ボードゲームレビュー第93回「俺のケツをなめろ!」

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「俺のケツをなめろ!」
発売元:ゲンブンゲームズ
作者:恋パラ支部長
プレイ人数:3~6人
対象年齢:10才以上
プレイ時間:15~20分

店長註:本作品は1991年発売の同名タイトルを2015年にリデザインの上発売されたものです。

 


 

 

 どうも、こんにちは。ゲーム大好きライトノベル作家の番棚葵です。
 今回は、タイトルも直球なら内容もド直球。ミリタリー精神が(色々な意味で)骨の髄まで染み入るカードゲーム、「俺のケツをなめろ!」を紹介します。

 1944年、東部戦線は危機に瀕していた。
 圧倒的戦力を誇るソヴィエト軍が、第2、第3のスターリングラードをもくろみ、薄くなったドイツ軍戦線を各所で突破。軍団規模の野戦軍を包囲するのに成功していたからである。
 これに対し、ドイツ軍も手持ちの装甲部隊を集結させ、包囲下部隊の救出作戦を開始した。
 救出部隊に与えられた命令は簡潔だった。
「如何なる犠牲を払っても敵の包囲網を突破し、味方部隊を救出せよ!」
 戦いの時は来た。
(マニュアルより)

 これから戦争映画でも始まりそうな壮大なプロローグの前に、改まって正座するか、ポップコーンとコーラを手に姿勢を楽にしたくなります。
 実際カードを見てみると、ソヴィエト軍(懐かしいですね!)もドイツ軍も、当時の戦力を現した本格的なものばかり。
 本格的すぎて、特定の戦車と戦車の間には、雲泥の差ほどの数値が設けられていますが、それもまたやむなしといったところ。
 実際の話、ゲームバランスは(ある程度は)取れているので、問題はありません。
 それよりも何よりも、このプロローグで「対戦ゲームである」というのが何かおかしい。
 仲間救うんだから、そこは協力してやれよ!?
 しかしドイツ軍は追い詰められている割には余裕のしゃくしゃくで、ビール片手にウィンナーをかじりながら、今晩の夕食を賭けてダーツの的のようにソヴィエト軍を仕留めていくのです(注・筆者の勝手なイメージ)。

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 このゲームはいたってシンプルな、カードを出したり設置したりして進めるTCG風味のもので、覚えるルールもそんなに複雑ではありません。
 自分が設置した戦車や歩兵などの友軍カードで敵を攻撃し(カードに書かれた射撃力分のダイスを振る)、相手の防御力を上回れば勝ちとなります。
 相手=ソヴィエト軍カードは6つの山札を形成しており、この山札を自由に選んで、その一番上のカードと1枚ずつ戦闘を行っていくことになります。
 そして1つの山札を「最後に」0枚にしたプレイヤーが勝利ポイント(友軍カードというカードで表現されています)を手にすることができます。
 友軍カードは6枚あるので、より多くの友軍カードを手にしたプレイヤーが勝利する確率が上がってくるわけです。
 そしてすべての山札を崩した後、友軍カードに書かれている点数を確認、より多くの勝利ポイントを獲得したプレイヤーが勝者となります。

 ここまで読めば、ソヴィエト軍の山札をどのタイミングで切り崩すかが、ゲームにおいて非常に重要となってくることがわかるでしょう。
 各山札は4枚なのですが、このうち3枚を倒したとしても、残り1枚を他のプレイヤーに倒されればそのプレイヤーが勝利ポイントを獲得してしまうわけです。
 とんびに油揚げをさらわれるとは、まさにこのこと!
 一応、敵カードに勝利したプレイヤーは連続で戦闘を行えるので、山札をどんどん崩していけるのですが、敵の中には普通の戦力では勝てないような強敵もまじったりしているので、注意が必要です。
 なら、沢山の戦力を確保して一気に山札を崩していけばいいのでは?
 しかしこのゲームのよくできているところとして、基本ソヴィエト軍から攻撃してきます。
 その攻撃は(よほど弱いカードでない限り)、こちらの友軍カードを1枚は削る威力があります。
 つまり、自分の戦力は戦闘のたびにどんどん削られていくので、そう簡単には山札を崩せないようになっているのです。

