山札から2枚引いて、どちらかを選んで手元に置きます。
これが現在請け負っているクエスト、ということになります。

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任務カードには「主要任務」「副次的任務」1・2「支援任務」「後日談」がそれぞれ書かれています。
ここでメインとなるのは「主要任務」です。

主要任務の部分には、到達すべき拠点(都市)と、必要な証拠トークン、そして達成時にもらえる勝利点が書かれています。
つまり、証拠トークンを揃えて特定の拠点にいけばOKというわけです。簡単ですね。

副次的任務は二種類書かれていて、それぞれ達成すると追加の勝利点を得ることが出来ます。
ただし、主要任務を達成するとこの任務カードは終わってしまいますので、それまでに達成しておかなければいけません。

支援任務は、自分では達成できません。
ここに書かれた内容は、自分と同じ拠点にいる他のヒーローに達成してもらう任務なのです。
もちろん達成するかどうかは、相手が決めることですが。
これが達成されると、自分に3点、相手に6点の勝利点が入ります。

後日談は、主要任務を終えるともらえるボーナスが書かれています。
任務カードを選ぶ際には、ここも考慮してみるといいでしょう。

誰かが任務カードを3枚達成すると、他のプレイヤーはもう1手番行ってゲームは終了になります(選択ルールによっては5枚)。
最終的に最も勝利点の多いプレイヤーが、勝者となります。

さて各プレイヤーは自分の手番で、2つアクションを行えます。
行いたいアクションの横のハートマークが描かれたマスにアクショントークンを置いて、行動を宣言します。
ただし、前述した通り負傷で塞がっているアクションは選べませんし、2回とも同じアクションを選ぶこともできません。
また「遅延」という効果を受けると、1アクション放棄しなくてはいけません。この効果は、ターンをまたいで継続します。

各アクションを、もう少し詳しく見て行きましょう。

「踏破」は、拠点から拠点へ移動するためのアクションです。一度に2マスまで移動できます。
ただし1つ隣の拠点へは普通に移動できますが、一気に2マス移動したら凶運カードを引かなくてはいけません。
新しい拠点に辿り着いたら、その拠点に描かれた色の手がかりトークンを1つ入手できます。
複数の色が描かれていれば、その中から選んで取ることができます。
手がかりの代わりにハートマークが描かれた拠点もあり、そこでは軽傷トークン1つを取り除くか、重傷トークン1つを軽傷トークンに変更できます。

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「調査」は、例によって戦闘・魔法・外交と三種類ある調査カードの山札から1枚引き、そこに書かれた効果を適用します。
おおむねヒーローに有利な事が書かれていますが、たまに「逆境」と書かれたカードが混じってまして、これにはだいたい不利な効果が書かれています。
実質、凶運カードといっていいでしょう。

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「強化」は、各ヒーローごとに用意された強化カードの山札から2枚引いて、どちらか1枚を捨て札にします。
強化カードは文字通り、ヒーローの能力を強化してくれるものです。
ゲラルトなら霊薬、トリスなら呪文、ダンディリオンなら友人などが手に入りますので、序盤から積極的に狙って行きたいアクションです。
ですが、引いたカードの片方は必ず捨て札になり、後から再利用も出来ませんので、何を選ぶかはかなり慎重になる必要があるでしょう。

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次のマスには、ヒーローごとの独自アクションが書かれています。
ざっくり言うと、ゲラルトとトリスは自分の強化カードの使用回数を補充、ダンディリオンは金貨の獲得となります。
ダンディリオンの強化で得た友人カードは、金貨を払うことで効果を発揮してくれるので、これも実質使用回数の補充と言ってもいいかもしれません。
ヤーペンだけは特殊で、ゲーム開始時からいる部下4人の中から2人に対して行動を指示して、その効果を発揮させます。