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 上記の要素に加え、プレイヤーは特殊なカードを使用できます。
 これはソヴィエト軍を操って他のプレイヤーを攻撃させたり、他のプレイヤーが戦闘中にその射撃力を低下させたり、ひどいものなら他のプレイヤーの友軍カードを1枚破棄させたりします。
 さらに、プレイヤーがソヴィエト軍と戦う時は、左隣のプレイヤーがソヴィエト軍として攻撃を仕掛けるわけで、プレイヤー間の亀裂は進む一方。
 ――ああ、これは協力ゲームには絶対にならんわ。
 しかし、この要素はすべてのプレイヤーに平等にあるわけで、いっそ清々しいほどの内ゲバミリタリーを堪能することが可能です。

 さらに、これらの特殊なカードの効果を打ち消してくれる頼もしいカードが、このタイトルにもなっている「俺のケツをなめろ!」。
 これを出すと、効果を打ち消すことができるので、友軍の戦車消滅も、味方の敵前逃亡も、ソヴィエト軍の総攻撃も、すべてケツで解決です(なぜかはわかりません)。
 神々しいまでにありがたいカードなのですが、すべてのカードの効果を無効にできるわけではなく、万事ケツ頼みというわけにはいかないようです。
 いずれにしろ、戦場においてケツがこれほど重要に思える日が来るとは思わなかったので、皆さんもこのゲームをプレイする機会があったら、ケツのありがたみをしみじみと感じ取りましょう。

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 何か後半はゲシュタルト崩壊する勢いでケツのことしか書いてない気もするので、ここいらで一応作品としての評価を。
 一言で言えば、カードゲームとしてはこのゲームはかなり練られています。
 互いが互いを牽制する要素を敷き詰めているため、自然とプレイヤー同士がバランサーの役割を果たし、ゲームバランスはかなり取れていると言っていいでしょう。
 カードのデータ自体も問題なく――と言い切るには、例えばソヴィエト軍カードを他プレイヤーに倒されないように特殊なカードで強化したあげく誰も倒せなくなるとか、大味で雑な部分もあるのですが――その辺の大ざっぱな味わいがプレイヤーの心を突き抜け、楽しいプレイングを発起させます。

「よし、Ⅲ号突撃砲とブルムベアでSU-85にアタックだ!」
「させるか! 塹壕でSU-85の防御力を13から23に強化!」
「防御力23とか倒せなくなるだろ、いい加減にしろ!」
「うるせー、お前なんかに勝利ポイントはやらん! 元々その山札は俺が崩していたんだぞ!」

 などと、場は盛り上がること必至!
 そして手持ちの札で他プレイヤーを妨害し、勝利の道を模索しているうちに、カードゲームの基本に立ち返って遊んでいる自分に気づくはずです。
 そう、このゲームは純粋にカードゲームとして楽しめる逸品なのです!
 ――背景が色々と特殊すぎるだけで。

 そんなわけで、傾向としてはわいわい楽しむパーティゲームであるけれど、カードゲームとしての繊細さも持ち合わせているこのゲーム。
 ルールも単純で覚えやすいので、アナログゲーム初心者も含めて、ぜひ一度プレイしてみることをおすすめします!  

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ライター紹介

番棚葵(ばんだな あおい)
 ライトノベル作家。
 同人サークル「冒険者の館」でゲームも制作。
 古今東西問わずアナログゲームが好き。
 ボードゲーム、カードゲーム、TRPGなど様々なジャンルのゲームをたしなむ。

代表作
・ライトノベル
「生徒会ばーさす!」
「Dソード・オブ・レジェンド」
「神をしめなわっ!」他
(集英社スーパーダッシュ文庫より)
・ノベライズ
「カードファイト! ヴァンガード」
(角川つばさ文庫より)
・ゲーム
「メイガス」
(同人ゲーム)