「休息」は前述した通り、負傷トークンを取り除くアクションです。

手番の終了時には、必ず「試練」と呼ばれるアクシデントと遭遇します。
ゲームボードの左端には、「試練ゾーン」と呼ばれるエリアがあります。
手番の2アクションが終わったプレイヤーは、今いる拠点の名前が書かれた帯の色とシンボルに対応した試練ゾーンを参照し、そこに置かれたモンスタータイルか凶運トークンを解決するのです。
凶運トークンの場合は凶運カードを引くだけですが、モンスタータイルがあった場合、そいつと戦う事になります。

戦闘では、プレイヤーは戦闘ダイスを3つ受け取り、自分の勇者ダイスも加えて振ります。
剣のシンボルがモンスターの攻撃力(剣シンボル)以上出ていれば勝利となり、タイルを破棄できます。
初期からダイスを6つ振れるゲラルトがいかに強いか、お分かりいただけるでしょうか。

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攻撃力の部分に目のようなシンボルが描かれた敵もいますが、これは魔法を表していて、通常の剣シンボルでは倒せません。
最も魔法シンボルを出しやすいのはトリスの勇者ダイスなので、彼女に頑張ってもらいましょう。

モンスターによっては、防御力(盾のシンボル)を持っているものもいます。
これもモンスターの防御力以上の盾シンボルが、出ていれば成功です。
ただし、攻撃と防御それぞれ別にダイスを振ったりするわけではなく、一度振った結果をそれぞれに適用します。
勝った場合、負けた場合の結果はタイルに書かれているので、それを適用しましょう。

モンスタータイルはブロンズ・シルバー・ゴールドと三種類あり、徐々に強くなっていきます。
強化などをしっかりやっておかないと、ゴールド級のモンスターにはまず勝ち目がありません!

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他にも細かいルールはありますが、全体の流れとしてはこんな感じです。
基本は2アクションして戦闘、2アクションして戦闘、の繰り返しだと思ってもらって構わないでしょう。

勝利点を競う対戦型のゲームにしては、他者を妨害する手段がほぼありませんので、各々が単独でプレイした結果を比べ合うといった感じのゲームになっています。
支援任務やアイテムの融通などで協力する要素もあるにはありますが、あまり積極的な交流の動機にはならないでしょう。
また、ゲームの展開はほぼランダムで引いたカードをダイスを振って対処していくだけですので、厳密な競技性もありません。
ですので、勝敗はあくまでどれだけ効率のよいプレイをしたか、という目安くらいに見るべきかもしれません。

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反面、様々なカードに書かれたフレーバーテキストによって、どこか不穏な空気を漂わせたファンタジー世界で危険と隣り合わせの旅をする、という雰囲気はバッチリ味わえます。
たとえ原作を知らなくても、そういった世界に没入できるという点においては、かなりイイ仕上がりと言っていいのではないでしょうか。
ただ、たっぷりと雰囲気を味わうというコンセプトのために、じっくりと腰を据えてプレイするようなバランスになっています。
プレイ時間は多めに見積もっておいたほうが、いいでしょう。
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ゲームの流れ自体は意外とシンプルですので、あとは細々したルールやコンポーネントの量に尻込みせず、気に入ったヒーローになりきってみてください。
カードによって紡ぎだされる物語に一喜一憂しながら広大な世界の一員になる、そんな体験を求めている方にオススメです。
もちろん原作ファンの方も、気になったなら是非チャレンジしてみてくださいね。
小説やビデオゲームとは、一味違った冒険が待っていることでしょう。

といったところで、今回のゲームはいかがだったでしょうか?
それでは、また次の機会にお会いしましょう。

 

ライター紹介

松風志郎(まつかぜ しろう)
 ゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」所属。
 ゲームシナリオライターだけでなくゲームのシステムデザインなども手がける。
 アナログゲームとの関わりは古く、幅広いジャンルをたしなむ。
 世界観にとっぷりと入り込めるゲームが好き。

代表作
 歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ
 大戦シミュレーションゲーム「萌え萌え2次大戦(略)」シリーズ
 大戦シミュレーションゲーム「出撃!乙女達の戦場」シリーズ
 恋愛アドベンチャーゲーム「はち恋」
 その他多数。